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番外編

頑張る方向性

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新年あけましておめでとうございます。

今年も沢山のお話を書いていこうと思いますので、皆様に楽しんで頂けたら幸いです。

今年もどうぞよろしくお願い致します!


本日は本編の方も更新しますのでそちらもよろしくお願いします。











私はルーカス様の身の回りのお世話担当(仮)のハンナです。えっ?(仮)とは何か·····ですか?

それは·····あのブラコ·····いえ、テオドール様に頼まれただけで正式な専属ではありません。

ですが、そのうち·····いえ、必ずや専属の場を勝ち取るつもりです。

それは置いといて、本日はルーカスのとても可愛らしいお話を聞いて頂けたらと思います。




あれは私がルーカス様の傍について少し経ち、ルーカス様も私が傍につくのに少し慣れた頃のお話です。

その頃はまだルーカス様はテオドール様やエルド様とは少し距離感がありました。ルーカス様本人もそれを自覚しているのか時折困ったような顔をしていました。

そんな時です。突然ルーカス様が私にこう尋ねられました。


「ハンナ·····さん。·····には近づくにはどうしたらいいですか?」


ルーカス様は恥ずかしいのか少し顔を赤くしながらそう尋ねました。しかし、肝心の誰に近づきたいのかがよく聞こえませんでした。

しかし、私はメイドです。聞き直しをして仕える主人に恥ずかしい思いなどさせません。ここは先程の口の動きを思い返してみます。


「テオドール様ですか?」

「··········うん。」


·····当たってました。外れなくて良かったです。いえ、当たる自信しかなかったんですけどね?


「·····テオドール様は読書が好きです。特に精霊に関するものです。あとは·····よく甘いものを食べてますね。」

「そうなんですか?·····ありがとうございます!」

「参考になればいいのですが·····」

「とても参考になりました。少し、書斎に行ってきます。」


そう言うとルーカス様は足早に去っていってしまいました。さて、私もお茶の用意をして追いかけたいと思います。

10分くらい経ってしまったでしょうか。コンコンと書斎のドアをノックしますが中から返事は来ません。

しかし、私もお仕えしてる身。中がどのような状況かは見てとれます。最近気づいたことですがルーカス様は1度集中してしまえば中々周りの事が目に入らないタイプです。

なんて努力家でしょうか·····。

私は書斎に入るとテーブルに何冊も本を置き真剣に読んでいるルーカス様の姿を見つけました。

最近文字を習っているルーカス様はすぐにそれを身につけあらゆる本を読んでいます。

もう1度言います。なんて素晴らしい努力家でしょうか·····!!


「ルーカス様こちらに置いときますね。」


そう言って私はルーカス様のそばにお茶を置きます。しかし、ルーカス様は集中してるようで返事は返ってきませんでした。

チラッと積まれている本に目を向けるとそこには精霊に関する本やお菓子のレシピが書いてある本がそこにはありました。

はて·····なぜレシピなんでしょうか?

私のその疑問が解決したのは2日後でした。



「ルーカス様?これは·····」


私はルーカス様から差し出された物を受け取ります。それは一昨日読まれていたレシピ本でした。


「えっと·····この間·····テオドール様はお菓子が好きだってハンナさンが言ってたので·····」


言いました。確かに言いました。しかし、それがどうしてレシピ本なのでしょうか?


「あのっ·····ここに書いてあるお菓子を作りたいんですけど·····!」


レシピ本に目を落としてみるとそこにはクッキーのレシピが書いてあるページに印がありました。

私はてっきりテオドール様とお茶をするものだと思っていましたが·····どうやら違ったようです。

しかし、そんなことを言える雰囲気でもありません。ここは一肌脱ぎましょう。


「かしこまりました。厨房の方に声をかけに行くので少し待っててもらってもよろしいでしょうか?」


私がそう言うとルーカス様は何かに気づいたのか少し落ち込んだ表情をみせました。


「·····すみません。迷惑·····になりますよね。」

「いいえ。そんなことありません。シェフたちも喜んで場所を貸してくれると思いますよ。」


そうして私は厨房に行き使ってもいいかと尋ねるとシェフは喜んで場所を貸してくれました。


そうしてルーカス様の素晴らしい努力の甲斐があってかとても美味しそうなクッキーが出来上がりました。とても美味しそうです。

これを貰うことが出来るなんて、あのブラコ·····いえテオドール様がとても羨ましいです。

さて、これを包む物を準備しなくてはいけません。

ところでルーカス様は·····あっ、シェフと少し打ち明けたのか厨房で餌付けされています。


「あっ·····ありがとうございます!」

「いえいえ!こちらこそ一緒にクッキーを作れて嬉しかったです。ありがとうございます。あっ、こちらもよろしかったら持っていってください!」


人見知りな部分があるルーカス様にとってはこの大人数はかなり緊張なさるでしょう。ですが立派に対応されています。素晴らしい成長です。

その後、クッキーを包み終えたルーカス様はテオドール様の部屋に向かいました。

部屋のドアの前に立つと少し緊張しているのかノックをしようとする手が少し震えております。

そして、覚悟を決めたのかドアをノックしました。


「どうぞ?」

「しっ、失礼します!」


テオドール様からのお返事がありルーカス様はお部屋に入られました。


「ルーカスどうしたの?」

「あっ、あの·····」


ルーカス様は緊張しているのか視線があっちこっちに飛んでいます。ルーカス様!頑張ってください。


「これどうぞ!」


そう言うなりルーカス様はテオドール様にクッキーを手渡しました。

クッキーの入った包みを受け取ったテオドール様は首をかしげました。


「これを私にくれるの?もしかしてどっかに行ったお土産?」

「あの·····えっーと·····」


ルーカス様は顔を真っ赤にしながら小声で手作りですと答えました。


「ルーカスの!?」

「··········はい。」

「食べてみていい?」


その問いかけにルーカス様はただ頷きました。テオドール様は包みをあけクッキーをかじりました。


「うん!凄く美味しいよ!ルーカスありがとう!」


あれだけルーカス様が努力されたのです。不味いわけありません。


「·····良かったです。」

「本当に美味しいよ。私のためにありがとう。」


テオドール様はそう言うとルーカス様の頭をポンポンと撫でました。心なしかルーカス様が笑っているように見えました。なんて可愛らしい·····

お菓子作戦はどうやら大成功らしいです。ルーカス様はあまり表情が豊かな方ではありません。しかし、今日はいつもより晴れやかな顔をしているようです。




お菓子作戦が成功に終わった日の夜、ルーカス様の身支度を終え部屋から出ようとした時です。


「あの、ハンナさん!」

「どうされましたか?」

「あの·····これ·····良かったら·····」


そう言ってルーカス様はおずおずと1つの包みを私に差し出してきました。


「私が貰ってもよろしいのでしょうか?」

「·····はい。いつもお世話になっているので·····」


包みを受け取り中を見てみるとそこには昼間作ったクッキーが入っていました。

どうしましょう。嬉しすぎて顔がニヤけそうです。これは家宝にすべきものでしょう。食べれません。


「あっ、ありがとうございます。大切に頂きますね。」

「美味しくなかったら·····ごめんなさい!」


これが美味しくないわけないです。

私は天にも昇る心地でルーカス様の部屋を後にしました。

私の仕える主人はなんて可愛らしいんでしょうか。これはブラコンや·····いえ、テオドール様にお伝えして正式に専属にしてもらわなくてはいけません。

思い立ったが吉日。すぐに直談判しに行きましょう。

こうして私は直談判しに行きましたが保留とされました。テオドール様·····覚えておいてください。この恨みは絶対に忘れません。






後日の事です。


「エルド様と仲良くするにはですか?あの方は剣術が好きですからね·····。私の兄と弟は良くチャンバラごっこしてましたよ。」

「チャンバラごっこ·····ですか?」

「はい。まぁ、要するに戦ってました。」


ルーカス様は少し考えたあとまた書斎に行ってしまいました。再びお茶を持って尋ねると机の上には身体を鍛える方法や剣術・体術の本がありました。

あっ、これはまたルーカス様の努力が違う方向に向いてしまいそうです。しかし、一生懸命に本を読むルーカス様を私ごときが止めることは出来ません。

ルーカス様の計画が実際に行われたかどうか·····秘密です。






いかがでしたか?私の仕えるルーカス様はとても可愛らしく素晴らしいお方です。

この他にもまだまだお伝えしたいエピソードはあるのですが時間が足りないようです。

また別の機会にお伝え出来ればと思います。

さて、私はテオドール様に「専属になる上でのメリット」というプレゼンをしなくてはいけませんのでここらで失礼します。
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