5 / 64
番外編
頑張る方向性
しおりを挟む新年あけましておめでとうございます。
今年も沢山のお話を書いていこうと思いますので、皆様に楽しんで頂けたら幸いです。
今年もどうぞよろしくお願い致します!
本日は本編の方も更新しますのでそちらもよろしくお願いします。
私はルーカス様の身の回りのお世話担当(仮)のハンナです。えっ?(仮)とは何か·····ですか?
それは·····あのブラコ·····いえ、テオドール様に頼まれただけで正式な専属ではありません。
ですが、そのうち·····いえ、必ずや専属の場を勝ち取るつもりです。
それは置いといて、本日はルーカスのとても可愛らしいお話を聞いて頂けたらと思います。
あれは私がルーカス様の傍について少し経ち、ルーカス様も私が傍につくのに少し慣れた頃のお話です。
その頃はまだルーカス様はテオドール様やエルド様とは少し距離感がありました。ルーカス様本人もそれを自覚しているのか時折困ったような顔をしていました。
そんな時です。突然ルーカス様が私にこう尋ねられました。
「ハンナ·····さん。·····には近づくにはどうしたらいいですか?」
ルーカス様は恥ずかしいのか少し顔を赤くしながらそう尋ねました。しかし、肝心の誰に近づきたいのかがよく聞こえませんでした。
しかし、私はメイドです。聞き直しをして仕える主人に恥ずかしい思いなどさせません。ここは先程の口の動きを思い返してみます。
「テオドール様ですか?」
「··········うん。」
·····当たってました。外れなくて良かったです。いえ、当たる自信しかなかったんですけどね?
「·····テオドール様は読書が好きです。特に精霊に関するものです。あとは·····よく甘いものを食べてますね。」
「そうなんですか?·····ありがとうございます!」
「参考になればいいのですが·····」
「とても参考になりました。少し、書斎に行ってきます。」
そう言うとルーカス様は足早に去っていってしまいました。さて、私もお茶の用意をして追いかけたいと思います。
10分くらい経ってしまったでしょうか。コンコンと書斎のドアをノックしますが中から返事は来ません。
しかし、私もお仕えしてる身。中がどのような状況かは見てとれます。最近気づいたことですがルーカス様は1度集中してしまえば中々周りの事が目に入らないタイプです。
なんて努力家でしょうか·····。
私は書斎に入るとテーブルに何冊も本を置き真剣に読んでいるルーカス様の姿を見つけました。
最近文字を習っているルーカス様はすぐにそれを身につけあらゆる本を読んでいます。
もう1度言います。なんて素晴らしい努力家でしょうか·····!!
「ルーカス様こちらに置いときますね。」
そう言って私はルーカス様のそばにお茶を置きます。しかし、ルーカス様は集中してるようで返事は返ってきませんでした。
チラッと積まれている本に目を向けるとそこには精霊に関する本やお菓子のレシピが書いてある本がそこにはありました。
はて·····なぜレシピなんでしょうか?
私のその疑問が解決したのは2日後でした。
「ルーカス様?これは·····」
私はルーカス様から差し出された物を受け取ります。それは一昨日読まれていたレシピ本でした。
「えっと·····この間·····テオドール様はお菓子が好きだってハンナさンが言ってたので·····」
言いました。確かに言いました。しかし、それがどうしてレシピ本なのでしょうか?
「あのっ·····ここに書いてあるお菓子を作りたいんですけど·····!」
レシピ本に目を落としてみるとそこにはクッキーのレシピが書いてあるページに印がありました。
私はてっきりテオドール様とお茶をするものだと思っていましたが·····どうやら違ったようです。
しかし、そんなことを言える雰囲気でもありません。ここは一肌脱ぎましょう。
「かしこまりました。厨房の方に声をかけに行くので少し待っててもらってもよろしいでしょうか?」
私がそう言うとルーカス様は何かに気づいたのか少し落ち込んだ表情をみせました。
「·····すみません。迷惑·····になりますよね。」
「いいえ。そんなことありません。シェフたちも喜んで場所を貸してくれると思いますよ。」
そうして私は厨房に行き使ってもいいかと尋ねるとシェフは喜んで場所を貸してくれました。
そうしてルーカス様の素晴らしい努力の甲斐があってかとても美味しそうなクッキーが出来上がりました。とても美味しそうです。
これを貰うことが出来るなんて、あのブラコ·····いえテオドール様がとても羨ましいです。
さて、これを包む物を準備しなくてはいけません。
ところでルーカス様は·····あっ、シェフと少し打ち明けたのか厨房で餌付けされています。
「あっ·····ありがとうございます!」
「いえいえ!こちらこそ一緒にクッキーを作れて嬉しかったです。ありがとうございます。あっ、こちらもよろしかったら持っていってください!」
人見知りな部分があるルーカス様にとってはこの大人数はかなり緊張なさるでしょう。ですが立派に対応されています。素晴らしい成長です。
その後、クッキーを包み終えたルーカス様はテオドール様の部屋に向かいました。
部屋のドアの前に立つと少し緊張しているのかノックをしようとする手が少し震えております。
そして、覚悟を決めたのかドアをノックしました。
「どうぞ?」
「しっ、失礼します!」
テオドール様からのお返事がありルーカス様はお部屋に入られました。
「ルーカスどうしたの?」
「あっ、あの·····」
ルーカス様は緊張しているのか視線があっちこっちに飛んでいます。ルーカス様!頑張ってください。
「これどうぞ!」
そう言うなりルーカス様はテオドール様にクッキーを手渡しました。
クッキーの入った包みを受け取ったテオドール様は首をかしげました。
「これを私にくれるの?もしかしてどっかに行ったお土産?」
「あの·····えっーと·····」
ルーカス様は顔を真っ赤にしながら小声で手作りですと答えました。
「ルーカスの!?」
「··········はい。」
「食べてみていい?」
その問いかけにルーカス様はただ頷きました。テオドール様は包みをあけクッキーをかじりました。
「うん!凄く美味しいよ!ルーカスありがとう!」
あれだけルーカス様が努力されたのです。不味いわけありません。
「·····良かったです。」
「本当に美味しいよ。私のためにありがとう。」
テオドール様はそう言うとルーカス様の頭をポンポンと撫でました。心なしかルーカス様が笑っているように見えました。なんて可愛らしい·····
お菓子作戦はどうやら大成功らしいです。ルーカス様はあまり表情が豊かな方ではありません。しかし、今日はいつもより晴れやかな顔をしているようです。
お菓子作戦が成功に終わった日の夜、ルーカス様の身支度を終え部屋から出ようとした時です。
「あの、ハンナさん!」
「どうされましたか?」
「あの·····これ·····良かったら·····」
そう言ってルーカス様はおずおずと1つの包みを私に差し出してきました。
「私が貰ってもよろしいのでしょうか?」
「·····はい。いつもお世話になっているので·····」
包みを受け取り中を見てみるとそこには昼間作ったクッキーが入っていました。
どうしましょう。嬉しすぎて顔がニヤけそうです。これは家宝にすべきものでしょう。食べれません。
「あっ、ありがとうございます。大切に頂きますね。」
「美味しくなかったら·····ごめんなさい!」
これが美味しくないわけないです。
私は天にも昇る心地でルーカス様の部屋を後にしました。
私の仕える主人はなんて可愛らしいんでしょうか。これはブラコンや·····いえ、テオドール様にお伝えして正式に専属にしてもらわなくてはいけません。
思い立ったが吉日。すぐに直談判しに行きましょう。
こうして私は直談判しに行きましたが保留とされました。テオドール様·····覚えておいてください。この恨みは絶対に忘れません。
後日の事です。
「エルド様と仲良くするにはですか?あの方は剣術が好きですからね·····。私の兄と弟は良くチャンバラごっこしてましたよ。」
「チャンバラごっこ·····ですか?」
「はい。まぁ、要するに戦ってました。」
ルーカス様は少し考えたあとまた書斎に行ってしまいました。再びお茶を持って尋ねると机の上には身体を鍛える方法や剣術・体術の本がありました。
あっ、これはまたルーカス様の努力が違う方向に向いてしまいそうです。しかし、一生懸命に本を読むルーカス様を私ごときが止めることは出来ません。
ルーカス様の計画が実際に行われたかどうか·····秘密です。
いかがでしたか?私の仕えるルーカス様はとても可愛らしく素晴らしいお方です。
この他にもまだまだお伝えしたいエピソードはあるのですが時間が足りないようです。
また別の機会にお伝え出来ればと思います。
さて、私はテオドール様に「専属になる上でのメリット」というプレゼンをしなくてはいけませんのでここらで失礼します。
11
お気に入りに追加
5,962
あなたにおすすめの小説
運命を変えるために良い子を目指したら、ハイスペ従者に溺愛されました
十夜 篁
BL
初めて会った家族や使用人に『バケモノ』として扱われ、傷ついたユーリ(5歳)は、階段から落ちたことがきっかけで神様に出会った。
そして、神様から教えてもらった未来はとんでもないものだった…。
「えぇ!僕、16歳で死んじゃうの!?
しかも、死ぬまでずっと1人ぼっちだなんて…」
ユーリは神様からもらったチートスキルを活かして未来を変えることを決意!
「いい子になってみんなに愛してもらえるように頑張ります!」
まずユーリは、1番近くにいてくれる従者のアルバートと仲良くなろうとするが…?
「ユーリ様を害する者は、すべて私が排除しましょう」
「うぇ!?は、排除はしなくていいよ!!」
健気に頑張るご主人様に、ハイスペ従者の溺愛が急成長中!?
そんなユーリの周りにはいつの間にか人が集まり…。
《これは、1人ぼっちになった少年が、温かい居場所を見つけ、運命を変えるまでの物語》
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
気づいたら周りの皆が僕を溺愛していた
しののめ
BL
クーレル侯爵家に末っ子として生まれたノエル・クーレルがなんだかんだあって、兄×2や学園の友達etc…に溺愛される???
家庭環境複雑だけれど、皆に愛されながら毎日を必死に生きる、ノエルの物語です。
R表現の際には※をつけさせて頂きます。当分は無い予定です。
現在文章の大工事中です。複数表現を改める、大きくシーンの描写を改める箇所があると思います。当時は時間が取れず以降の投稿が出来ませんでしたが、現在まで多くの方に閲覧頂いている為、改稿が終わり次第完結までの展開を書き進めようと思っております。改稿完了している話は時間経過のマークが✿✿✿から***になっております。
(第1章の改稿が完了しました。2024/11/17)
(第2章の改稿が完了しました。2024/12/18)
異世界転生して病んじゃったコの話
るて
BL
突然ですが、僕、異世界転生しちゃったみたいです。
これからどうしよう…
あれ、僕嫌われてる…?
あ、れ…?
もう、わかんないや。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
異世界転生して、病んじゃったコの話
嫌われ→総愛され
性癖バンバン入れるので、ごちゃごちゃするかも…
巻き戻りした悪役令息は最愛の人から離れて生きていく
藍沢真啓/庚あき
BL
婚約者ユリウスから断罪をされたアリステルは、ボロボロになった状態で廃教会で命を終えた……はずだった。
目覚めた時はユリウスと婚約したばかりの頃で、それならばとアリステルは自らユリウスと距離を置くことに決める。だが、なぜかユリウスはアリステルに構うようになり……
巻き戻りから人生をやり直す悪役令息の物語。
【感想のお返事について】
感想をくださりありがとうございます。
執筆を最優先させていただきますので、お返事についてはご容赦願います。
大切に読ませていただいてます。執筆の活力になっていますので、今後も感想いただければ幸いです。
俺の親友がモテ過ぎて困る
くるむ
BL
☆完結済みです☆
番外編として短い話を追加しました。
男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ)
中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。
一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ)
……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。
て、お前何考えてんの?
何しようとしてんの?
……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。
美形策士×純情平凡♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる