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本編
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しおりを挟む本編に入る前に2つお伝え出来ればと思います。
まずは、約2週間投稿出来てなくて申し訳ありません。資格取得へ向けての勉強が忙しくなかなか物語を書き進める時間を作ることが出来ません。
しかし、物語を書くことが私にとっての癒しでもあるので隙間時間に少しずつでも書いていこうと思っております。
投稿頻度は落ちてしまうと思いますが、是非投稿した際には読んでくださると嬉しいです。
そして2つ目にこの度開催された「第9回BL小説大賞」で「嫌われ愛し子が本当に愛されるまで」が最終順位が25位そして奨励賞を頂く事が出来ました。応募総数が1988作品あった中でこのような素晴らしい結果を頂けたのは読んでくださった皆様のおかげです。この場をお借りしてお礼申し上げます。本当にありがとうございました!
まだまだこのお話は進んでいきますので今後ともよろしくお願い致します!
(本編までが長くなってしまい申し訳ありません。)
走ってきたギルバードがそのままの勢いでルーカスに抱きついた。その衝撃に耐えきれずルーカスはギルバードを抱きとめたまま尻もちをついた。
「ルー!!大丈夫?怖かったよね?痛いところはない??ごめん·····っ、ごめんね!」
「ギッ、ギル?」
涙を流しながらギルバードはルーカスに抱きついた。ギュッと強い力で抱きしめられ少し息苦しかったがルーカスはギルバードを離すことはしなかった。
むしろ抱きしめられた以上の力でギルバードを抱きしめた。
「ギル·····心配かけてごめんなさい。」
「ルーは悪くない!むしろ悪いのは·····俺だし」
「ギルは何も悪くないです!」
「だって·····っ!俺がこの立場じゃなかったら·····王子じゃなかったらこんなことに·····「そんな訳ないです!
ルーカスはギルバードを離し顔を覗き込む。そこには流れている涙を必死に止めようと唇を噛んでいるギルバードの顔があった。
「そんなこと言わないでください。ギルが王子じゃなかったら俺と会えてなかったかもしれないじゃないですか。」
自分も何度も考えた。オリビアの子供じゃなかったら·····公爵家の子供じゃなかったら、もっと幼い時から自分は幸せだったかもしれない。
しかし、公爵家に生まれたからこその縁もある。現にそうだ。平民だったら王子であるギルバードとは出会えなかったであろう。だからこそ、感謝したかった。
「ギルの背負うものは重たいものかも知れません·····。俺が知らないだけで今までも怖い思いをたくさんしてきたんですよね。痛い思いだってしたはずです·····。でも、王子として生まれてきてくれてありがとうございます。そのおかげで俺はギルと出会えたかもしれないんです。」
ルーカスはもう一度ギルバードを優しく抱きしめた。
「だから、王子じゃなかったらなんて言わないで下さい!·····でも、俺は王子でも王子じゃなくてもギルのことが大好きですよ。」
その言葉を聞いてギルバードはさらに涙が溢れた。
王子だからこそ他者から余計に狙われやすくなる。国内外問わずギルバードが警戒しなくてはいけない人はごまんといた。
そのせいで嫌な思いを沢山してきた。何度も王子でなければとも考えた。しかし、ルーカスの言葉を聞いて初めて王子で良かったのかもしれないと思った。
「ルー·····っ、ありがとう·····!」
たった一言のありがとうの中にはたくさんの意味が含まれていた。ルーカスが生まれてきたこと、ギルバードに出会ったこと、王子で良かったと思わせてくれたこと·····その他にも数え切れない意味があった。
全ての意味を理解することは難しいがルーカスにとってギルバードのその一言は大切な宝物になった。
「いえ·····ギルもありがとうございます。」
そう言うと2人はようやく笑い合いことが出来た。
ギルバードは落ち着くと次第に現状を把握するようになった。目の前にいる座り込んだルーカスを改めて見ると手や足にはたくさんの怪我をした跡があった。
「ルー傷だらけだよ!?どうしよ·····今手当できるものないし·····よし!早く屋敷に帰ろう??」
「いえ!痛くないので急がなくても大丈夫です。」
ルーカスがそう言うとギルバードは怒ったような顔をした。
「だーめ!こんなの痛いに決まってる。ルー·····痛みから目を逸らしちゃダメだよ?」
「··········?」
ルーカスは傷の痛みなら我慢出来るものであった。しかし、ギルバードが指している痛みはそれだけではないような気がしたが、ルーカスにその言葉の本当の意味は届かなかった。
ギルバードとルーカスそしてダレンは一足先に屋敷に向かうことになった。しかし、ルーカスは1つ大事な事を思い出した。
「ギル!ちょっと待ってください。」
「ん?どうしたの?」
ルーカスは近くの木箱に座っていた少年の元へ向かった。
「ねぇ、行くところ·····ないって言ってたよね?」
「·····うん。」
少年はそう言うと下を向いた。ルーカスはそんな少年に手を差し出した。
「俺と·····来ない?」
少年と境遇が似ていたから手を差し出したいと思った。少しでも幸せになって欲しいと思った。
温かいご飯と布団がどれだけ幸せなのか、暖かいお風呂に入って綺麗な身なりをすることがどれだけ嬉しいのか·····
偽善だと言う人がいるかもしれない。そう思われてもいいとルーカスは思った。少年は危険を犯してまで自分を助けようとした。そんな少年に少しでも陽の当たる所で生きて欲しいとルーカスは願った。
「でも·····俺·····は·····」
少年はルーカスが差し出した手をつかみ返そうか迷っていた。その姿から本当は手を取り着いて行きたいと·····今の生活から抜け出したいと少年が願っているような気がした。
「·····行こ?」
ルーカスは少年の手を取りギュッと握った。
「·····いいの?」
どうしたいいかわからないというような顔の少年にルーカスはただ頷いた。
少年は握られた手を見つめ少し考え込んだ後口を開いた。
「俺も·····連れてって。」
その言葉を聞いたルーカスは少年の手を引きギルバードとダレンがいる所へ歩き出した。
少年は前を歩く自分よりも小さいルーカスの背中が逞しく見える反面どこか儚い感じもした。
その様子が自分の記憶のある人物と一致した。それは、罪なき子供を助けていた仲間、そして自分が守ることが出来なかった仲間だった。
(·····ごめんね。俺だけがこの場から·····)
少年は心の中で仲間に謝った。するとどこからか暖かい風が吹き少年の背中を押した。まるで気にするなとでも言っているようだった。
少年の口元に笑みが浮かんだ。
(君を守れなかった分·····俺はこの子を守っていくよ。)
こうしてルーカスと少年はギルバードとダレンに合流し公爵家へと向かい、一連の騒動は収束へと向かっていったのであった。
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