嫌われ愛し子が本当に愛されるまで

米猫

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本編

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ルーカスは少年に教えてもらった道を全力で走っていた。あちこちに貧民らしき人達がおりルーカスのことを怪しそうに見ていた。しかし、先程の少年の教えの通りルーカスは足を止めることはしなかった。


「はあっ、·····っ、はぁ·····次を左?」


突き当たりが見えルーカスは左に曲がりそのまま走り続けた。どのくらい走った頃だろうか。曲がり角から誰かが現れルーカスは急に止まることが出来ずそのままぶつかってしまった。

そして、ぶつかった衝撃でルーカスは地面に転がってしまった。


「·····いっ、ごめんなさい!」

「いや、こちらこそ申し訳ない。君は大丈夫かい?」


そう言ってぶつかった相手はルーカスに手を差し出した。手を差し出してきた相手はマントを被っておりどんな人物かわからなかった。

そのため、ルーカスはその手をとるか一瞬躊躇ったがせっかくの好意を無駄にするのも申し訳なく差し出された手を掴んだ。


「足から血が出てるけど·····大丈夫?」

「これくらい平気です。ありがとうございます。あの、俺急いでるので·····すみません!」


そう言って再び街の方へ向かおうとしたがマントを被った相手に止められてしまった。


「待って!何かあったの?」

「あの·····それが·····」


個人的な事件に他人を巻き込むのは気が引けた。しかし、目の前にいる人物は遠慮なく話せといってきたのでルーカスは事情をかいつまんで話した。


「ふーん·····ってことは君のお友達はまだそこにいるから助けなくちゃいけないと·····しかもなるべく早く·····よし!私が助けてあげる!」


そう言うとぶつかった相手はバッとマントを外しルーカスに顔を見せた。ルーカスはその顔を見てとある単語が浮かんだ。


「·····エルツ·····」

「おっ、少年はエルツを知っているのか。そうだよ!私はエルツ出身だよ。」


マントで隠れて見えなかったが目の前の人物は黒いの髪と褐色の肌をしていた。そして、剣を帯刀していた。


「女の人ですよね?·····なのに剣?」

「私は·····用心棒だからね!武器は商売道具だよ。あと、私はアルマ。君は?」

「ルーカスです。」

「うん。いい名前だね。じゃあ、早速ルーカスのお友達を助けに行こうか?」


アルマが用心棒だと言えどルーカスは女の人に戦わせるのは気が引けた。


「気持ちは嬉しいんですが·····女の人に戦わせるのは·····」

「大丈夫大丈夫!私は君が思ってる何倍も強いよ。」


ルーカスは少し考えたが、アルマを信じることにし極力戦闘にならないように穏便に済ませようと考えた。そして、アルマが怪我をしそうだと感じたらすぐに間に入ろうと決意した。


「アルマさん·····お願いします!このお礼は何でもするので。」

「言質とった!よし、行こっか!」


そうしてルーカスは来た道をアルマと共に全力で走り戻って行った。





先程までいた建物の前に着くと中から怒鳴り声が聞こえた。


「おい!あのガキはどこに行ったんだよ!?」

「ふざけんな!今回の仕事は失敗出来ねーんだよ!」

「探せ!」


聞こえる内容からルーカスはすぐに自分が逃げたのがバレたのだとわかった。ルーカスは先程助けてくれた少年を助けようと建物の中に入ろうと手を伸ばした時だった。


「ちょっと待て!」


アルマによってドアを開けるのを阻止されたかと思うと、アルマはルーカスをドアから遠ざけるように引っ張った。

そして、次の瞬間バンっとすごい音がした。ルーカスが先程立っていた前にあったドアはある人物と共に吹っ飛んできた。


「お前が犯人か!?ふざけんなよ?」

「·····っ!」


吹っ飛ばされたのは先程の少年だった。少年は強く身体を打ちつけたのか身体を起き上がらせることが出来ないようだった。 少年の前にいる男は怒りを収めることが出来ないのか、少年に向かって手に持っている棒を振り落とそうとした。

ルーカスは居ても立ってもいられず少年と男の間に割って入り少年を庇うように立ち塞がった。


「·····っ、君は!」


少年はルーカスをみて呆然とした。そして、男は急に割って入ってきたルーカスを見て驚いた。割って入ってきた人物がルーカスと気づくと男は再び声を荒げた。


「お前誰だっ··········って、さっきのガキじゃねーかよ!ったく、手間をかけさせやがって!少しは痛い目を見て反省しろっ!!」


男はそう叫ぶと手に持っていた棒をルーカス目掛けて振り落とした。ルーカスは思わず目をぎゅっと閉じ両手を前に出しガードしようとした。

ガンッという音がその場に鳴り響いた。
ルーカスは自分が予想していた衝撃が襲ってこず不思議に思い恐る恐る目開けた。


「アルマさん····!」


目の前にはアルマが立っておりその向こうにはアルマによって蹴り飛ばされた男が壁にぶつかり倒れ込んでいた。


「この子が怪我するとこっちも色々大変なんだけど?·····ってか、丸腰の子供に対して武器使うとか男としてどうなの?」

「うっ、うるせぇ!」


男が立ち上がろうとした瞬間アルマは男の頭に向かって蹴りを入れた。見事に蹴りが入ったのか男はそのまま気絶し地面に倒れた。


「ねぇ、ルーカスの横にいる少年、この男以外に仲間は?」

「っ、他に男が1人いたけど今は外にこの子を探しに行ってます!」

「ん~じゃあ、さっさとこの場を逃げちゃおっか?」


アルマは少年を簡単に担ぎあげた。


「ルーカスも担ごっか?」

「いっ、いえ!大丈夫です。」

「あの!俺も大丈夫なんですけど·····」

「君は怪我してるからダーメ!」


少年は何を言っても聞かないアルマの説得を諦め大人しく担がれることにした。
そして、その場を離れようとした時アルマが地面に手をかざした。すると、土らしきものが鎖となり男を拘束した。


「これでこいつは逃げられないかな?さぁ行こっか?」


規格外のアルマの強さにルーカスは驚いた。しかしその反面、守られてばっかりの自分を情けなく思ったのであった。
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