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本編
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しおりを挟む更新が遅くなってしまい申し訳ありません。リアルの忙しいピークが過ぎたので今週は更新頻度を上げていきたいと思います。
ほんの一瞬の出来事だった。ブラント越しにダレンの活躍を見ていたはずだった。しかし、ダレンに気を取られすぎて後ろから近づく人物に気がつくことが出来なかった。
布のような物で口を抑えられた。咄嗟のことで反応出来なかったがこのままでは連れ去られると思い声を上げようとしたがそれがいけなかった。
大声を上げるために息を吸ったが布に何か薬液が染み込んでいたのだろうかそれを吸ってしまい気づいたら気を失っていた。
「·····っく!···ま·····は!」
誰かが怒鳴っているその声でルーカスは目を覚ました。しかし、起きようとしても頭にモヤがかかったようにぼんやりし周りの状況が頭に入ってこない。
「ふざけんなよ!そんな初歩的間違いをどうしてするんだよ!」
「確かに俺も悪いけどよ間違ったもんは仕方ねぇーだろ!?」
「あ~これじゃ頭にどやされるぞ?」
すぐ近くで2人の男が言い争っている声が聞こえた。ルーカスはぼんやりしている頭をフルに回転させ状況を確かめようと自分がいる場所を見渡した。
部屋は家具などは置いておらず、カーテンは閉まっており薄暗く少し埃っぽかった。今は使われてなさそうな部屋の床の上にルーカスは寝かされていた。
(ここどこだろう·····出れそうな場所はないし·····)
自分がどんな状況に置かれているかはまだわからないがここを出た方がいいことは確かだった。意識もしっかりしてきたルーカスは手と足を動かしてみたがロープで拘束されており動かすことが出来なかった。
それでも、諦められないルーカスは必死にロープを解こうともがくが結びが強いせいかロープ解けることはなかった。
どうしようかと悩んでいると部屋のドアがガチャっと開く音がし外にいた男2人が中に入ってきた。ルーカスは慌てて寝たフリをした。
「ったく·····どーすんだよ。っと、まだ目を覚ましてないか。」
「こいつを戻しても俺らが危うくなるだけだろ!?」
「なんだ?じゃあこいつを殺るか??元はと言えばお前が王子と間違えて誘拐してきたのが悪いんだからな!?」
男達の会話を聞いてルーカスは驚愕したが、何故かすぐに落ち着きを取り戻すことが出来た。
(俺とギルを間違えたのか·····)
非日常的なこの光景を見れば大人でも狼狽えるだろう。しかし、ルーカスは狼狽えることもなくギルバードが誘拐されなくて良かったと考えていた。
普通であれば相手に腹を立ててもいいはずだ。たとえルーカスの心根が優しいと言えどこんな場面でも人を思いやれるのはお人好しすぎる。
「殺すのは流石にマズイだろ。そうだ!こいつを少し痛めつけてからアイツらを脅すのはどうだ!?」
「王子が手に入れば作戦はなんでもいいさ。」
「王子と一緒に居たってことはお気に入りってことだろ?こいつも可哀想だな。」
男達の言葉を聞いてルーカスは血の気が引いた。しかしそれは痛めつけられるのが怖いからでは無い。このまま事が進むとギルバードに迷惑がかかってしまうからだ。
(どうしよう·····俺のせいで·····どうにかしなきゃ!)
ルーカスは目を開けないまま部屋の状況を確認してると男達が部屋の外に出ていく音が聞こえた。
2人が出ていったのを確認するとルーカスはもう一度周囲に何かないか目を凝らした。すると近くに釘らしきものが1本落ちているのが目に入った。ルーカスは身体を動かしその釘を掴んだ。
(よし!これで足のロープを切れれば····)
ルーカスは膝を曲げ足首が腕に近づくようにした。そして、釘でロープを何度も何度も傷つた。しかし、さびているその釘ではなかなかロープは切れず時間だけが過ぎていった。
再び男達の声が聞こえ近づいてきてることにルーカスは気づいた。
少しでもロープが切れるように手を動かすが男が近づい来ていることに動揺しているのか先程まで削っていた所とは別のところに釘が当たってしまう。
「·····っ!」
次の瞬間、足に釘が掠ってしまったのか痛みを感じた。それでもルーカスは痛みを無視して一生懸命ロープを削った。
「なぁ、取引まであとどのくらいだ?」
「んー、あと2時間くらいか?」
「なら一旦飯を食わねぇか?」
「確かにな。なら1度あのガキが目を覚ましてないか確認するぞ。」
ドア越しにその様な会話が聞こえルーカスは1度釘を隠し先程と同じ体勢に戻った。しかし、足の怪我がバレないように少し足の位置は変えた。
ルーカスが体勢を変え終わったのと同時に部屋のドアが開き男達が入ってきた。
「まだ、寝てんな。」
「あの薬ってそんなに効果があるのか?」
「さぁな。まぁ、こいつは小さいしそれなりに効いたんじゃねーの?」
2人はルーカスが目を覚ましてないのを確認すると再び部屋を後にした。ルーカスはそれを確認すると再び釘を手に取りロープを削り出した。
(····やっと切れた!)
再び削り出してから数分後ようやく足のロープを切ることが出来たがその代わり足にはいくつもの傷が出来ていた。
しかしルーカスにとって少し前までは傷を負うことは日常的な事だった。だからこそ足にできた傷の痛みはそこまで気にもならなかった。
(あとは手か·····)
手のロープも釘を使ってもう一度切ろうと思ったが角度的に切ることが難しかった。それよりも男達が食事を終え再びこの部屋に戻って来る前にこの部屋を出なくては行けない。
(仕方ない·····手のロープはこのままで行くしかないか。)
ルーカスは手のロープを切るのを諦めて立ち上がった。そしてドアに近づき耳をドアに当てた。
しかし何も音は聞こえて来なかった。
(近くには誰もいないのかな?)
ルーカスは一か八かでドアを開けたのであった、
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