嫌われ愛し子が本当に愛されるまで

米猫

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本編

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時刻はお昼時、街の中は昼食を取ろうとする人で賑わっていた。


「お二人共はぐれないように注意して下さい。」


ブラントがそう言うとギルバードはルーカスと手が離れないように握る力を少し強めた。


「ルー、お昼外で食べてく?それとも屋敷に帰る?」

「俺はどちらでも·····ギルはどっちがいいですか?」

「んん、じゃあ外で食べたい!」

「わかりました。そうしましょう。」


4人は屋台が集まる方へと足を向けた。


「それにしたって今日は人が多すぎない?」

「明日で終わりだからでしょうか?」

「え~もっとルーと遊びたいのに!」


プクーっと頬を膨らませているギルバードを見てルーカスは少し嬉しくなった。


「俺もギルと遊びたいです。」

「でしょでしょ!?」
  

ギルバードがそう言う前を歩いていたダレンが声を上げて笑いだした。


「あっ、遊びたいって·····ははっ、殿下はいつでも公爵家に遊びにいってるじゃないですか!」

「むぅ、ダレンはいつも俺をからかうよね!?」


ギルバードはパッとルーカスと繋いでいた手を離し両手でポカポカとダレンの背中を叩いた。
日常風景になりつつあるその様子をルーカスは仕方ないと言った感じで見ていた。

そんなこんなであと少しで屋台がある区域に着くというところで目の前から女の悲鳴が聞こえた。そして次にに聞こえたのはひったくりだという叫び声だった。

前から1人の男が走ってくる。


「ダレン任せました。」

「おう!」


ブラントはギルバードとルーカスを背で庇うように前に立った。
ダレンは前から走ってくる男の正面に立つ。


「そこをどけぇ!」

「か弱い女の子を狙うのは男としてどうかと思うよ。」

「っ、うるせぇ!!」

 
ダレンの挑発に乗ったのか男はダレンに殴りかかろうと拳を振り下ろした。


「そんなので俺を倒せるとでも?」

「あっ?·····っ、うわぁ!!」


ダレンは男が振りかざした腕を掴み、突っ込んできた男の勢いを利用して背負うよにして前方に投げた。

男はものすごい勢いで地面に投げつけられ衝撃のせいか痛みに耐えきれなかったのかその場でのびてしまった。

ダレンは男の手から財布らしきものを取ると被害にあった女性へと手渡した。


「あっ、ありがとうございます!なんとお礼を申し上げたらいいか·····っ!」

「いえいえ、気にしないで下さい。当たり前の事をしただけっすから。」


一件落着した所でブラントは後ろにいた2人の無事を確かめようと後ろを振り向いた。

しかし、後ろにいたのはギルバードだけでルーカスはそこにはいなかった。


「ギルバード殿下·····ルーカス様は·····?」

「えっ、ここに·····あれ?なんでいないの?」


2人は当たりを見渡すがそこにはルーカスらしき人物はいなかった。
ルーカスは勝手にいなくなり周りに迷惑をかけようとする子供ではない。例え、困ってる人がいたらギルバードやブラント、ダレンに一言断ってからその場を離れるだろう。

2人が人に流されないようにブラントが前に立ち人の流れから2人を守っていたため人に流されたとは考えにくい。そもそも流されるほどの人の量でもなかった。

必然的に考えられたのは··········


「誘拐·····でしょうか?」

「ルーが!?ブラントどうしよう!?」


楽しそうにショーを見て一緒に笑っていたルーカスがほんの一瞬でいなくなってしまったのだ。


「どうしよう、僕が手をしっかり繋いでればこうはならなかったのかも·····!」


ずっと手を繋いでいはずなのにどうしてこの一瞬だけ手を離してしまったのだろうか。

ギルバードは先程までルーカスと繋いでいた手を見た。今そこには無いルーカスの温もりを感じるためにギュッと手を強く握った。しかし、どうすればいいのかわからず視界が涙で滲んできた。


「殿下!殿下はダレンとここにいて下さい。ダレン、俺は自警団にも声をかけたら探しに行く。」

「わかった。」

「ブラント!俺も探しに「ダメです!」」


ギルバードの声を遮るようにブラントが声を上げた。


「貴方様に何かあったら困るのです。」

「·····でも」

「私が必ず見つけてきますから·····!」


本当は自分で探しに行きたいがギルバードはこの国の王族だ。勝手に動けば周りにいる人の責任や負担も増やしてしまう。そのせいでルーカスの発見が遅れる可能性だってある。
ギルバードは探しに行きたい気持ちをグッと堪えた。


「ブラント·····頼んだ。」


ブラントはギルバードに一礼するとその場を走って去っていった。


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