嫌われ愛し子が本当に愛されるまで

米猫

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街を歩いているとそこにはたくさんの屋台や露店があり目移りした。

見たことない食べ物や飲み物、そして様々なアクセサリーや小物などがあり見ているだけで楽しめた。

しかし、ルーカスが1番目を惹かれたのは街のあちこちにある花だった。すれ違う人は様々な花を身につけたりしていた。そして、路上では花を売っている人が沢山いた。


「ブラントさん、なんでみんな花を持っているのですか?」

「花は精霊が好むものです。建国祭は精霊への感謝を伝えるための祭りでもあるので、みんな花を身につけたり花を家族や好きな人に送ったりしているんです。」


建国祭の期間は花を身につけたり送りあったりするので必然的に街が花で溢れかえる。そうすることで自然を好む精霊が集まり普段より精霊が多くなる。

改めてルーカスは周りを見渡すと前に来た時より精霊がたくさんいることに気づいた。精霊は花を売っている人のカゴに潜ったり人が身につけている花の周りを飛んだりしている。


(·····こうやって街を花で飾ることで精霊への感謝を伝えてるんだ。)


ルーカスにとってその光景は別世界のようだった。今までの生活とは違い目の前にある光景は何故かキラキラと輝いているように見えた。

心が踊る感じがしルーカスは手を繋いでくれているギルバードの手にギュッと力を入れた。


「ん?ルーどうしたの?まだ、怖い?」

「いえ·····むしろ楽しいのかもしれないです。」


そう言ってルーカスはギルバードに笑って見せた。するとルーカスの笑みを見たギルバードは顔を赤くしてしまった。


(えっ、ルーが·····少し笑った?)


ルーカスは普段はあまり表情を変えないせいか、ギルバードはルーカスが笑った顔を見たことがなかった。なのに、今目の前にいるルーカスは少し微笑んだのである。

初めて見るそのルーカスの表情にギルバードは何故か心がドキドキした。


「たっ、楽しいのなら良かった!じゃあ、もっと楽しもう?」


そう言ってギルバードはルーカスの手を引っ張り走り出した。


「ギル、走ったら危ないです!」

「大丈夫大丈夫!」


人だかりを縫うように進んでいく。まだ人混みは怖いけれどそれでも先を進んでくれるギルバードについて行くのはすごく楽しかった。


「ギル、どこに行くんですか?」

「まずは、あそこ!」


そう言って連れてかれたのは花の屋台だった。そこには様々な色や種類の花が置いてあった。


「建国祭だからね!まずは花を身につけなきゃ。」

「そう·····ですね。種類がたくさんで迷います·····」


2人が迷っているとお店の人がガーベラを進めてくれたので2人はそれを買った。そして、護衛をしているブラントとダレンにも買い手渡すと2人は喜んで受け取り胸ポケットにさした。


「よし!花も身につけたしルー何か食べたいものとかある?」

「食べたいもの·····」


ルーカスは周りを見渡すがたくさんのものがありすぎて何を選べばいいのかわからなかった。


「たくさんありすぎて·····選べないですね。」

「わかる~!よし、色々と買おう?ブラントとダレンも食べるの協力してくれるよね?」

「えぇ·····一応仕事中····「じゃあ、ダレンの分はなしね」·····嘘です!」


そうして4人は屋台にあるものを色々と買い広場にあるベンチに座った。


「色々買ったね!何から食べようかな!?」


ギルバードは机の上に置かれた物を見てウキウキとしていた。
ルーカスもギルバードと同様にウキウキとしていたが買ってきた食べ物の量をみて全部食べ切れるのか心配になった。


「ギル、これ食べ切れるんでしょうか?俺·····あまり食べれないですよ?」

「ん?大丈夫!俺もそれなり食べるけど目の前に大の大人2人いるんだし。」

「はい。ルーカス様、あまり気にしないで好きなものを食べてください。食べきれなかったら私·····というよりダレンが食べますので。」

「おい、俺を残飯処理班みたいに扱うな·····って言うのは置いといてルーカス様、ギル殿下みたいに何も気にせず食べてください。」


ブラントとダレンの言葉に甘えてルーカスは串焼きに手を伸ばした。

1口それを食べるとタレのあまじょっぱさが絶妙でいくらでも食べれそうだった。ギルバードもそれを気に入ったのかさっさと1本を食べきってしまった。


「いつも食べるごはんも美味しいけどこういうのもやっぱり美味しい!」


そう言ってギルバードは次の食べ物へと手を伸ばした。どこにその食べ物を入っていくの?という感じに次々に胃に収めていった。
 
それとは反対にルーカスの食べるスピードはゆっくりだった。少食のルーカスはすぐにお腹がいっぱいになり手を止めた。


「えっ、ルーはそれしか食べないの!?」

「おなかいっぱいで·····ギルはよく食べますね。」

「でしょ?いっぱい食べて早く大きくなるんだ!」

「じゃあ、ギル殿下肉だけじゃなく野菜も食べてください?」

「うっ·····ダレンの意地悪·····」


そう言ってギルバードは渋々野菜も食べる。おなかいっぱいのルーカスは苦笑しながらそれを見ていた。


「ルーカス様デザートは食べませんか?」


スっとフルーツが入ったカップをブラントが差し出してきた。しかし、おなかいっぱいのルーカスはそれを受け取ろうか迷った。


「ご飯とデザートは別腹です。意外と食べれますよ?」

「·····別腹?」


せっかく持ってきてくれた物を断る訳にもいかずルーカスはカップを受け取った。中身を覗くと様々なカットされたフルーツが入っていた。

ルーカスはピックでフルーツを刺すと口へと運んだ。フルーツは冷えておりさっぱりしているせいかいくらでも食べれそうだった。


「ふふっ」


その様子をギルバードは見ていたのかなぜが嬉しそうに笑った。


「どうしたんですか?」

「ルーさ、フルーツ好きでしょ?特にいちご!」


好きか嫌いかと言われたら嫌いではない。しかし、好きかと言われたら悩む。
そもそも、好きというものがどんなものかルーカスには想像がつかなかった。


「だって、串焼き食べてる時より嬉しそうに食べてる。あと、いちごを残してると思ったら最後嬉しそうに食べてるし。」

「·····そうですか?」

「そうそう。良かったね!好きなものが見つかって。だって、最初に話した時好きな食べ物わからないって言ってたじゃん?」

「確かに言いました。」


自分では気が付かなかったことを見つけたギルバードにルーカスは感心した。
そして、自分のことを知ってこんなにも喜んでくれるギルバードに感謝した。


「·····これが好きなんですね。ギル、ありがとうございます。」

「他にもルーの好きなものがたくさんみつかるといいね!」


その言葉にルーカスは心が踊った。それと同時に自分のことを見つけるだけではなくギルバードのことも知りたいと思った。


「ギル、俺の事だけじゃなくてギルのことも教えて下さい。」

「もちろん!」


そうして2人はたくさん話をした後再び祭を楽しんだ。そして、また後日建国祭に遊びに来ようと約束しその日は帰宅した。




その日の夜、たくさん遊んで疲れたルーカスだが、お祭りで買ってきた小さなブーケをハンナに渡し部屋に飾ってもらった。

そして、ハンナが花瓶に花を飾り部屋を出ていった後ルーカスは花に向かって話しかけた。


「ノア·····建国祭って精霊にも感謝をする祭なんだって。だから、このお花はノアにあげるね。」


手を組み祈るようにルーカスは喋る。すると花がキラキラと輝きだしたと思えば一瞬で消えてしまった。

その光景にビックリしていると再び目の前にキラキラとした光が現れて宙に文字を描いた。


『綺麗な花をありがとう!良い夢を』


ノアの仕業だとルーカスは気づいた。ルーカスが手を伸ばし文字に触れると文字は光のつぶになり消えてしまった。


「·····消えちゃった。」


少し寂しくもあるが、返事をくれたということはノアは自分のことを見守ってくれているのだろうとルーカスは考えた。


「ノアもいい夢を見てね·····」


ルーカスがそう呟くと暖かい風が吹いた気がした。

ルーカスはベッドに潜り楽しかった一日を思い返していたがと身体は疲れていたのかあっという間に眠りに落ちてしまった。
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