嫌われ愛し子が本当に愛されるまで

米猫

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本編

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目を閉じてどれくらい経ったのだろうか。眩しかった光も落ち着きルーカスは目を開ける。

目を開けるとそこには花畑と湖が広がっていた。


「·····戻ってきた?」


しかし、周りには先程居た2人はおらずただ1人の空間だった。


「誰も·····いないの?」


そう声を出すが返事は返ってこなかった。諦めて散策でもしようかと思った時だった。ふと目線を上に向けると1人と青年が宙に浮いていた。

その青年の姿はさっきの人とは違った。両方の瞳が金緑色で銀髪の長み髪がサラサラと風でに吹かれ揺れていた。

美しいその容姿に目を奪われたルーカスは、青年をボーッと見つめてた。


「どうしたのルーカス?」


その言葉にルーカスは驚いた。そして、見た目も名前も知らない青年が何故自分の名前を知っているのか不審に思い鋭い視線を向けた。


「そんな目で見ないでよ!さっきまで一緒に喋ってたでしょ?」

「·····見た目と声が違う。」

「それは、驚かせようと思って君とそっくりにしてみたの!」


青年はルーカスの前に降りてくるとパチンと指を鳴らした。すると次の瞬間、ルーカスとそっくりの少年が目の前にいた。


「ほら?これで、信じてくれた?」


目の前ので起きた事を簡単には飲み込めないが、精霊王と名乗っていた彼なら出来ることなのかもしれないと思いルーカスは頷いた。


「うんうん。ルーカスは素直でいいね!」


そう言って少年はルーカスの頭を撫でた。撫でる手つきは心地よかったが見た目も声も全く同じ人物に頭を撫でられたルーカスは複雑な気持ちでいた。


「あの·····元の姿に戻って貰えませんか?」

「うん?この姿は嫌だった?」

「嫌じゃないんですけど·····ちょっと·····」


そう言うと少年は元の姿に戻った。


「さてさて、さっきの人間の用も済んだし僕の用も済ませようかな?」

「さっきの人間?·····ってさっきの人はどうしたんですか?」

「あぁ、帰したよ?」


そう言って青年は湖を指さした。ルーカスは思いもよらない回答に唖然とした。


「湖から·····ですか?」

「うん。あそこルーカス達の世界と繋がってるし。」


青年は笑顔で言う。ルーカスは自分も帰る時は落とされるのだろうかと内心焦った。すると、青年はそれに気づいたのかははっと笑った。


「大丈夫!ルーカスは丁寧に帰してあげるから。」

「··········ありがとうございます?」

「じゃあ、早く帰してあげるためにも用を済まそうか?」


そういうと青年はルーカスに手を差し出した。そして、手を乗せるように言うとルーカスはそれに従い青年の手の上に自分の手を乗せた。


「さっき言ったお願いのこと覚えてる?」


青年はそう言ってルーカスを見つめた。ルーカスはお願いが何なのか直ぐに思い出した。


(名前·····決めて欲しいんだっけ?)


何故、精霊王に名前がないのかはわからない。しかし、いつまでも呼び名がないのも可哀想である。ルーカスはいい物がないか考えると1つの名前が浮かんだ。


「ノア····」

「ノア·····うん!すごくいい!ありがとう」


ノアはルーカスの手を自分の額にもってくる。


「我は精霊王ノア、汝に永遠の精霊の加護と祝福を·····」


その瞬間、キラキラした光が2人を包む。溢れ出した光はやがて2人に吸い込まれるように消えていった。


「今のは?」

「より強力な加護と祝福をルーカスにあげる。」


ノアはそう言うとパチッとウィンクした。


「これで、用は済んだ!·····帰る?」


確かに元の場所に戻りたい。しかし、ノアから離れるのも何となく寂しい。そのせいかなかなか頷くことが出来なかった。


「大丈夫!僕にはいつでも·····って訳じゃないけど会えるよ。その時は強く願って。」

「願う?」

「うん。君と僕は繋がってるから。」


その言葉を聞いてルーカスは安心した。そして、元の場所に戻ると伝えるとノアは再び指をパチッとならひた。すると、目の前に白く大きな扉が現れた。


「ここを行けば帰れるよ。」

「わかった。·····また、会おうね?」

「うん!あっ、帰る前にもう1ついい事教えてあげる。」

「いい事?」


そう言うとノアはニヤニヤとしだした。その顔にルーカスは1歩後ろに下がった?


「あっちの世界にルーカスを守ってくれる王子様がいるよ?すぐに会えるから!」

「王子さ·····え、うわぁ!?」
  

ノアがルーカスの肩をトンと押すと、ルーカスは扉の向こうへ消えた。 ルーカスは光の向こうに消えていくノアを見つめなから思った。


(·····丁寧·····って言ったじゃん)


それでも不思議と嫌な感じはせず、むしろ表情が緩んだ。


「ノア·····またね!」


そう言うともうほとんど見えないノアが微笑んだような気がした。

光に吸い込まれながらルーカスは目を閉じたのであった。
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