嫌われ愛し子が本当に愛されるまで

米猫

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本編

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ルーカスの様子を見ていた2人はルーカスの中で無事にひとつの決着が着いたことに安心した。


「まぁ、一安心ってとこかな?」  

「そうですね。現実に戻った際にどうなるかはまだわかりませんが·····。」

「まぁ、ルーカスなら大丈夫!僕がついているしね!」


そう言うと少年は立ち上がり水面を見ていたハロルドの後ろにまわった。

少年が何をしたいのかわからずハロルドは視線だけで追った。


「さぁ、人間の用は済んだでしょ?僕はまだルーカスと用事があるから·····じゃあ、バイバイ!」


そう言って少年はトンっとハロルドを押した。


「えっ、うわぁ!?」


ハロルドは衝撃に耐えきれず湖の中に落ちた。水の中に落ちたはずなのに息は苦しくなく、何故か少年の声がはっきり聞こえた。


「一足先に現実に戻ってて。あっ、あと言い忘れてた。堕ちた精霊には気をつけてね。」


堕ちた精霊とは何なのか聞き返したかったが瞬きをした瞬間、現実の世界に戻ってきていた。


「はぁー·····あの精霊王乱暴すぎないか!?」


ハロルドがそう叫ぶと隣でずっと様子を見ていたテオドールが急に叫び出したハロルドに驚く。


「ハル!?ルーカスはどうだった?というか精霊王って?·····あと、いきなり叫んだらうるさいよ?」

「まてまてまて。質問多すぎるし最後のはひどくない?」

「·····」


無言で横を向いたテオドールにハロルドはため息をつく。そして、握っていたルーカスの手を離し椅子から立ち上がると身体をグッと伸ばした。

テオドールは近くにあったベルを鳴らし使用人を呼びお茶を持ってくるよう伝えた。


「さて·····なんだっけ?末っ子の件はあらかた上手くいったよ。あとは末っ子くんが目を覚ましたらもう一度話してみな。」


そう言ったあとハロルドは纏う雰囲気をガラッと変えた。その様子に気づいたのかテオドールは椅子から立ち上がり片膝をつき礼をとった。


「さてテオドール=ジェナー、君はルーカスが愛し子だって事を知ってたのか?」

「·····はい。」


その返事を聞いた瞬間ハロルドは携えていた剣を瞬時に抜き首元に突きつけた。


「この国で愛し子がどれくらい重要視されているか知っていての行動?あまり軽率な行動取っているとどうなるかわかるよね?」

「申し訳ありません。」


ハロルドは突きつけていた剣を鞘に戻すと椅子に腰掛けた。その様子は先程とは違いいつものハロルドに戻っていた。

普段はひょうひょうとしているハロルドだが、こういう様子をみるとやはり王族だと感じる。


「まぁ、色々と事情があるのは知ってるから今回は許してやる。」

「ありがとうございます。」


そう言ってテオドールは頭を下げる。


「許してやる代わりに条件が1つある!」


その言葉を聞いた瞬間テオドールは嫌な予感がした。しかし、王族に不敬を働いていたのも事実。テオドールは潔く条件を飲み込もうと決めた。


「·····条件とは?」

「ルーカスんうちの末っ子の友達にすること!」

「·····はぁ?」


思ってもいなかった条件にテオドールは気の抜けた返事をしてしまった。


「さっき見てて思ったんだけど末っ子くん全然子供らしくない!そこで、うちのギルと友達にしたら少しは子供らしくなると思うんだよね!」


その言葉にテオドールは頭を抱える。フォーサイスの第3王子ギルバード=フォーサイス。
ルーカスと同じ年で少々扱いに困る存在である。子供らしいと言えば子供らしい。だが、言葉悪く言えば生意気な子供と言ったところだ。


「ギルバード殿下·····ですか?」

「何、不都合でも?」

「いえ·····ルーカスとはあまりにも性格が反対すぎるので·····」

「·····まぁ、そうだな。でも、意外とどうにかなると思うぞ。」


いつの間にか用意されていたお茶をハロルドは飲む。


「·····わかりました。しかし、ルーカスが嫌がるようなら·····」

「そこは大丈夫。ルーカスが嫌なことをすればあの乱暴精霊王が怒るぞ?」

「乱暴精霊王?」


ハロルドが渋い顔をする。


「まぁ、その話はおいおいね。さて、俺は帰るよ。」 

「夕食は?」

「せっかく寮の外に出たしどっかで食べてこうかな?」

「·····あまり、影に迷惑をかけるなよ?」

「まっかせとけ!」


返事だけはいいハロルドにテオドールは呆れた目を向ける。しかし、ハロルドがいなければこれからもルーカスに負担をかけ続けることになっていた。

心強い親友にテオドールはクスッと笑った。そんはテオドールを見てハロルドも笑う。


「ハル·····ありがとう。」

「おう!じゃあ俺は行くな。見送りはいらね。」


そう言って部屋を出ていくハロルドをテオドールは見送った。

そして、ハロルドが出ていったあとルーカスが寝ているベッドへ戻りルーカスの手を握る。


「·····起きたらまずはご飯を食べようか?そしたら、もう一度しっかり俺と話そう?それまではゆっくりおやすみ。」


テオドールはルーカスの頭を撫でた。そして、1度休憩をするためにルーカスの部屋を後にした。
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