嫌われ愛し子が本当に愛されるまで

米猫

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本編

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「はぁっ·····!!」

「エルド!なかなかいい太刀筋だ」


カッ、ガッと木剣がぶつかり合う音が庭に響く。
ルイスはエルドの剣を受けながらエルドの癖を指摘してく。


「踏み込みが弱くなってきた!」

「はぃっ!」


エルドは指摘された箇所を直し再び打ち込む。

言われた事をすぐに直し実践できるのがエルドの強みである。


「よし、一旦休憩だ。」

「はぁ·····っ·····は、い。」


エルドが肩で息をしているのと反対にルイスはあまり息が乱れておらず汗をタオルで拭いていた。
エルドはそんなルイスを見てこの人は本当に老人なのか?と疑った。


「エルド、なかなかやるな。」

「はぁ、っ···ありがとう、ございます。」


だが、そんな人からの賞賛はとても嬉しく有難く受け取った。


「時にエルド、お前はルーカスと仲が良くないのか?」

「はぁ?」


何故このタイミングでそのような会話が出てくるのかエルドには理解が出来なかった。


「何故そのような事を聞かれるのですか?」

「いやなぁ、エルドとルーカスが話しているのを見てないからな·····テオドールとエルドはベッタリだったが。」

「··········」


エルドは正直に答えるか迷った。だが、相手とは人生の経験値が全く違う。嘘をつけばあっという間にバレるだろう。というより、エルドは元々嘘をつくのを好まない。


「俺は·····あいつが嫌いです。」

「兄弟なのにか?」

「兄弟だからです。」

「ふむ·····」


ルイスはエルドに続きを喋るよう促す。


「嫌なものを嫌と言わない。自分で打ち勝とうとしない。あの弱さが·····俺は嫌いです。」

「·····そうか。」


母親からあれだけ言われても全て受け入れ反抗しない。周りに助けてすらも言わない。

確かに俺は見て見ぬふりをしている。正直、俺は損得を考える。何かをするのであれば利益を考えるし相手に利益を求める。

騎士になりたいと願う身がなにを言ってると思うかもしれない。家族に利益を求めるなんておかしいと思うやつがいるかもしれない。

だが、自分の思考はそう簡単に変えられない。


「なぁ、エルド。人はな誰かを助けなきゃ、いつか自分が困った時に誰も助けてくれないものなんだよ。」 

「·····ですが」

「なーに、ワシもお前さんくらいの歳の時は同じことを考えとった。自分の利益にならんことはしたくない·····だろ?」


エルドは今の祖父からでは考えられないその言葉に驚きつつ首を縦に振った。


「あれは、ソフィアと婚約する前の話じゃ。ソフィアが街中で困っているとこを見かけたんだが、ワシはそれを無視した。何故ならソフィアに手を貸したところでワシにはなんの利益もなかったからな。」

「·····そうですか。」

「だがな、数日後学園内でソフィアと再会したんだがその時ワシは体調が悪くて日陰で休んどった。

そしたらソフィアが近くに来て飲み物をくれたんだ。ワシは有難くその好意を受け取った。だがな、その後ソフィアは私にこう言ったんだ。」


『あなた、この間私を無視したでしょ?本当は助けたくなかったけど、あなたを放っといたら私の気分が悪くなるわ。だから、今度私が困ってたら助けなさい? 

というか、人には優しくするものよ?そうでなきゃあなたが困った時に誰もあなたを助けてくれないわ』

「ワシはその言葉を聞いて色々と考えさせられた。」


その件で、ソフィアに惚れ婚約を申し込んだんだがなとルイスは笑う。

エルドは祖父の言葉を頭の中でもう一度繰り返す。


(··········正直、まだ素直に受け入れられない)


一生懸命考えるエルドをルイスがポンポンと頭を叩く。


「まぁ、まだ若いんだ。色々と経験していくうちに考え方だって変わるさ。だがな、得ることは難しくても失うのは簡単だ。」

「得ることは·····難しくて、失うのは·····簡単」

「そうだ。だから、後悔しないようにしないとな?」


そう言ってルイスは近くにいた使用人に木剣を預け屋敷に戻っていった。

エルドはその姿を見届け再び剣を降り始めた。まるで雑念をはらうみたいに·····
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