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__残された二人は。

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 二人残されたビーチでは──。

「嗚呼……エマ……君という人は……」
「あーんジョセフったら……可哀想に……」

 颯爽と去りゆく妻を見つめるジョセフに、クリスティーヌはぴたりと寄り添う。きっと面倒で非常識な妻に迷惑してるのねと同情し、大きく潤んだブルーの瞳を上目遣いで見つめてやるが、ちっともジョセフは見てくれない。

 なによ、と不機嫌になりかけたその時、ゴクリと彼の喉が動いた。まさかと思い彼の下半身に目をやると、何故か大きく膨らんでいる。

「ジョセフったら……どうしたの? こんなにしちゃって」

 そっと触れるとビクンと身体を驚かせて、「あ、ああ……いや、やっと二人きりになれたから……その、勝手に……」と言うジョセフ。
 珍しく吃る彼に首を傾げつつも、己の身体を求めているんだとその様子から理解し、クスリと笑った。

 やっぱり社交界の華が求めるのは己のような蝶なのだ。だって結婚しても尚関係を続けるなんて魅力があるこそ。やっと手に入れた相手なのだからそう簡単に渡してなるものか。金、顔、地位、彼には何だって揃ってる。

 クリスティーヌは当然のように上に跨り、布越しに互いの性器を押し当てながらキスをする。
 ジョセフもそれに応え、“いつものように”行為を始めた。
 砂浜に押し倒され挿入され力強く突かれるも、なんだかいつもより熱が伝わってこない。ジョセフの顔を見ると、興奮、というより必死さが伝わってくる。
 それでもなんとか射精はされたが、たった一回し終わると「今日はもう帰ろうか」と一言。“いつもなら”夕焼けに溺れるまで此処で求め合うのに。

「興が削がれた……。それで、悪いけど今日は屋敷に帰るよ」
「えっ? どうしてよ」
「いや、エマが言っていたことが気になってね。一応夫だから、妻の監督はしておかないと」
「……そう。分かったわ」

 本当は解りたくもない。己の方が品があり可愛らしく、でも夜は娼婦のように男を悦ばすのに。一度喘げば誰だって虜になる。
 男性に囲まれ持て囃され、女からは羨望の眼差しと妬み。快感で仕方無い。
 でも貴族の結婚には口を出せない。それも侯爵家の。
 まぁその内に子供を授かるだろうしそうしたらあの田舎娘と立場が入れ替わるのも時間の問題だろう。己のほうがずっと妻に相応しいのだから。こんなにも特別なオンナなのだから。




 ──ジョセフは恋人のクリスティーヌを別邸へ送り、屋敷へ帰る馬車の中、悶々考えていた。
 あれを体験するまでは最高に相性がいいと思った。下半身に響く嬌声と唆る表情。多くの男性を虜にしていたクリスティーヌが己に偶然ぶつかったのをキッカケに話が弾んで、それからいつぞやの夜会のあと身体を重ねた。
 自身も多くの女性を虜にしてきたがあれほど情熱的な夜はなかった。恥じらいの顔を徐々に花開かせる優越感。堪らなかった。
 身体が互いを欲していたそのタイミングで政略結婚の話が降りかかり、情熱はより燃えた。反対する心と求め合う身体。

 でもいざ“妻”を抱いたあの衝撃──。
 下半身が持っていかれるかと思った。
 引き締まった身体が自身を離さまいと咥え込んで、果てるときなんか脳みそがスパークしたみたいにチカチカと光った。

 クリスティーヌにだって子種を直接注いだことなんてなかったのに、寸前で膣から抜くことなんて出来やしなかった。
 己の行為が恐ろしくなって彼女のところへ帰らねばと急いで飛び出た。こんなことがあるはず無い。クリスティーヌとの相性が最高に良いに決まってる。彼女を愛しているからこうして準備したんだ。

 恋人の元へ帰ってすぐ彼女を抱いたが、あの衝撃は訪れなかった。でもそんなのは間違いだと、何度も頭に言い聞かせるけどクリスティーヌでは満足出来ない。
 あれを、あれをもう一度。もしかしたら間違いかもしれない。久しぶりに違う女を抱いたから、それで……。

 それでいざ屋敷に帰ったら少しも己を求めていなかっただと?
 クリスティーヌから聞くにその身体を都会の男に晒しておいて、海月のエキスを使わなければ夫になんぞ濡れるわけ無いと言いたいのか。挙句の果てには幾人もの女を啼かせた己がヒョロいと申す。

 だがあの引き締まった腰に、何故かパンティーラインで日焼けした尻が、自身の中にある何かを突いてくる。
 今まで抱いてきた貴族の女性とは全く違う。それが今後出席しなければならないパーティーでもし他の男に寝取られ知られてしまったら? 自分自身、妻とは別に恋人を作っておいて関係を持つなとは言えぬだろう。
 彼女は己の妻なのだ。他の男がこれを体験するなどそんなこと許せない。独り占めしたいと、そう頭を過った。

 ──だがクリスティーヌは?

 結婚して子を授かり暫くしたらエマと別れる気でいた。それで、クリスティーヌと結婚しようと、考えていたのに。そうしたら、二度とエマを抱けなくなる。
 妾にするか、いや、相手方のご両親が許すはずもない。金を積もうにも彼女の家はレストランを経営していて支援など必要がない。
 一体どうしたらあれを独り占め出来るのかと、考えているときに島での出来事があった。

 身体を見るだけで自身のものが反応してしまった。思わず唾を飲む。
 あの謎の日焼けは水着を着ていたからなのか。しかしあの身体を当然の如く晒しおって。他の男に見られたらどうする。見られでもしたら己みたいに勝手に反応して……。

 なんて考えていたら気付けばクリスティーヌが見つめていた。
 白い腿に華奢な身体。いくら突いても搾り取られるようなあの締まりが無い。
 ただ男に身を任せるクリスティーヌ。足りない。こんなんじゃあ足りない。全然足りない。
 屋敷に帰ってあの身体を抱かねば、満たされない──。
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