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野生生物なんて…地元じゃめっきり見れないですよね? 11

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      第一章   七話

「じゃあ先に傷を見せていただきましょう」 

「たのむ」

 彼は二の腕に巻いた布をほどいていく。幸い傷は深いが大きな血管などは傷ついていないようで出血も止まりかけていた。

{ミネルヴァ、どうだい?} 

{外傷は魔法で修復可能です。感染症の診断を行いますので彼の傷口から血を一滴私に下さい}

 布の切れ端で彼の傷口から慎重に血を少し吸い上げるとミネルヴァの眼前に持って行く。すると彼女は躊躇せず布を咥える。

「一体何をしているんだ?」 

 もう一人の男性が興味深そうに聞いて来る。

「このフクロウの名はミネルヴァと言って僕の相棒です。彼女は血の状態から疫病の元になる物が含まれているかの判断が出来ます」

「そんな使い魔なんて初めて聞いたよ...」

「フォーッ」

 ミネルヴァがカモフラージュなのか鳴き声を上げる。

{彼の血液から破傷風菌を検出しました。これより傷口の修復作業、及び抗生物質テトラサイクリンと免疫グロブリンの合成を行い投与します。傷口の清浄化のため“エクスチェンジ”の使用許可を下さい}

{構わない。範囲と条件指定が終わり次第、合図をくれ}

{了解! “範囲指定完了”“条件指定完了”“代替用塩化ナトリウム水溶液合成完了”何時いつでもどうぞ}

「エクスチェンジ」

 小さくスキル名を唱えると、痛々しく開いて汚れていた傷口が清浄化され、代替された生理食塩水で濡れていく。

{続いて傷口の治療を行います。“リペア”と唱えて下さい}

「リペア」

 すると開いていた傷口があっというまに塞がっていく。映像の逆再生のようだ。

{修復完了です。各種薬剤も同時に投与しました。体内毒素もしばらくすれば消えると思われます}

{ご苦労さん。助かったよ}

{いえ、問題ありません}

「終わりましたよ」

 声をかけると全員が目を見開いて呆気にとられていた。

「あんた一体ナニモンだい?傷口が跡形もないぞ。こんな魔法聞いた事もない」

 ...またやり過ぎてしまったようだ。

「...幾つかの魔法を組み合わせて効果を底上げしただけですよ。一つ一つの魔法は大したことではありません。それよりも傷口は塞がりましたが失った血液は戻っていません。暫くは無理しないで下さい」

 慌ててごまかして話を変える。

「...まあ治して貰ったんだ。余計な詮索は野暮だな。遅くなったが俺の名はグンドルフ、あんたの名前はなんてんだい?」

「カナタと申します。宜しくお願いします」

「はは、やっぱりこの辺の名前じゃねーな。ああ、そっちの男は俺の弟でグレゴール。もう一人は俺の娘でフリーダだ」

「宜しく。色々ありがとうよ! 歓迎するぜ」

「宜しくね。良かったら後で旅の話でも聞かせて」

「ご厄介になります」

「さあ、とりあえず村に戻らねえとなんねぇが...どうやって運ぶ? とりあえずこの場で解体しちまうか?」

 興味深そうに聞いて来た。まあ既に“魔法使い”であることは見せたし多少スキルを見せても構わないだろう。

「いえ。他の魔物を寄せ付けないように結界と隠蔽の魔法を使ってここに放置していきます。村についたら僕が魔法で取り寄せますから大丈夫です」

「...もうどこから突っ込んでいいやら分からねえよ...まあいい出発しよう」

 そして僕達は彼らの村に向かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 村に着くと...彼等の帰りを心配していた家族が出迎えた。必然的に僕の事も皆に説明される。

 ひとしきり事の次第を聞いた後、村長を名乗る年配の男性が声をかけて来た。

「グンドルフ達が随分世話になったそうで...何もない村じゃが、ゆっくりしていって下され」

「カナタと申します。突然の訪問申し訳ありません。ご厄介になります」

 そう挨拶すると村長は目を細めて微笑んだ。

「堅苦しいのはそんくらいにして、さっきのソリッドボアを運ぶ魔法って奴を見せてくれねえか? きっとみんな度肝を抜かれるぜ!」

 別に驚かしたい訳じゃないが...騒ぎを聞きつけてだんだん村人が集まって来てる。

 子供などあまり客が来ることもないのか興味深々な瞳でこちらを見ている。

「仕方ないか。場所はここで構わないんですか?」

「ああ、たまの大物はここで捌くんだ。そこの柱に吊って血抜きする所から始めるんでな」

「なるほど分かりました。皆さん少し離れて下さい」

{ミネルヴァ、頼んだよ}

{お任せ下さい。既にスキル設定は終わっております。何時でも発動可能です}

 それを聞いてスキルを発動する。

「エクスチェンジ!」

 スキルを唱えた瞬間、目の前に先程のソリッドボアが現れる。

「終わりましたよ」

 声を掛けて振り向くと村人たちが全員、驚愕の表情で固まっていた。

「はは! もう何が起こっても驚かねーよ。カナタには“常識が通じねえ”ってさっきから判ってたしな!」

 グンドルフ達だけが満足そうに笑っていた。

「勘弁して下さいよ」

 僕はボソリと呟いて肩を落とした。
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