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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
182.呼び方は一緒でも別物
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一心から聞いたことを一通り伝え、聞き終えたウィール様はコテリと首をかしげてこちらを見た。
「それで、君はどう動く気だい?」
「と言いますと?ウィール様。」
報告するまでもなく、精霊達からすでに話は聞いているのだろう。一心との会話しかり、騎士達の教育の件しかり、風が吹く限りこの人に隠し事は出来ないのだから。
それでも報告を求めたのは、私達がどこまで把握しているかを調べるため。
「本来は人の子達の問題だから干渉する気はないんだよ。正直、興味がないしね。この国が栄えようが滅びようがどうでもいい。でもね、この地が血で穢されるのであれば話は別だ。何か僕も手伝えるかい?こちらとしても、精霊妃が尊敬の念を受けていないのは想定外なんだ。悪影響が残れば次代が困る、それは避けておきたいから。」
まるで赤ん坊のケンカを見るように話すウィール様。顔には苦笑が浮かび、そこには怒りも恨みもない。
(まぁ、当然だろうね。)
間違えてはいけない。この生命体は、人間の命などまるで気にしていない。
ただ、植物たちが燃やされるような環境になることを、植物たちが育たなくなることを憂いているだけ。
「今回は精霊妃としての権力を振りかざす方法になるでしょう。相手方に精霊妃というのはとういう存在かを知らしめなければ、本来の立場に戻れません。都合のいいことに、ウィール様の立場はしっかりしているようですから、それを利用させていただきます。精霊妃という脆い立場を、世界樹であるウィール様と精霊王達に支えてもらうような感じです。」
「うん、それは知ってる。でも、精霊妃を名乗る愚か者を君は放置している。アレは今、他の人から少し疎遠にされているようだね。当の本人は孤立しているなんて気付いていないようだけれど、アレを君はどうする?」
そんなウィール様にはニヤリと笑みを返す
「足場になっていただきます。高位貴族を鼻にかける彼女にとっては見下されることも、錠をかけられたまま生きることも屈辱でしょうから。」
そういえば、ウィール様は呆れたような顔をしてこちらを見た。
「彼女に同情するよ。」
「あら、助けますか?」
「まさか。」
両者ともにこやかに微笑みを交わす。
誰かがかこの場を見ていたとしても、話している内容がこんなにも物騒だとは思わないだろう。
「さて、では本格的に準備になりますから、次に会うのは夜会でしょう。しばしの別れです。」
「寂しいけれど仕方ないね。次に会う時にはドレスだろうから、精霊王達の力の結晶であるドレスと、君のメイクアップした姿を楽しみにしているよ。」
「ご期待に添えるよう、努力いたします。で、ガストロ陛下?」
そう言って空気になっていたガストロを見て、シレっと体調を調べる。
(……やっぱりだいぶ体調が戻ってる。)
魔術具の効果とはいえすさまじい速さで回復してるな。でも、これだけ早いのなら、体に負担が出そうなものだがまぁ、魔法がない世界の常識を説いたところで何にもならないだろう。
「…まぁいいや。明日は私の娘に見えるように魔法をかけますので、王城に入って私がやっておいた執務の確認と、処理を頼みますよ。動けますよね?」
「もちろんです。ですがその…、幻影魔法はとても高度で青の騎士団ですら使えるかどうか…。」
「私たちが使う魔法はこの世界の魔法と別の魔法を使っていますので、問題ありません。空、飛べますし。」
「は?」
「空飛べますよ。私と、息子と、娘全員飛べますよ。」
………。
ゲームの世界では当然のように空が飛べ、敵が神や魔人だった。しかしこの世界では空を飛ぶなんて無理だし、魔人や悪神はおろか魔物もいないらしい。
「…青の副騎士団長でさえ、数秒浮かぶことで精いっぱいだったというのに空が飛べ、幻影魔法をも使いこなしているのですか……?」
「私たちもわかりませんが、元の世界にある娯楽の中で使えた魔法が、この世界でも使えるようでして。使えるものは使っていこうの精神で使ってます。」
(一応最高神様から許可もらったし。)
「え……ぁ…そ、…れでしたら何も………ええ、心配なさそうですね。よろしくお願いいたします。」
そう答えたガストロはどこか不安そうだが、本人がいいといったのだからいいのだろう。
「では明日はよろしくお願いしますね。では、これで。」
そう言って私は王城へと戻り、一心と合流した。
「それで、君はどう動く気だい?」
「と言いますと?ウィール様。」
報告するまでもなく、精霊達からすでに話は聞いているのだろう。一心との会話しかり、騎士達の教育の件しかり、風が吹く限りこの人に隠し事は出来ないのだから。
それでも報告を求めたのは、私達がどこまで把握しているかを調べるため。
「本来は人の子達の問題だから干渉する気はないんだよ。正直、興味がないしね。この国が栄えようが滅びようがどうでもいい。でもね、この地が血で穢されるのであれば話は別だ。何か僕も手伝えるかい?こちらとしても、精霊妃が尊敬の念を受けていないのは想定外なんだ。悪影響が残れば次代が困る、それは避けておきたいから。」
まるで赤ん坊のケンカを見るように話すウィール様。顔には苦笑が浮かび、そこには怒りも恨みもない。
(まぁ、当然だろうね。)
間違えてはいけない。この生命体は、人間の命などまるで気にしていない。
ただ、植物たちが燃やされるような環境になることを、植物たちが育たなくなることを憂いているだけ。
「今回は精霊妃としての権力を振りかざす方法になるでしょう。相手方に精霊妃というのはとういう存在かを知らしめなければ、本来の立場に戻れません。都合のいいことに、ウィール様の立場はしっかりしているようですから、それを利用させていただきます。精霊妃という脆い立場を、世界樹であるウィール様と精霊王達に支えてもらうような感じです。」
「うん、それは知ってる。でも、精霊妃を名乗る愚か者を君は放置している。アレは今、他の人から少し疎遠にされているようだね。当の本人は孤立しているなんて気付いていないようだけれど、アレを君はどうする?」
そんなウィール様にはニヤリと笑みを返す
「足場になっていただきます。高位貴族を鼻にかける彼女にとっては見下されることも、錠をかけられたまま生きることも屈辱でしょうから。」
そういえば、ウィール様は呆れたような顔をしてこちらを見た。
「彼女に同情するよ。」
「あら、助けますか?」
「まさか。」
両者ともにこやかに微笑みを交わす。
誰かがかこの場を見ていたとしても、話している内容がこんなにも物騒だとは思わないだろう。
「さて、では本格的に準備になりますから、次に会うのは夜会でしょう。しばしの別れです。」
「寂しいけれど仕方ないね。次に会う時にはドレスだろうから、精霊王達の力の結晶であるドレスと、君のメイクアップした姿を楽しみにしているよ。」
「ご期待に添えるよう、努力いたします。で、ガストロ陛下?」
そう言って空気になっていたガストロを見て、シレっと体調を調べる。
(……やっぱりだいぶ体調が戻ってる。)
魔術具の効果とはいえすさまじい速さで回復してるな。でも、これだけ早いのなら、体に負担が出そうなものだがまぁ、魔法がない世界の常識を説いたところで何にもならないだろう。
「…まぁいいや。明日は私の娘に見えるように魔法をかけますので、王城に入って私がやっておいた執務の確認と、処理を頼みますよ。動けますよね?」
「もちろんです。ですがその…、幻影魔法はとても高度で青の騎士団ですら使えるかどうか…。」
「私たちが使う魔法はこの世界の魔法と別の魔法を使っていますので、問題ありません。空、飛べますし。」
「は?」
「空飛べますよ。私と、息子と、娘全員飛べますよ。」
………。
ゲームの世界では当然のように空が飛べ、敵が神や魔人だった。しかしこの世界では空を飛ぶなんて無理だし、魔人や悪神はおろか魔物もいないらしい。
「…青の副騎士団長でさえ、数秒浮かぶことで精いっぱいだったというのに空が飛べ、幻影魔法をも使いこなしているのですか……?」
「私たちもわかりませんが、元の世界にある娯楽の中で使えた魔法が、この世界でも使えるようでして。使えるものは使っていこうの精神で使ってます。」
(一応最高神様から許可もらったし。)
「え……ぁ…そ、…れでしたら何も………ええ、心配なさそうですね。よろしくお願いいたします。」
そう答えたガストロはどこか不安そうだが、本人がいいといったのだからいいのだろう。
「では明日はよろしくお願いしますね。では、これで。」
そう言って私は王城へと戻り、一心と合流した。
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