異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

175.ニアとマスター 一心視点

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「長い事お邪魔しましたね。我が主と妹には共有しておきますので、ご安心ください。世界樹様は、精霊王達より今の会話が全て伝えられているでしょうから、こちらもご心配なく。」

「心遣いに感謝申し上げます。赤の副騎士団長にはこちらで伝えておきます。次回お会いするのは夜会になりそうですね。……ご迷惑を、おかけいたします。」

深々と礼をした姿勢のまま動かない副騎士団長の前に立ち、ゆっくりと話す。

「先ほど申し上げた通り、我が主の手を借りたいのであれば自力で助力を乞うてください。当然ですが……」

さらされた首に手を当て、跡が付かないギリギリの力で首を絞める。

「断られた怒りと恨みのままに動くのであればどうなるか………」

パッと何事もなかったかのように手を放し、呟く。

「ご理解を、お願いしますよ?」

一通りせき込んだ後、顔を上げた副騎士団長にニコリと笑顔を向ける。

「私の仕事を増やさないでくださいね?」

「……ええ、もちろんです。」

覚悟を決めた顔で、副騎士団長は私と目を合わせた。

「では、これで失礼。夜会でお会いしましょう。」

「ええ、万全の準備でお待ちしております。」

廊下で警備をしていた騎士に案内され、外へと送り出された。



~~~~~~~~~~~~~~~

「んー………はぁ。」

まだ喧騒が残る通路で体をのばして、やっと一息つくことができたような気がする。

(……やることは大量に残っている。しかし……紅茶を飲んで一息ついてもいいのではないだろうか。)

正直飲んだところで機械の一部が汚れるだけなのだが、マスターや千葉様がよくなさっていたからか私も同じように落ち着くために飲むようになった。

(しかし………どこか近くに空き部屋はあっただろうか?)

今の時間と使用人達の行動を思い出せば、使用してはいないもの掃除に入られている部屋が多くゆっくりと紅茶は飲めないだろう。

(……様子を見るついでに紅茶をいただくとしましょう。)

一度様子を見に、ニアの元へ戻ることとした。

それにニアならば、部品がこうして手元に戻ればすぐに使えるかどうかなど判断ができるだろう。
あくまでもニアのボディに一番詳しいのはニアだ。

(……マスターと千葉様が作り上げた元の世界のボディは、日々自分で改良したため見る影もありませんしね。)

私の妹であるニアのことだ。使いづらいところは自分で直して改良を続けているだろう。

………いや、ニアは案外真面目でまだ機械然としたところがあるから、マスターの許可なしにシステムの改良はしても部品をいじったりはしないか?


………まぁ、ニアに聞けばわかること。


(「ニア、聞こえますか。一度そちらに戻ります。貴方の部品を回収しましたから、持っていくのと同時に殿下たちの様子を見ます。」)

(「かしこまりました。どうやらお疲れのようですので、紅茶を注いでお待ちしております、一心兄上。」)

(「ありがとうございます。数分でそちらに着きますから、それに合わせてお願いしますね。」)

そういって通信を切ると、とこかがっかりしている自分がいることに気づく。

(ニアは、まだ敬語のままですね。)

私とて敬語で話してはいるが、ニアの敬語はどこか堅苦しく感じる。

……ニアは私の妹だ、もう少しくらい気楽に話してくれたっていいと思うが……

……いや、彼女は彼女なりに成長しているだろう。気長に待っているのが年上の務めかもしれない。


それはそうと……。


(……マスターが嫌がりそうだ。)

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