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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
174.夜会に向けて着々と 一心視点
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「私はひとまず副騎士団長として、緑の洋服の回収に動かなければなりません。回収の際にはドレスを所持していた令嬢の名前を記録しておきます。」
「それは助かります。こちらも情報を集めておりますが、情報の正確性を確かめる時間が少ないのです。」
「これくらいしかできませんから。」
「十分です。夜会までに少しでも情報が欲しい状況ですから。」
互いにお菓子を摘まみつつ、互いの状況や情報を交換していく。
「ああ、回収予定の令嬢の中にロウ伯爵令嬢はいますよね。」
「ええ。」
「彼女の緑のドレスだけを回収しないでいただきたい。」
「なぜです?彼女は緑の洋服を着る令嬢たちの筆頭。真っ先に回収すれば、彼女の勢力を削ぐことができ、噂の払拭も可能でしょう。」
「そんな彼女を伯爵家が守っている状況です。今彼女をどうにかしたところで、反対派の者たちをいたずらに刺激するだけです。ならば、夜会当日にまとめて叩きのめすに限ります。」
「叩き……了解いたしました。では、他の方々の分のみを回収して名簿を作成いたします。今のところ予定している回収者はこちらです。」
苦笑されながら数枚の書類を手渡される。几帳面なものが作ったとすぐに分かる書類には、令嬢たちの名前がズラリと並んでいた。
「……情報として知ってはいましたが、こうして書類としてみると多さにうんざりしてきますね。念のため確認いたします。ここに記載されている令嬢達全員が緑の洋服を着用していたのですね?」
「はい。全員が着ていたことを確認しています。ただこの内の何名かは何者かによって、既に何らかの被害を受けており、洋服が布切れと化していたため回収は出来ておりません。」
「ああ、それは精霊王達の仕業ですね。以前、彼らの独断で制裁が行われたと世界樹様より報告がございました。」
「ならば何も問題はございません。苦情の報告がこちらにも来ていますが、全てこちらで処理しておきます。一心様から要望はございますか。」
「夜会当日の警備体制の地図を見せていただきたい。青の騎士団長殿から聞いてはいますが、念のため確認したいのです。」
「かしこまりました。……こちらです。赤の騎士団とも共有しているはずですので、赤の騎士団での確認は必要ありません。」
「感謝いたします。」
(ふむ、もともと得ていた情報と差異はありませんね。)
「……この中のどの位置に、伯爵家の派閥の者がいますか。」
「この場所ですね。ああ、この場所に密集するように配置してあります。」
騎士団長とは違い、問いかければすぐに適切な回答が出てくる。
おかげでテンポよく確認ができ、不明な点もすぐに減っていく。
(楽ですね。ニアと話している気分です。)
「なるほど。自派閥の近くに置くことで、敵対派閥の者たちが我が主に不快な思いをさせないように、ですね?」
「その通りです。正直、互いに敵対派閥の者を囲むように配置しようと考えました。しかし、精霊妃様がいらっしゃって初めての夜会です。確実に一騒動あるでしょう。その場合、伯爵家に対して有利な配置になってしまいます。」
「戦闘になった場合にこの配置では、確実に伯爵家に対抗する公爵家の派閥の当主達は狙われ害されるでしょうね。」
というか、間違いなく殺されるだろう。
(人数差がないのに囲うために人員を使ったら、敵を閉じ込めておくための戦力は足りない。)
警備の相談をした騎士団全てが伯爵家の派閥とみなされてもおかしくない状況だ。
「その通りです。あまりにも危険性が高いため、却下いたしました。」
次々に資料をめくり、ふと疑問がわく。
「おや。我が主の近くには、あなた方が護衛を?」
「ええ。あまり大きな声では言えないのですが……。団長達はそれぞれ魔術と剣術に優れておりますが、あまりにも実戦経験が少ないのです。両団長の技術自体は素晴らしいのですが、長い詠唱を必要とする魔法ほど実践では必要ありませんし、基本の剣術を忠実になぞるだけでは敵を倒せません。」
かっこいいのは分かりますが……と続けられ、思わず心の中で天を仰ぐ。
この世界の魔法は威力と口頭での詠唱の長さが比例する。威力が強ければ詠唱は長い。
しかし実践でそんな威力の高い魔法を使う機会なんて、あってたまるか。
実際に騎士団で聞こえてきた魔法の詠唱は一番威力が低いものばかりだった。
剣術に関しても、演目として振るう剣で同じように敵を切っても、剣に力が入らず全く役に立たないだろう。
演目で重要なのは、流れと美しさ。戦闘で重要なのは、力と素早さなどなど。
(少し考えればデメリットの多さに気づくだろうに。そもそもかっこいいから使う?小学生か?命を賭けた戦闘に、なぜロマンを求める…?)
「……詠唱中に攻撃されて再起不能になってしまえ。」
「一心様?今、何か?」
「なんでもありませんよ。」
顔をニッコリ笑顔に変えて、何でもない風に装う。
その後も情報のすり合わせや、当日の動きを確認していった。
「…ああ、言い忘れていましたが当日、主が誘拐されますが自力で会場まで戻られるのでご心配なく。」
「ハッ?」
「ご心配なく。」
「かしこまりました……?」
「それは助かります。こちらも情報を集めておりますが、情報の正確性を確かめる時間が少ないのです。」
「これくらいしかできませんから。」
「十分です。夜会までに少しでも情報が欲しい状況ですから。」
互いにお菓子を摘まみつつ、互いの状況や情報を交換していく。
「ああ、回収予定の令嬢の中にロウ伯爵令嬢はいますよね。」
「ええ。」
「彼女の緑のドレスだけを回収しないでいただきたい。」
「なぜです?彼女は緑の洋服を着る令嬢たちの筆頭。真っ先に回収すれば、彼女の勢力を削ぐことができ、噂の払拭も可能でしょう。」
「そんな彼女を伯爵家が守っている状況です。今彼女をどうにかしたところで、反対派の者たちをいたずらに刺激するだけです。ならば、夜会当日にまとめて叩きのめすに限ります。」
「叩き……了解いたしました。では、他の方々の分のみを回収して名簿を作成いたします。今のところ予定している回収者はこちらです。」
苦笑されながら数枚の書類を手渡される。几帳面なものが作ったとすぐに分かる書類には、令嬢たちの名前がズラリと並んでいた。
「……情報として知ってはいましたが、こうして書類としてみると多さにうんざりしてきますね。念のため確認いたします。ここに記載されている令嬢達全員が緑の洋服を着用していたのですね?」
「はい。全員が着ていたことを確認しています。ただこの内の何名かは何者かによって、既に何らかの被害を受けており、洋服が布切れと化していたため回収は出来ておりません。」
「ああ、それは精霊王達の仕業ですね。以前、彼らの独断で制裁が行われたと世界樹様より報告がございました。」
「ならば何も問題はございません。苦情の報告がこちらにも来ていますが、全てこちらで処理しておきます。一心様から要望はございますか。」
「夜会当日の警備体制の地図を見せていただきたい。青の騎士団長殿から聞いてはいますが、念のため確認したいのです。」
「かしこまりました。……こちらです。赤の騎士団とも共有しているはずですので、赤の騎士団での確認は必要ありません。」
「感謝いたします。」
(ふむ、もともと得ていた情報と差異はありませんね。)
「……この中のどの位置に、伯爵家の派閥の者がいますか。」
「この場所ですね。ああ、この場所に密集するように配置してあります。」
騎士団長とは違い、問いかければすぐに適切な回答が出てくる。
おかげでテンポよく確認ができ、不明な点もすぐに減っていく。
(楽ですね。ニアと話している気分です。)
「なるほど。自派閥の近くに置くことで、敵対派閥の者たちが我が主に不快な思いをさせないように、ですね?」
「その通りです。正直、互いに敵対派閥の者を囲むように配置しようと考えました。しかし、精霊妃様がいらっしゃって初めての夜会です。確実に一騒動あるでしょう。その場合、伯爵家に対して有利な配置になってしまいます。」
「戦闘になった場合にこの配置では、確実に伯爵家に対抗する公爵家の派閥の当主達は狙われ害されるでしょうね。」
というか、間違いなく殺されるだろう。
(人数差がないのに囲うために人員を使ったら、敵を閉じ込めておくための戦力は足りない。)
警備の相談をした騎士団全てが伯爵家の派閥とみなされてもおかしくない状況だ。
「その通りです。あまりにも危険性が高いため、却下いたしました。」
次々に資料をめくり、ふと疑問がわく。
「おや。我が主の近くには、あなた方が護衛を?」
「ええ。あまり大きな声では言えないのですが……。団長達はそれぞれ魔術と剣術に優れておりますが、あまりにも実戦経験が少ないのです。両団長の技術自体は素晴らしいのですが、長い詠唱を必要とする魔法ほど実践では必要ありませんし、基本の剣術を忠実になぞるだけでは敵を倒せません。」
かっこいいのは分かりますが……と続けられ、思わず心の中で天を仰ぐ。
この世界の魔法は威力と口頭での詠唱の長さが比例する。威力が強ければ詠唱は長い。
しかし実践でそんな威力の高い魔法を使う機会なんて、あってたまるか。
実際に騎士団で聞こえてきた魔法の詠唱は一番威力が低いものばかりだった。
剣術に関しても、演目として振るう剣で同じように敵を切っても、剣に力が入らず全く役に立たないだろう。
演目で重要なのは、流れと美しさ。戦闘で重要なのは、力と素早さなどなど。
(少し考えればデメリットの多さに気づくだろうに。そもそもかっこいいから使う?小学生か?命を賭けた戦闘に、なぜロマンを求める…?)
「……詠唱中に攻撃されて再起不能になってしまえ。」
「一心様?今、何か?」
「なんでもありませんよ。」
顔をニッコリ笑顔に変えて、何でもない風に装う。
その後も情報のすり合わせや、当日の動きを確認していった。
「…ああ、言い忘れていましたが当日、主が誘拐されますが自力で会場まで戻られるのでご心配なく。」
「ハッ?」
「ご心配なく。」
「かしこまりました……?」
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