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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
173.許可を 一心視点
しおりを挟む「それから、暇を見つければ二人で会合を重ねました。」
小さな異変から、周りの人の言動の中で気付いたことまで端から話し合っていきました。
「その中で、ふと気づいたのです。騎士団長を始めとして、国王陛下から公爵様まで様子がおかしいのです。」
陛下は以前よりも執務を行う時間が減り、伯爵家と関わる時間が増えました。
公爵様も伯爵家と関わる時間が増え、瞳に覇気が見えなくなりました。その後ぱたりと伯爵家と会うことがなくなり、元も距離感に戻りました。
令嬢たちは以前よりも緑のドレスを纏う者が増え、毎日のように緑のドレスを纏うロウ伯爵令嬢は精霊妃に違いないと言われるようになりました。
「…今思えば、異常な速度でその噂が広がっていました。」
そうして二人で出した結論は、「伯爵家が結託して政治の実権を握ろうとしている。」
「…使用人の中には貴族家出身の者が大勢おり、当然伯爵家の分家の者もおります。毒をもったのはその者達ではないでしょうか。」
(ふむ………。その結論が出てくるあたり、情報収集力と推測のための能力は殿下たちよりあるらしいですね。)
そんなことを考えていれば副騎士団長はこちらを見ていて、ゆっくりと私の足元に跪いていた。
「……世界樹様方とは無関係な件であることは重々承知の上です。しかし、他者の手を借りなければもう正常には戻らないところまで国は腐ってしまいました。」
「そうですか。ですがあなたの言う通り、私はもちろんのこと我が主にも関係のない話です。」
「ええ、存じ上げております。ですので許可をいただきたいのです。」
「おや、許可ですか?」
「ええ。」
顔を上げ、私に目を合わせて副騎士団長は言った。
「貴方の主を、この国の些末事に巻き込む許可を。」
…………
少し考えて、マスターならばどう応えるかを考えた。
(本来マスターは見向きもされないだろう。断るのはたやすい。しかし……いや、)
「それは、私が判断を下していい事ではありません。我が主…いえ、精霊妃様の協力が必要なのでしたら、ご自身で助力を願ってください。」
と、答えることにした。
(正直、いまマスターがどう答えるのか分からない。これは、私が決めていい事ではない。)
私の答えに少し驚いたようで、それでもしっかりとこちらを見て
「かしこまりました。」
と答えた。
(まぁ想定以上の働きをしてくれるようですから、背中くらい押してあげましょう。)
「では、私のこれも独り言ですが。我が主は殿下を教育し直す気でいらっしゃいます。あなた方が危惧している通り、殿下の教育状況は目も当てられないほどひどい状況でした。しかし、今は私の妹と赤の副騎士団長により教育を受けている状況です。赤の副騎士団長の助力もあり、団長たちも少しはまともになるでしょう。」
そう言って跪いていた副騎士団長を立たせ、目を合わせて念を押しておく。
「…今、何を、我が主が求めているのかは、お考えください。」
「……感謝いたします。」
そう答えると、お互いに座り直して紅茶を飲む。
「……では、これからのことをお話いたしましょう。」
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