異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

169.密告と愚か者 一心視点

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(騎士団は大きく3つに分かれていた。)

王を守る近衛、殿下と中心に守り剣術に優れている赤、民を中心に守り魔術に優れる青。

それぞれがいざというときに動けるよう、日々訓練を行い連携が取れるよう会合を重ねている。


……と、言われている。


実際には近衛と他、という感じで分かれており、二つが互いにいがみ合っている。

近衛同士の連携や情報伝達は良いものの、近衛と赤、近衛と青は仲が悪い。

それを補うように赤と青は連携が固く、実力で公爵家の子息が継ぐようになってからもそれは続いている。

(まぁ、無理もないのでしょう。)

近衛は他国との戦いがあった時には真っ先に最前線に向かい、残った半数ほどが国王を守るように動く。町の近くに来なかった場合、赤や青の騎士団はほぼ動かずに近衛の穴を埋めている。

命の危険が多いため、近衛は赤と青の実力者が選ばれることがほとんどで給料もいい。

(………はぁ。それを選ばれた特別な人間だと優越感に浸るのは個人の勝手ですが、その感情のまま他者を嘲笑うとは……。なんて愚かな……。)

感情自体は理解しているが、その感情を表面に出して他者を害すなど吐き気がする。

(そのうえ自分の力を才能だと勘違いし、他者の努力を嘲笑い見下す。……はぁ、救いようがありませんね。)

集めた情報や貴族のつながりを思い出しているうちに王城を出て、青の騎士団に到着した。

「そこの者、止まれ!ここは青の騎士団本部である。何用か。」

「精霊妃小鳥美様の執事、一心です。小鳥美様ご命令により、ニアの部品を受け取りにまいりました。」

「こっ。たっ大変失礼いたしました。一心様ですね。……その、大変申し訳ないのですが、ここにサインをいただいても…?……ああ、その!警備のために皆様にお願いしておりまして……。」

「ええ、もちろん。ペンをこちらに。」

ガタイが大きいことに反し性格は気弱らしい。

申し訳なさそうにこちらにペンを差し出し、書類で隠すようにメモを渡してきた。

(一部の団員がニア様の部品を紛失に見せかけ盗んでおります。このようなご連絡となり、申し訳ありません。副団長の命令すら聞きませんでした。)

「……はい、これでよろしいですか?」

「ええ、問題ありません。お通りください。あ、最初に副団長室にお入りください。中の者が案内いたします。」

「どうも。…………ありがとうございます。」

「……申し訳ありません。」

にこやかに微笑みメモをくしゃりと握り潰す。

メモには副団長の命令すら聞かない、と書いてあった。

(つまり、副騎士団長の、命令が騎士団長の命令よりも強い効果を発している。)

しかしニアの部品を隠されたか。まぁ、壊されるよりはましとしましょう。


「こちらです。」

「どうも。」

王城とは打って変わって騒がしい騎士団内を進み、できる限り音を拾っていく。

(……ニアの部品は………。)

怒号や号令の声、噂話に交じって微かに聞こえてきたのはカンッという金属音。

「こちらです。」

「失礼、少しこちらに来ていただいても?こちらにニアの部品の反応がありまして。」

「……?そちらに、ですか?ニア様の部品は誰も触れぬように、副騎士団長が一か所に集めたはずですが……。」

いぶかしげにする案内の騎士をつれ、金属音が聞こえたあたりに近づいていく。

(………少し小さな部屋の中。人数は二人。ニアの部品の反応もあり。)


「こちらにはどのような部屋があるのですか?」

「こちらは騎士達が自作の魔術具を調べ合ったり、改良点を話し合ったりするための部屋です。しかし今は訓練中のため、使う者もいないはずですが……。」

その間にも、私の怒りを誘うように会話が聞こえてくる。


(「あ、あの、これ本当に砕ていいんですか?」)

(「こんなチャンスをみすみす逃す気ですか?異世界の魔術具!!こんな貴重な物は分解して調べるしかないでしょう!」)

(「ですが…ですがこれ、精霊妃のメイドのものですよね??本当にいいんですか。」)

(「何を怖気ついているんです?あんな大掛かりな魔術具の部品、一つや二つ無くなったって気付けませんよ。そもそも一介の従者がこの私の役に立てるのです。光栄に思い自ら差し出すのが当然というものでしょう。」)

言い訳のような会話に、呆れと怒りがわいてくる。

(マスターが気付かない?そんなわけがないでしょう。)

「この部屋、開けても?」

聞こえてくる部屋の前まで移動し、威圧をのせた笑顔を浮かべる。

「え、ええ構いませんが……。」

許可は取った。

ふざけた会話が聞こえてきた部屋を、ノックもせずに開けた。
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