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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
167.決定事項の報告 一心視点
しおりを挟む「教育係の補佐として、ザール殿をお呼びしました。」
「ザールが?!」
「ええ、あなたの代わりに事務作業を行っていたザールです。」
いち早く状況を理解したレイピストが、少し睨むようにこちらを見て呟く。
「……公爵である私が、男爵に教えを乞えというのですか。」
その言葉を言い終えたことを待ってから、わざとらしい溜息を吐き、私は彼を殴り飛ばした。
「ニア、壁の修復を頼んでも?」
「了解しました、一心兄上。」
轟音はとっさに防音できたが、壁は壊してしまった。まぁいいでしょう。
「さて………レイピスト様。貴方は私を怒らせるためだけに存在しているのでしょうか。」
「………。」
「黙っていてもかまいませんが、あなたが自分の部下よりも劣っているというのは理解してくださいね。確かな事実ですよ。実際に、あなたの執務を肩代わりしていたのは彼でしょう?」
じわりじわりと滲む嫌悪感を隠すことなく、頭をつかみ目を合わせる。
「マスターはこの世界に来て一年もたっていません。そんな方に教えを乞う立場なのですよ、あなたたちは。男爵家の者に教えを乞うことを腹立たしく思いたいのであれば、異世界から来られたマスターよりも無知な自身を恥じなさい。」
「………………。」
「幼少期に、自分が楽しいと感じた授業のみを受けて、それだけを学んでいた報いですよ。ねぇヤドゥール様?」
ヒュッと音を鳴らし、歯をカタカタと鳴らすヤドゥールを見る。
「思い出しませんか?あなたはこの国の規則や歴史を学ぶ勉強から逃げて、魔術や魔道具の勉強をしていたでしょう?レイピスト、あなたは確か……同じものから逃げて、剣術を身に着けていたそうですね?」
「なぜ………?なぜあなたがそれを知って…?」
「私をお忘れですか……はぁ。ただの人の子ごときが…ねぇ。」
そう呟いたのはすっかり空気になっていた、光の精霊王ラトネス。
「精霊を忘れ、人の子との懸け橋となる精霊妃を見下し緑を纏う。あまつさえ我らが王である世界樹様を粗雑に扱う………。少々、調子に乗りすぎなのでは?」
それをきっかけに闇の精霊王も口を開く。
「ラトネス、階級というものが作られてからずいぶん経つ。その階級とやらのせいではないか?」
「確かにダーネスの言う通りかもしれませんね。生まれただけで身分与えられるような制度がつくられてから、こうして傲慢で勘違いをするものが増えているような気がします。」
「「ウィール様と姫様に報告しなければ/いけませんね。」」
「そして、指示を仰がなければ。……そう思いませんかダーネス。そして一心、あなたも。」
冷たいまなざしで騎士二人を見る精霊王二人、そこに冷静な声が響く。
「一心、お客人が来ているのだろう?このような人の子、放っておけばいいだろう。」
「愚者など、勝手に滅ぶものだ。」
どうやら氷の精霊王にも見放されたようですね。
ただ、水の精霊王は何も言わない。
ただ私の方を見て、扉を開けろと指示している。
「あなたが何を言おうと勝手ですが、これは決定事項ですレイピスト。赤の副騎士団長であるザール=スガリトよりこの世界の規則やこの国の規則を学んでください。ニア、彼ら二人に容赦などいりません。殺さないことだけは厳守すれば、後は何をしてもかまいません。ただし、ザールの口をふさぐことを忘れずに。」
まだ何かを言おうとするレイピストを無視して扉を開け、ザールを中へ招き入れる。
「どうぞ中へ。」
「はっ。失礼いたします。」
どこか緊張した様子で中に入ってくるザール。私が扉を閉めると同時にはっきりとした声であいさつを始めた。
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