異世界情報収集生活

ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

159．届かぬ親の思い

現実逃避したい私に追い打ちをかけるように、一心は続ける。

(「そのアホ共がいる国をどうにかするんでしょう？マスター。頑張ってくださいね。私も手伝いは致しますが、基本はマスターが中心ですよ。我ら人工知能は貴女の手足ですから。」)

(「気が重い………。」)

言外に「私達の仕事は計画することじゃない。」と言われ、ちょっとしょんぼりしつつ報告を促す。

(「毒物に侵されていたのは公爵と国王、また、騎士団員もほんのわずかにその傾向が見られます。ただ、副騎士団長は互いに状況を確認しあっていたためか、毒の影響が少ないようです。」)

(「一心今王城だよね？その二人と会合がしたいだけど、時間取れそう？」)

反射的にそう伝えれば、呆れたように一心は言う。

(「マスター、明後日に夜会が控えているの覚えていらっしゃいますよね？限られた時間の中で国王が行うはずの執務を終え、王城の検査を終え、教育を施し、毒物の検査を行っている今の状況を、ご存じですよね？」)

(「でも、正気に近い人たちに今の状況を聞きたいんだよ。団長がアレな分、副団長はまともだっていう噂だし。」)

(「はぁ………。」)

ピーッと機械音がした後に、一心は少し怒りを含んだ声を出した。

(「いいですかマスター。会合の予定を入れたいのであれば、入手した情報の整理を早めに終わりにしなければいけません。また、誰かに任せるというのも手ですね。ただ、神様は神々の領域にいらっしゃいますし、ウィール様が代役を務められるとは思えません。」)

(「ああ、それなら大丈夫。国王ガストロは明日から使えるから。」)

(「と、いいますと？」)

(「起きた。」)

（「は？」）

（「隠し持っていたネックレス型魔術具のおかげですっかり元気。もう意識ははっきりしているし、解毒も急激に行われてる。もう、明日には元気に動き回れるよ。」）

(「………」)

(「これには私もびっくりしたよ。」)

（「………………マスター、一時通信を切ります。すぐに繋ぎ直しますので、少々お待ちください。」）

（「りょーかい。」）

………

「荒れてんなぁ。」

絶対荒れてる。ギャアギャア叫んでるよあの子。

「変なとこ真面目だからなぁ。」

一応執事として存在している以上、私の前で感情の発散は出来ないのだろう。

(はぁ……。こっちは気にしないのに。)

むしろドンと来い！！さぁ泣け！みたいな感情なのに一心はそれを全くしてくれない。

理由は前から分かっている。

一心の立ち位置をどうとらえているかの違いだ。

私は一心を相棒だと思っている。
人間としての感情を育てさせるために息子として愛情を注いでいるだけに過ぎない。

しかし一心は、自分はただの優秀な執事だと思っているのだろう。


そんなわけがないじゃないか。


(まったく。少しは甘えてくれたっていいのにねぇ？)

そうこうしているうちに、あちらで少し落ち着きを取り戻したらしい。

一心からまた連絡が入った。