異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

157.信じて

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「……話を戻させていただきます。精霊妃様様、ネックレスにミーロト伯爵が触れられるようになっていたのですか。」

「うん。今これに触れられる人間は、君とカリストロ殿下、ミーロト伯爵、宰相マフィックス、オガリス公爵になってるよ。」

ネックレスの中の魔法文字を説明しながら、指をさす。

「ここにね、触れていいよって人の名前が載ってる。ほら、ミーロトって書いてあるでしょう?」

「ええ、確かに……。一体、いつの間に。」

いつ書き換えられたかわからない様子のガストロを放置してさっさと削除を始める。

「ガストロ、触れさせたことも、見せたこともないのかい?」

ふと、ウィール様が不思議そうにガストロを見る。それを同じような顔で返しながら、ガストロは答える。

「はい。いつも奪われたり壊れたりしないよう、服の中に隠しておきましたから。」

「ふぅん?おかしいね。君の部屋をよく行く下級精霊たちは、君が自らネックレスを差し出したのを見たといっているよ?知っているだろう?精霊は、嘘をつかない。」

周りにいる下級精霊に手を差し出し、耳を傾けるウィール様。

ひそひそと楽しそうに伝えている彼らは、とてもかわいい。

(見た目よし、情報収集能力よし、正確な伝達力よし。)

私の手にも乗ってくる下級精霊をなでつつ、驚愕のまま動けないガストロに現実を突きつける。

「確実に、操られていたんだろうねぇ。王城を片っ端から調べさせてもらったけれど、国王しか使えない印鑑あるでしょう?あれは紛失していた。代わりに、君の名前のサインで書類が決裁されていたよ。ま、君の名前っていうだけで似せる気もないサインだったけれど。」

「なんと……。ミーロトめ、そこまでして私の王位を奪いたいか。」

「誰だって権力は欲してしまうんだよ。その力に溺れ堕落するか正しく刃をふるうかは、心根の美しさによって変わるけれどね?」

そういってチラリと、ガストロを見つめる。

(ねぇガストロ。あなたはどっち?)

……

まぁそんなことはどうでもいいのだけれど。

「それで?ミーロト伯爵は触れられないようになったけれど、亡き奥方が作ったこれは殿下に渡すの?」

「……精霊妃様様、あなたは聡明でいらっしゃる。」

突然そういいながらまっすぐ私を見つめるガストロ。

起こしていた体をベッドから降ろし、国王として威厳をまとい私に向き合った。

「……なにか、お考えがおありの上での進言だと受け取ります。よろしいですね?」

それに応えるために私も、精霊妃様としての威厳をまとい表情を作る。

「もちろんですわ。」

なおも無言で渋るガストロに、悪い顔をして続ける。

「それに………仇はやはり本人にとっていただきたいじゃないですか。」

物には感情が宿るという。
それは、この世界の魔術具にも適応されている。

強い感情と魔力魔力を込めたものがひとりでに装着者を守るなんてことは、この世界ではよくあることだ。

(物を大切にする文化がないからか、あまり伝わっていないようだけれど。)

「……精霊妃様様の仰せのままに。」

「ごめんね。でも、必ずカリストロの分を作るから。」

「いえ、かまいません。妻の思いが込められたこれは、また、私を救ってくれるでしょうから。ただ……。」

「?」

「老い先短い私ではなく、未来ある幼いカリストロを守ってほしいと思っただけです。」




………




「だからカリストロは20過ぎてるって。」

「あ。」

「全く、慣れてほしいんだけれど。」

「ウィール様……返す言葉もございません。」

ばつが悪そうに答えるガストロ。まぁ、思考はほぼ毒を盛られた当時で止まってるものね。


「仕方がないとはいえ、早く今の状況に頭を持っていってね。」

「もちろんです精霊妃様様。」

全く。


……


「他だって自分だって年取ってるんだからね。君のご友人はすっかりおじじだよ。」



「……そうでした。」
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