異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

154.信じたい

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「聞かせてごらん?どうして自分を陥れるわけに行動していると思わないの?」

能天気バカなガストロらしい考えに多少の怒りを覚えて問いかける。

「二人とも国のために学び、動き、時に苦言を呈してくれた良き臣下だからです。どうしても彼らが、国に不利益をもたらすとは思えません。」

「あっそ。じゃあそんなあなたに一言だけ。本気で覚悟を決めた人間の殺意は、何十年たっても鈍らないよ。」

予想通りの答えに、真面目に返す気力もわかない。

まぁ正直、何年前の恨み!とか言われてもこっち恨まれる側はわからないけどね。

「小鳥美。ちょっといいかい?」

「どうされました、ウィール様。」

「私も少し考えたんだけれど、国のために行動した結果、公爵夫人たちから君へ嫌がらせ行為があったとは考えられないかな。」

(……まぁ、考えたけれど、さ。)

「ウィール様の言う通りのことが事実だとしても、王太子であるカリストロ殿下に正しい教育をしなかった理由が分かりません。傀儡にするつもりだとしても、長い時間安定して操るためには信頼してもらうことが一番です。公爵夫妻はそこまで馬鹿だとは思いません。精霊妃がどういう存在であるかの教育を受けており、公爵としての職務を全うしており、国王か国への忠誠心を持っていますから。」

カリストロ殿下に教育を施さなかった理由。ひとまず考えられるのは

1.そもそも使い捨ての駒。

次代を主軸に考えている場合、婚約者候補である自分の娘を結婚させて政治を行う。
だから娘が殿下をうまく押さえれば、公爵への信頼など必要ない。

ただ、親睦を深めるためと理由を付けてお茶会でも勉強会でもできたはずなのに、当の公爵令嬢は何もしていないから可能性は少ない。


2.全てが偽り。

ガストロが殿下だったころから政治の主導権を狙っており、公爵家で手を組み、かねてから考えてきた反逆を今行った。ただ、ならなぜ公爵二人が同じ派閥にいるのが疑問になってくる。一方は国王に、一方は対国王の派閥にいれば、双方の情報を得られて共有できるのだからしない理由がない。

「ねぇ小鳥美、彼らはそもそも国王の入れ替わりに気付いているのかい?」

その言葉にビリシと固まる。

「えっ。気付いている前提で話してましたけど……。」

「ガストロ。君が毒に侵され始めたのは、カリストロが5歳ごろ。つまり20年ほど前からでいいのかい?」

「おそらくは。ただ、そのころはただの病気だと思っておりましたので、自ら自室にこもって執務をしておりました。」

「小鳥美、君が得た情報では国王は療養していることになっているのかい?」

「いいえ。元気いっぱいで小さい殿下と遊んでいましたよ。……ああ、そのころでしたね。国王が精霊関係の教育を義務ではなく推奨にしたのも、王妃の散財が酷くなりったのも、伯爵家が力を持ち始めたのも。」


体調が悪くなったことから何らかの原因があるとは思っていたし、探ってもいたが、まさかそのころから毒漬けだったとは。

(てっきり、殿下の魔力過多症が表に出始めた時だったから、そのせいだと思ったけれど…。っていうか。)

……気付いてないな、公爵共。

(本当に気付いていないのか……?いや、国王自体は優秀な人材だ。対して今の偽物は優秀とは程遠い。さすがに気づ…。気付けよ馬鹿どもが!!!)

ほぼ確定だこれ……。

(よし、いったん頭を切り替えよう。魔術具だ。あれ本気で解析したい。)

睨みつけるようにガストロ……の持つネックレスを分析する。

「あぁ?」

思わず漏れたドスの利いた声にビビる神様を横目に、にこやかな笑顔で話しかける。

「ねぇガストロ。私さっき聞いたよね、なんで生きてるのって。もう一度、ちゃんと正しくいってごらん?……この指輪に、解毒効果はないよ。さあ、どういうことか説明してもらいましょうか。」

吐けっつったら吐くんだよ馬鹿が。
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