異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

149.毒

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一つ下の窓枠につかまってクルリと一回転すれば、後は自由に動ける。

客室についているバルコニーの柵に足をかけて、そのまま上の階のバルコニーへ移動していく。

最上階に着いたら窓枠を足場に走って窓枠から窓枠へ移動し、やっと到着した最上階の西の部屋。

一応部屋の中と窓を調べてみても誰もいないようなので、窓の鍵をサクッとピッキング。

ひとまずで入った部屋は執務室らしく念のため、誰も入ってこれないように扉に細工をしておく。

(…ひとまず物理で塞いでおけばいいか。)

適当に棒とかんぬき代わりの木柱を出してドアと壁を繋ぎ、放置。

机には書類が少しあるのでそれに目を通し、印鑑が使われていないことを確認していく。

……どうやら従者をまとめている国王専属執事の部屋らしい。
几帳面な字と丁寧な仕事が分かる書類をもとの位置に戻し、机の引き出しに手を伸ばした。

スンッ

覚えのある匂いに手を止め、引き出しの取っ手に検査薬を一滴垂らす。
じわりじわりと色を変える取っ手。この匂いは確か、皮膚から侵食する麻痺毒だったかな。

一定量摂取しなければ大丈夫だから、毒を塗る場所としては適切だね。

(一心が作ってくれたゴム手をして、開けますかね。)

音がしないように引き出しを開け、中の書類を物色する。

(これは執事のシフト表……これは所属場所……これは……)

毒が塗ってあっただけあって執事に関する大事な書類で、なおかつ確認頻度が高いものが保管されている。

ただ印鑑は無いらしい。

(この執事長に恨みはないので、取っ手の毒はふき取っておきますかね。)

ドアの細工を取り外して、壁をもとに戻したら次の部屋へ。

こんなことを繰り返し、部屋をあらかた探っては次へと移動していった。

しかし、一向に印鑑は見つからない。

余談だが、この城には結構な種類の職業があるらしい。

紛らわしいのが従者で女性全般はメイド、男性全般が侍従。

その中で王族や貴族の生活を直接支えるのが側仕え(男性が執事、女性がメイド)、執務をするのが文官。護衛騎士はまた別の試験があるため別枠なんだとか。

これも完璧に覚えないといけないのか……はぁ、めんどくさーい!

そんなことを考えげんなりしつつ、毒の匂いがした食器棚を開ける。

今見ているのは厨房近くにある食器やカトラリーを保管している部屋らしく、食器棚がずらりと並んでいる。しかし、確認してもこの棚一つからしか毒の匂いがしない。

足音が聞こえてきたのでこの国の侍従の一人に変装して、シレッと佇む。

「……あら?アージャレンじゃない。今日は調子が悪いから休むんじゃなかったかしら?」

側仕えメイドの確か……メイリア。

「おいおいそれは三日前のことだろう?今日は平気さ。」

「そうだったかしら、あなたよく休むから。」

「単に覚えてないだけだろう?どうせ年なんだよっぃって!」

「貴方はもう少し気配りを覚えるべきよ、アージャレン?」

「悪かったって。……ったく、叩くことないだろ?」

「貴方はこうでもしないと直らないでしょう?ほら、口よりも体動かしなさい。要件は?」

「光の精霊王様がいろんな種類の茶器を見たいんだと。どっから取っていいんだ?」

「その棚以外は持って行って大丈夫よ。そこは爆弾様用だからね。」

「おう。」

話しながら確認したがその、と言われた棚に入っているものだけに微弱な毒が塗られている。

(爆弾、ね。)

もやもやとした感じを飲み込んで、地域が被らないように茶器を選び台車に乗せる。

そのまま別れ、一応殿下達のいる部屋がある方へ向かう。

(……王城勤めはまとめて一度締めあげた方が良いな。)

ニアから現状報告を聞き、台車ごと殿下達の方へ影で飛ばして一心と連絡を取る。

「一心、聞こえるね?やっぱり陛下のとこだよ印鑑。どーせ見つからないって。……あーやっぱり?見つからないよね、そりゃ。ひとまず印鑑の捜索はやめで、書類だけサクサク確認進めて。そっちは?…………うん?毒?」

異世界でも使えるようにしてくれたスマホはとっても便利。結論、サクッと使えるようにしちゃううちの子スゴイ。

仕えるモノは使っとけ精神でピッキング片手に報告をしていれば、一心が捜索した範囲でも毒が見つかったらしい。

やっぱりかと思いながら、報告を促した。
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