異世界情報収集生活

ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

140．一時の休息

それから騎士達を精神的に追い詰めて、ニッコリ笑顔で釘をスココココンと打ってから一度解放する。

宿に戻って、借りた部屋のベッドに体を預ける。

濃密な一日を過ごしたせいか、なんだか久しぶりな気がしてくるね。

「いっしん―。ご飯食べたいご飯！」

幼い子供のようにベッドの上でジッタンバッタンすれば、呆れたように一心が溜息を吐いて言った。

「かしこまりました。準備いたしますので席についてお待ち下さい。」

「はーい。」

言われた通り大きい机がある方に移動して、並べられるご飯を横目に書類に目を通……して…いく。

…………？！ちょっとまて！

「一心。」

「はい。」

「準備に時間かかるだろうから情報集めてこようと思ったんだけど？？」

クエッションが大量に浮かぶ私の目の前には湯気の立つ食事。

(ご飯食べたい！って言ってから5分も経ってないけど？！)

「本日マスターが疲れ切って帰宅されることは予測できましたので、前もって準備していただけですよ。ああ、保存はマスターの倉庫に入れていたので、食中毒の心配はありません。」

「そこじゃないんだよ一心君。」

「決してマスターを情報収集に行かせないようにしているわけではございません。」

「おい。」

はぁ、何をやっているのやら。

ひとまず遅くなった夕食をとり、部屋に戻ってこれからの予定を決めていく。

(ひとまず殿下たちはぎりぎりまで教育して、少しでも戦力として演じられるようにさせないと。はったりでも相手が勝手に騙されてくれれば、殿下の地位は上昇する。

騎士達には殺気でも教えるか。毒は盛らせないから後回しにして、威圧と殺気を中心に覚えさせればいいね。それで夜会は持たせる。基本は私が相手をして、最後ウィール様か殿下に締めてもらえばいいだろう。

……そういえば誘拐計画があったな。ま、捕まって相手の屋敷を半壊させて帰ってくればいいでしょ。捕まるの私だし、正直こいつに構っている時間はないしどうでもいや。かませロウ令嬢いぬは勝手に吠えて喉痛めて自滅して。)

紅茶に口を付けてからお茶うけのクッキーを口に放る。

(３日後にはもう夜会がある。それまでに見かけだけでも成長してもらおう。後必要なのは…………。)

(最善は国王が表立ってくれることだけれどあの国王だと……いや、時間が足りない。何処まで使えるかもわからない可能性に賭ける必要はない。)

つらつらと考えをまとめて、情報に目を通して少し目を閉じる。

浮かんでは消える考えを精査して、情報によって導かれる相手の行動によってより確実な案に絞っていく。

「マスター。」

「どうした？」

「もう夜明けが近くなってまいりましたから、一度お休みください。朝の8時には声を掛けますから。」

「もうそんな時間か……分かった。いったん寝てまた考えるよ。」

「ええ、お休みください。たとえ仮眠であろうとも、眠らないよりましですから。」

頭に浮かぶ考えの流れをゆっくりにしながら、ベッドに沈み込む。

(………)

お休みなさいませ、と声が聞こえた。



(まぁ寝ないけど。)
(さて一心も行ったし書類をだーして。情報の整理整理っと。)
パチッと目を開けて、いそいそと書類を出していく。

と同時に響くノック音

トントントンガチャ
「マスター？お休みくださいと申し上げたはずですが。」

「(ダラダラダラ)………。」

「(じっ)………。」

「……………。」

「……………。」

「フゴッ。」

「クッ………。」

「(ジト)………。」

「お休みなさいませ、マスター。」

…………仮にもマスターの鼻をつまむのはどうかと思うよ？一心。
(楽しそうで何よりだけどさ……まったく。)