158 / 205
ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
139.無能は必要ないので、いつでも切り捨てましょうね。
しおりを挟む
一心は無表情のまま淡々と、あるいは至極どうでもよさそうに報告を進めた。
開始2時間までは他者から見た自分達の立場さえ認識していなかったこと。
「殿下」が「国王」へと変化することで自分達の立場が変化することに気付けなかったこと。
(殿下の騎士ならば副団長におんぶ抱っこ状態で許されたかもしれないが、国王を守る騎士がそんな無能なのは許されない。そもそも派閥を把握していなければ国王を孤立させることにつながるため、そのうち王座から引きずり降ろされる未来が確定する。)
自分達の実力不足を認識しながらも努力を怠った事。
(認識してたらしい。これには千利もびっくり。)
懇切丁寧な二人の説明により自らの愚かさを理解し、知識を詰め込んでいる最中だったこと。
(誰かなんと言おうとあれは「説明」です。ぶん殴ってた?精霊妃そんなこと知らないなぁ。君も知らないよねぇ?)
「あれが………説明…?」
「そんなわけが…ある…か…!」
疲労困憊な二人はギロリとこちらを睨んだ。その目には怒りと殺意が見て取れる。
興味の欠片も惹かれないその目にため息を返して、ナイフを取り出そうとする一心達を手で制す。
「それが殺気?ハッ、ガキが。」
怒りや憎しみが含まれていない純粋な殺気を二人にあてる。湧き上がる感情は恐怖と拒絶。
逃げ道を残していないこの場では、本能のままに逃げ回ることも許されていない。
できる事はただ、生まれたての小鹿の様に震える事だけ。
「可哀想、なんて感情が浮かぶほど私は優しくないし愛らしい性格をしていないんですよ。残念でしたね?型にはまったような『精霊妃』ではなくて。」
2組の瞳の奥に見える救いを求め縋り付くような感情を消し去るために、三人同時にニタリと嗤う。
「お忘れですか?ここにいるのは確かに『内気で健気で優しく慈悲深い精霊妃』である人物ですが、同時に『何人もの人間を葬ってきた死神』でもあるんですよ?その都合のいい頭で、忘れてしまいましたか?だとしたらすぐにでも思い出すことをお勧めしますよ。……私の実験室の住人になりたいのでしたら、止めはしませんし歓迎しますが。」
とどめのようにニコリと微笑めばもう一つの事実に気付いたようだ。
(自分達に懇切丁寧な説明をしていた人物の主は、私。)
「主従は似るっていう話、ご存じありません?」
二人の目に絶望が浮かんだので、思わず吹き出してしまった。
そんな目で睨まないでよ一心。
だってあまりにも似ていたから、さ。
開始2時間までは他者から見た自分達の立場さえ認識していなかったこと。
「殿下」が「国王」へと変化することで自分達の立場が変化することに気付けなかったこと。
(殿下の騎士ならば副団長におんぶ抱っこ状態で許されたかもしれないが、国王を守る騎士がそんな無能なのは許されない。そもそも派閥を把握していなければ国王を孤立させることにつながるため、そのうち王座から引きずり降ろされる未来が確定する。)
自分達の実力不足を認識しながらも努力を怠った事。
(認識してたらしい。これには千利もびっくり。)
懇切丁寧な二人の説明により自らの愚かさを理解し、知識を詰め込んでいる最中だったこと。
(誰かなんと言おうとあれは「説明」です。ぶん殴ってた?精霊妃そんなこと知らないなぁ。君も知らないよねぇ?)
「あれが………説明…?」
「そんなわけが…ある…か…!」
疲労困憊な二人はギロリとこちらを睨んだ。その目には怒りと殺意が見て取れる。
興味の欠片も惹かれないその目にため息を返して、ナイフを取り出そうとする一心達を手で制す。
「それが殺気?ハッ、ガキが。」
怒りや憎しみが含まれていない純粋な殺気を二人にあてる。湧き上がる感情は恐怖と拒絶。
逃げ道を残していないこの場では、本能のままに逃げ回ることも許されていない。
できる事はただ、生まれたての小鹿の様に震える事だけ。
「可哀想、なんて感情が浮かぶほど私は優しくないし愛らしい性格をしていないんですよ。残念でしたね?型にはまったような『精霊妃』ではなくて。」
2組の瞳の奥に見える救いを求め縋り付くような感情を消し去るために、三人同時にニタリと嗤う。
「お忘れですか?ここにいるのは確かに『内気で健気で優しく慈悲深い精霊妃』である人物ですが、同時に『何人もの人間を葬ってきた死神』でもあるんですよ?その都合のいい頭で、忘れてしまいましたか?だとしたらすぐにでも思い出すことをお勧めしますよ。……私の実験室の住人になりたいのでしたら、止めはしませんし歓迎しますが。」
とどめのようにニコリと微笑めばもう一つの事実に気付いたようだ。
(自分達に懇切丁寧な説明をしていた人物の主は、私。)
「主従は似るっていう話、ご存じありません?」
二人の目に絶望が浮かんだので、思わず吹き出してしまった。
そんな目で睨まないでよ一心。
だってあまりにも似ていたから、さ。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
スコップ1つで異世界征服
葦元狐雪
ファンタジー
超健康生活を送っているニートの戸賀勇希の元へ、ある日突然赤い手紙が届く。
その中には、誰も知らないゲームが記録されている謎のUSBメモリ。
怪しいと思いながらも、戸賀勇希は夢中でそのゲームをクリアするが、何者かの手によってPCの中に引き込まれてしまい......
※グロテスクにチェックを入れるのを忘れていました。申し訳ありません。
※クズな主人公が試行錯誤しながら現状を打開していく成長もののストーリーです。
※ヒロインが死ぬ? 大丈夫、死にません。
※矛盾点などがないよう配慮しているつもりですが、もしありましたら申し訳ございません。すぐに修正いたします。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる