156 / 205
ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
137.許されざる罪 一心視点
しおりを挟む
そもそも、『それほどまでとは…』とか言っている場合じゃないのですが。
もはや関わりたくない。こんなバカにそんな時間を割きたくない。
しかし、ではマスターにこの馬鹿の相手をさせるのかと言われれば即座に否定する。
「あなた方の護衛対象はマスターが育て成長します。この国の基準で言えば、他の追随を許さないくらいには最低でも成長するでしょう。あなた方はどうしたいですか?」
「っ強く!殿下を守れるほど強くなりたい!」
「カリストロを守りたいんだ!」
その答えを聞いて、思わず拳に力をこめる。ギシギシと鳴りコードが千切れる音が聞こえ、切断されたことによるエラーが止まない。
ああでも、どうでもいい気がしますね。
「ふざけるな。」
人間には聞こえないほど小さな声で呟くがニアには聞こえていたようで、こちらを心配そうに見ている。
紅茶を飲むふりで口元は隠したが、聞こえてしまったようだ。
「大丈夫ですよ、ニア。」
通常時と同じ顔に変化させ、ひとまず馬鹿二人をぶん殴る。
「「っ?!…………。」」
(あくまで冷静に、あくまで執事として、マスターの従者として動かなくては。)
ゆっくりと大きく気管支を広げて、人間で言う深呼吸を疑似的に行う。
(多少は核が冷えたでしょうか。)
「一心兄上。」
「どうしました?ニア。」
「今の一心兄上を見ていると、核の辺りが痛むのです。だからやめてください。」
そういうニアの顔は知らない人が見れば睨みつけているような顔だが、私から見れば心配が頂点に達しているのがよくわかる。マスターならば強制シャットダウンをされてしまうだろう。
(情けないですね。妹に心配させてしまうとは。)
大丈夫だと声をかけてから、ピクリとも動かない馬鹿二人にもう一発。
咳込みながらこちらを睨む馬鹿に怯えない程度の殺気を返しながら、頭を掴み持ち上げる。
「強くなりたい、ですか。そうでしょうね、守りたい存在があるのであれば、強くなりたいと思うのは当然のこと。それをふまえた上で一つ質問してもよろしいですか?」
より一層力を込めて、できる限り無害に見える笑顔で問う。
「なぜ、今までそのための努力をしなかったのですか?」
反論しようと口を開きゆっくりと閉じていくその様子が表すのは、分かっていて行わなかったという事。
「出来ませんでしたか?主よりも優秀にはなれませんでしたか。主を育てようとは、思いませんでしたか。主と共に成長しようとは思いませんでしたか。私はそれだけが…無力感を味わったその後に無為に時間を過ごしていたあなた方が許せないのですよ。」
叩きつけるようにソファーに下ろして、理解不能ですと呟いた。
「一心兄上。」
「ニア?どうしました?」
「彼らと一心兄上の違いは、心の奥底にある感情の違いだと思われます。」
そう言うニアは、表情を通常時に戻して二人を見た。
「騎士レイピスト、もしくは騎士ヤドゥールが王太子カリストロを見ている時、まれに嘲りの感情が観測できました。」
眼球だけを動かして二人を見れば、音がしそうな勢いで顔を青くしている。
思い当たることがあったのだろう。
(ぁあ…………私が、馬鹿だった。)
(気絶して楽になどさせるものか。)
ブワリと湧き上がる怒りと殺気の混じりものをくらって気絶し、殺気にたたき起こされまた気絶しているらしい。
一滴の罪悪感も湧かない。ただ、嫌悪と怒りと殺意だけが湧き上がり続ける。
「主を見下すなど……言語道断。加減をした私が馬鹿だった。ああ、マスターがこの場に居られなくて本当によかった。馬鹿共の首を問答無用で狩られていても知った事ではないが、そんな馬鹿共の血でマスターの御手が汚れることは許しがたい。」
ソファーの後ろにワイヤーを広げ、馬鹿の頭を掴んで壁に叩きつける。
咳込む口を手で押さえる暇さえ与えずにはり付けにして、壁にもう一枚防御結界をはる。
「敬語使う価値すら無いと分かっていながらも、私は敬語を使い続けた。なぜか分かるか?隣室にてマスターがおられるからだ。マスターに向けてではなくとも、マスターに聞こえる場所で敬語を使わないなど考えられないことだからだ。護衛としている場で許可なくため口で話す貴様らとは違ってな。」
神々と対峙したときと同じように腕力のリミッターを解除し、全力で拳を握る。
ギシギシと鳴る拳に恐怖に顔が引きつっているのが見えるが、知った事か。
「ニア。」
「はい。」
「少々暴れる。マスターに見られないようメモリーを消してはくれないか。ニアが私に呼び掛けて、この馬鹿共から嘲りの感情が見られたと報告してくれたところからだ。」
「かしこまりました。」
これで心配事は無い。
一瞬希望を与えるためにニコリと笑ってから、マスターには見せられない声と表情で告げる。
「歯、食いしばれや。」
拳に力が一番伝わるよう計算された動きでレイピストを殴りつける。吐き出された馬鹿の血など浴びたくないので避けて、見ただけで気絶したヤドゥールを殴り起こす。
「ヒッ!」
体全体を揺らしながら首を振って、ブツブツと否定を繰り返すヤドゥールに同じように笑いかけ、
「歯、食いしばれや。」
同じように殴りつけた。
それからは圧倒的な恐怖を植え付けるための「作業」をし続けた。
マスターの前に出れるまで徹底的に行わなくてはなりませんね。
ああ、めんどくさい。
もはや関わりたくない。こんなバカにそんな時間を割きたくない。
しかし、ではマスターにこの馬鹿の相手をさせるのかと言われれば即座に否定する。
「あなた方の護衛対象はマスターが育て成長します。この国の基準で言えば、他の追随を許さないくらいには最低でも成長するでしょう。あなた方はどうしたいですか?」
「っ強く!殿下を守れるほど強くなりたい!」
「カリストロを守りたいんだ!」
その答えを聞いて、思わず拳に力をこめる。ギシギシと鳴りコードが千切れる音が聞こえ、切断されたことによるエラーが止まない。
ああでも、どうでもいい気がしますね。
「ふざけるな。」
人間には聞こえないほど小さな声で呟くがニアには聞こえていたようで、こちらを心配そうに見ている。
紅茶を飲むふりで口元は隠したが、聞こえてしまったようだ。
「大丈夫ですよ、ニア。」
通常時と同じ顔に変化させ、ひとまず馬鹿二人をぶん殴る。
「「っ?!…………。」」
(あくまで冷静に、あくまで執事として、マスターの従者として動かなくては。)
ゆっくりと大きく気管支を広げて、人間で言う深呼吸を疑似的に行う。
(多少は核が冷えたでしょうか。)
「一心兄上。」
「どうしました?ニア。」
「今の一心兄上を見ていると、核の辺りが痛むのです。だからやめてください。」
そういうニアの顔は知らない人が見れば睨みつけているような顔だが、私から見れば心配が頂点に達しているのがよくわかる。マスターならば強制シャットダウンをされてしまうだろう。
(情けないですね。妹に心配させてしまうとは。)
大丈夫だと声をかけてから、ピクリとも動かない馬鹿二人にもう一発。
咳込みながらこちらを睨む馬鹿に怯えない程度の殺気を返しながら、頭を掴み持ち上げる。
「強くなりたい、ですか。そうでしょうね、守りたい存在があるのであれば、強くなりたいと思うのは当然のこと。それをふまえた上で一つ質問してもよろしいですか?」
より一層力を込めて、できる限り無害に見える笑顔で問う。
「なぜ、今までそのための努力をしなかったのですか?」
反論しようと口を開きゆっくりと閉じていくその様子が表すのは、分かっていて行わなかったという事。
「出来ませんでしたか?主よりも優秀にはなれませんでしたか。主を育てようとは、思いませんでしたか。主と共に成長しようとは思いませんでしたか。私はそれだけが…無力感を味わったその後に無為に時間を過ごしていたあなた方が許せないのですよ。」
叩きつけるようにソファーに下ろして、理解不能ですと呟いた。
「一心兄上。」
「ニア?どうしました?」
「彼らと一心兄上の違いは、心の奥底にある感情の違いだと思われます。」
そう言うニアは、表情を通常時に戻して二人を見た。
「騎士レイピスト、もしくは騎士ヤドゥールが王太子カリストロを見ている時、まれに嘲りの感情が観測できました。」
眼球だけを動かして二人を見れば、音がしそうな勢いで顔を青くしている。
思い当たることがあったのだろう。
(ぁあ…………私が、馬鹿だった。)
(気絶して楽になどさせるものか。)
ブワリと湧き上がる怒りと殺気の混じりものをくらって気絶し、殺気にたたき起こされまた気絶しているらしい。
一滴の罪悪感も湧かない。ただ、嫌悪と怒りと殺意だけが湧き上がり続ける。
「主を見下すなど……言語道断。加減をした私が馬鹿だった。ああ、マスターがこの場に居られなくて本当によかった。馬鹿共の首を問答無用で狩られていても知った事ではないが、そんな馬鹿共の血でマスターの御手が汚れることは許しがたい。」
ソファーの後ろにワイヤーを広げ、馬鹿の頭を掴んで壁に叩きつける。
咳込む口を手で押さえる暇さえ与えずにはり付けにして、壁にもう一枚防御結界をはる。
「敬語使う価値すら無いと分かっていながらも、私は敬語を使い続けた。なぜか分かるか?隣室にてマスターがおられるからだ。マスターに向けてではなくとも、マスターに聞こえる場所で敬語を使わないなど考えられないことだからだ。護衛としている場で許可なくため口で話す貴様らとは違ってな。」
神々と対峙したときと同じように腕力のリミッターを解除し、全力で拳を握る。
ギシギシと鳴る拳に恐怖に顔が引きつっているのが見えるが、知った事か。
「ニア。」
「はい。」
「少々暴れる。マスターに見られないようメモリーを消してはくれないか。ニアが私に呼び掛けて、この馬鹿共から嘲りの感情が見られたと報告してくれたところからだ。」
「かしこまりました。」
これで心配事は無い。
一瞬希望を与えるためにニコリと笑ってから、マスターには見せられない声と表情で告げる。
「歯、食いしばれや。」
拳に力が一番伝わるよう計算された動きでレイピストを殴りつける。吐き出された馬鹿の血など浴びたくないので避けて、見ただけで気絶したヤドゥールを殴り起こす。
「ヒッ!」
体全体を揺らしながら首を振って、ブツブツと否定を繰り返すヤドゥールに同じように笑いかけ、
「歯、食いしばれや。」
同じように殴りつけた。
それからは圧倒的な恐怖を植え付けるための「作業」をし続けた。
マスターの前に出れるまで徹底的に行わなくてはなりませんね。
ああ、めんどくさい。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。
ファンタスティック小説家
ファンタジー
科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。
実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。
無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。
辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

男女比1/100の世界で《悪男》は大海を知る
イコ
ファンタジー
男女貞操逆転世界を舞台にして。
《悪男》としてのレッテルを貼られたマクシム・ブラックウッド。
彼は己が運命を嘆きながら、処刑されてしまう。
だが、彼が次に目覚めた時。
そこは十三歳の自分だった。
処刑されたことで、自分の行いを悔い改めて、人生をやり直す。
これは、本物の《悪男》として生きる決意をして女性が多い世界で生きる男の話である。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる