異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

134.歪な歯車に囲まれて

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「あぁ、もちろん選択を与えるだけですので、このまま国と共に亡ぶ道を選んでも構いませんよ。」

そう言った後、一心に顔を向けて二人に武器を返す。

「さて、どうします?貴族としての経験は全く無いに等しい状況です。知識も無い、信頼できる教師もいない、頼れる大人もいない。そんな状況で頼れるのが異世界人と言うだけでおかしな状況ですが、異世界から来た精霊妃からの教育を、素直に受け入れますか?」

直ぐには返されないその答えを聞く前に、扇を開き口の動きだけで一心に命じる。

(「感情を読み取れ。」)

多少の差異はあれどその表情や言動から一心は感情を読み取れる。
それを活用して、不満が見えるようなら教える気は無い。

もともと私には、何か教えた経験は無い。だからこそ師匠がしていたような教え方になる。

それについてくる気が無いのであれば、異世界人に対して一心が分かるほどの不満を表すのなら

(教育する価値もない。)

元の世界仕込みの礼儀と見て覚えたしぐさで優雅に紅茶を飲む。
この世界に来て一年もたっていないニアも、私も、一心だってこれぐらいしている。

しばらくして、2杯目の紅茶を頼むと一心が微かに音を立てて茶器を置いた。
音を立てる合図は決意。

「…精霊妃様。私の結論は以前と変わりありません。精霊妃様の元で学び王家の一員として恥ずかしくない様生きるつもりです。」

「それは、国王として?王太子として?」

「むろん、国王として。」

「ならば私はより完璧を求めます。それでもいいと?」

「はい。」

「では教師として、今この時より殿下を公の場以外で敬語を使いません。よろしいですね。」

「もちろんです。」

「では殿下。今した会話の矛盾点を次に聞くまでに考えるように。」

「わ…かりました。」

ひとまず殿下はどうにかなったはず。
あきらめるそぶりを見せるのならば切り捨て溶岩にでも沈めるだけだ。

後は、殿下の友人でもある騎士二人。

「貴方たちはどうしますか?」

「……私は、カリストロを助ける魔術具を作りたい気持ちで魔術師を目指しこうして成長しました。」

そう答えたのはヤドゥール。それ自体は知っているし、殿下を主に置き換えればその気持ちはよくわかる。でも私はナイフを投げて声を一段低くする。私が聞きたいのはそれじゃない。

「質問の答えを言いなさい、ヤドゥール=ガディア。大陸ごと消されたい?」

「!失礼しました。」

そう言ってから少し考え、答えたのは護衛騎士のままでいたいという事。

「公爵家から輩出されたカリストロ王太子の護衛騎士という事か?」

「はい。」

「護衛騎士と青の騎士団団長としての業務は両立できると?」

「はい。」

「はっ。」

迷いなくヤドゥールは答えた。それを鼻で笑い一つ一つ確認をする。

「お前が今現在青の騎士団長としてやっていることはなんだ。」

「執務です。」

「内容は。」

「騎士団内の資金の流れについての書類と、騎士団内のもめごとについてです。」

「では、備品については?レイピストも赤の騎士団長だろう。答えろ。」

少し驚いた顔をして、訝しみながらもレイピストは答え始めた。

「私の場合は資金と団の訓練内容について話します。他は思い当たりません…。」

「青の騎士団内の備品は、副団長が管理しています。」

「そうか。ではまず、それだけで愚かだという事を理解しろ。無能が。」

「「なっ!」」

まだ驚くらしい。

(はぁ、先が思いやられる。)

拝啓、師匠 前略 めんどくさい事が多いので放り出して寝たいです。敬具
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