異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

121.ニアは癒し要員ですが?

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無言のまま見つめ合う事10秒ほど。
ため息をついて人の肩に両手をのせ、顔を覗き込んだ神様。

「?なんです?」

「君、頼むからもう少し淑女らしく行動してくれないかい?年頃の女性だろう?常識的な年頃の女性はね、殺戮とか暗殺とか拷問とか言わないんだよ?」

「そんな常識的な世界で生きていません。断固拒否します。」

「なら、死神として神らしく行動をしてくれない?」

「神らしく………?」

神らしく行動?はっ!それはつまり!

馬車の扉に手をかけて、満面の笑みで神様を見る。

「じゃあ神様、死神らしくこの国荒野に戻してきます!」

「待ちなさい!さっきの僕の話は聞いていたのかい?!」

「聞いてました!」

「じゃあなんでそういう結論を出すんだい?!おかしいだろう?!」

「え?」

「え?!」

お互いに驚きのまま固まり、私は目に涙を浮かべてから呟いた。

「しにがみらしくっていったから………しにがみらしくさつりくを………。」

「そんなアイスを落とした幼児の顔で言わなくていいからさ。殺戮ダメ絶対。ほら繰り返して!」

「サツリクダメゼッタイ。」

「守る気は?」

「ありません!」

頭を力強く叩かれた後に、頬が犠牲になりました。

「………………………。」

「ねえ、私も触っていいかい?」

「ウィールも触るといいよ。これ、結構クセになる。」

「わぁ本当だ。ふふっ。小鳥美のほっぺた柔らかいね。」

じっと息子を見つめるも、優秀な執事も兼務しているはずなのにまったく止める気配はなかった。

(……………一心?止めてくれてもいいんだよ?)

気付いてるよね?あ、こっち見た。気付いたよね!ねえちょっと一心さん?!

「おや、地球にはいない色の鳥ですね。アクス殿、あの鳥は?」

「ああ、あれは………」

一心さーん?!ちょっと?!主よりも鳥ですか君!

「うらひりもにょー。」

「あー。これは本当に癖になるね。あ、小鳥美、今更だけれど痛くないかい?」

「大丈夫だよウィール。元の世界では殺し屋だったのだからこれくらい平気さ。」

「それもそうだね。」

そんな久しぶりにのんびりとした空気の中、やはりと言うべきか簡単には帰らせてもらえないのが王城という場所。

私と一心が静かに目を合わせて確認し合った後、少し遅れて精霊王達がピリピリとしだす。さすがの神様も私の頬から手を離した。そして一言ポツリと呟く。

「馬鹿なのかな?」

それに連動するように、ウィール様も一心も口を開いた。

「馬鹿なんだろうね。」

「国ごと馬鹿ですから。」

「馬鹿いっぱいの国滅ぼしたーい。」

ペシリと言う音で終了した軽口のたたき合いに不満を示せば、怪訝な目で三度国を滅ぼさないよう釘をさされた。

「ウィン?どれくらいいるか分かる?」

「20人くらいだよー?でもね姫、変!」

「変?」

「どんどん減ってるよ?」

それを聞いて一心をじとっと見れば同時にスッと逸らされた目。

「一心くーん。」

「………何でしょう。」

「吐け。」

自覚のある黒い笑みで迫れば、珍しく責任逃れをするように目を逸らしたまま一言呟いた。

「ニアです。」

それを聞いて即座に馬車の扉を開け、馬車の外で護衛をしていたウィンに追い風を頼む。

「一心!」

一言叫んで本来は防御に使う魔法の盾を足場に、一心によって強化された脚力で馬車を追い抜いていく。
人外の速度で少し走れば、二日と少しの間見ていなかった娘が見えた。

「ニア!」

「マスター?」

直ぐに上空を見て、一心とは比べ物にならないが確かに驚きの表情を返してくれた。

「マ、マスター!?」

突撃と言っても差し支えない速度で抱き着くと、おそるおそる抱きしめ返してくれる。

「ご迷惑をおかけしました。」

「違う。」

「?理解できません、マスター。」

不可解な顔でエラーを返すニアの頭を撫で、ニアの心に染み渡ることを願って言う。

「迷惑じゃない、迷惑なはずがない。心配したんだよ、ニア。」

無事に完治してよかった。本心からそういえば、まだ不思議そうな顔をしているものの、

「ご心配をおかけしました。もう、通常業務に戻れます。」

と言ってくれた。

それでもまだ少し心配で、部品の故障がないかを自分で調べるためにヒシッと抱き着いて、繊細な頬や魔力供給の部品がある頭を撫でた。
こっそり顔についた血を手で拭うのも忘れない。

「マスター、くすぐったいです。」

「ごめんねぇ。あーニアが可愛い。癒されるぅ。」

まぁ全部ニアに癒されるためっていう理由が大きいけど。

「……………何をしているのかな?この殺伐とした状況で。」

「チッ」

馬車がもう追いついてしまったようで、神様に呆れられた。もう少し娘の可愛さに癒されていたっていいじゃないか。

神様のけちー。

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