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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
120.明日の予定は多分崩れる
しおりを挟む美人の特権としてそれだけで様になる事を本人は知っているのだろうか。
知っていて利用しているのであればぜひ情報収集を手伝って欲しいものだが。
まぁ、それはさておき。
「正直、ダンスの練習役の集める係くらいにしか思ってません。でも、予想通りであれば明日からは私に構っている時間は無いと思いますよ?」
「ふぅん?どういう事かな?」
不思議そうに小首をかしげたウィール様。
……私は絆されませんよ?一応ね、一応ご報告しておきます。
「一心が各国に王妃の件をばらまいたのは知ってますか?」
「ああ、書類を置いてきたんだろう?」
「ええ、それがだいたい3日前の夜中、日付が変わる頃です。そして、各国の王が見たのはその次の日の朝でしょう。そして、その日に私は本を売っています。さて神様。これはどう影響するでしょうか。」
唐突に振られた神様は少し驚いた顔をするものの、ほんの少し目を伏せて考え始めた。
「…………美形ってずるい。」
「マスターにはない物ですからね。」
「うるさいよ一心。私だってね、中の上くらいはあるよ。」
「マスターは中の上には入れませんよ。残念でしたね、予想は外れです。」
「え゛っ………そんなブサイクの部類に入る?」
「はぁ………。」
愚痴ったらディスられた。しくしくしくしく…………お母さん悲しい。
「そりゃぁさ?神様とか精霊王達とかウィール様とか各国の高位貴族の皆さんみたいな麗しい顔は持ってませんよ?でもさ?ブサイクは……悲しいよね。」
「……マスターは上の中でしょうに。」
「?なんか言った?」
「いいえなにも。」
「そっか。」
そんな軽口をたたき合っている間に神様は、結論を出せたらしい。
「千利。」
「なんです?」
「一心君……と言うか、一心君を育てた君って結構えげつないことする?」
「さぁ?基準が師匠なので分かりません。」
「あぁ……僕の常識が崩れていく音がします最高神様。せめてもの抵抗として最高神様が毒されることのない様に努力を続けますので、どうかお許しください…。」
少しの間目を閉じて、諦めの色をのせた金の瞳をこちらに向けた神様。
「君がわざわざ本を売りに行った日が、書類を確認した日と同じという事は確認に本を使わせたのかい?書類だけでは実際に動くかは分からない。いや、ほとんどの場合動かないだろう。だからこそ本で真実味を出して、より確実にしたかったマルクトリア国は君本人が行った。……こういう事かい?」
「うーん?まぁ、だいたいはあってますかね。一心がばら撒きに走るのは分かってましたから、それをより確実にするために本を売りました。ついでに金策。お金大事。」
ここまではいいかと確認を取れば、軽くうなずかれたので先を進める。
「その後に確実に各国は動くと思ったんですよ。だって、王妃の鏡が色事に夢中だったなんて信じられないでしょうからね。だから、ライミリに潜ませている間者から情報を得ると思いました。間者から情報を伝えられるのにかかるのがだいたい2~3日です。そう考えれば、王城が騒ぎ出すのは明日か明後日でしょう?各国の国王だって馬鹿じゃありません。『王妃が罪を犯していたと聞いて。』なんて理由で国に入る気は無いでしょうから、ちょうど理由にしやすい私がいることですし『精霊妃に挨拶をしたいから、そっちに行きます。』って言いだすかと思いまして。」
そう言えば、ウィール様が少し怒りだした。
「精霊妃を含めて私達精霊は本来、政治には不干渉が基本だというのに……。国王が挨拶に来るなんてね。常識知らずもいいところじゃないのかい?その行動があらわすことなんて自国を優先して豊かにしてくれ、ぐらいだろうに。」
「そのルールを知っている人の方が少ないですよ。それに、各国共通の思惑として『精霊妃には自国にいて欲しい』っていうのはありますから、仕方ないかと。」
「呆れたものだね。ねえ、君の権限で人間の総取り替えとかできないのかい?」
「無理だよ。最高神様に一応報告してみるけれど、期待はしないでくれ。」
「報告するんだ。」
「こちらが予想していた以上に精霊に関する常識が継承されていないからね。君だって、精霊妃として少しはちやほやされたいだろう?」
「え、いやです。」
フルフルと横に首を振ると、なぜか不可解な目をされた。
誠に遺憾。解せぬ。
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