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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
117.生まれ持ったものは良い
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(彼らにとっては)地獄の3時間が過ぎ、夕食を全力で断って帰路につく。
「毒が心配なので。」
「一心君の料理を食べてみたいので。」
「小鳥美の料理がおいしいので。」
「マスターの護衛には戦力が頼りないので。」
といった三人プラス一心の言葉でキッパリ断った後、精霊王達に囲まれ馬車に揺られる。
というか、あれは目上の人にする行為ではない。
夕食いりませんって言った後に「出口はこちらです。」と言って夕食の用意がされている部屋へ案内するとか。
スルーして進もうととすれば「どうか!我らに謝罪の機会をお与えください!」と言って通してくれないとか。
(あり得ない。)
時間がある事をいいことに、そんなどこまでも自分勝手な馬鹿共の評価を聞いてみる。
「さて神様、どう思います?」
「……彼らの基礎能力についてかい?」
「それもありますが、一貴族としても聞きたいですねぇ。」
そう言えば苦虫を噛み潰したような顔をした後、溜息を吐いてから口を開いた。
「あくまでも僕の基準で言うけれど、彼らは貴族という生き物に向いていない気がするよ。」
「ふむふむ。……そういえば神様人間の世界に詳しいんですか?」
「それを知らずに聞いたのか……。そこそこだよ、そこそこ。それよりも彼ら、基本的に君を疑っていなかったし情報を扱う手腕も初心者のそれだ。平民として生きるならともかく、公爵と王太子という国を支える忠臣と未来の国王がこれでは役立たずと言っても過言ではないだろうね。」
「ちなみに点数で言えば?」
「5点。内訳を言うのであれば、精霊姫に対する敬語で2点、君が指示したらすぐに動いたから3点。」
フフッと聞こえた声を向けば、少し黒い笑顔を見せてウィール様が言い放った。
「意外と点がもらえたね、君にしては採点が甘いんじゃないかい?私達精霊王に対しては最初の騎士以外挨拶は無かったのに。」
……そういえば、完全に空気と化していたような。
各々が思い出しているであろう中、黒い笑みを深めてそれにと続きを呟いた。
「私が精霊妃である小鳥美を前に立てて一歩下がったところから参加していたとはいえ、あの場で一番位が高い私への確認も挨拶も無かったんだよ?これ、私は挨拶をする価値すらないととれるよね。」
その通りである。ウィール様が一番偉いので、そう受け止めるのが当然だろう。
「ねえ小鳥美、あの国の加護を取り消すのはいつがいいかな?」
……とってもお怒りの様です。こっわーい。
「はぁ、せめて最後にしてくださいね。」
「ちょっと千利!?ウィールも、許可なんて出さないからね。君が滅ぼす予定の国は、一つで十分だ。ウィールも、神として許可しないからそのつもりで。」
ギョッとして制止した神様。ちぇ。
「別に国が一つ多く滅んだところで、土地をめぐっての戦争が起こるくらいの問題しかないんじゃありません。」
「それが問題だと気付こうか千利?君は国を簡単に滅ぼそうとしないの。」
ペシリと叩かれ、ぶすくれる。ブーブー。
「小鳥美、君の評価はどんなだい?」
「そうですねぇ……。泥まみれのダイヤの原石、でしょうか。生まれ持ったいいものを持っているのに泥に浸され雨に打たれ、磨こうとする者すらいない。」
実際に、カリストロ殿下はいいものを持って生まれている。
膨大な魔力、殿下という地位、本来ならば十分な教育を受けられる環境、信頼できる側近、信用できる護衛、仲のいい友人、本人の真面目で頭を下げられる性格。
「こうやって並べると環境自体はいいんだね。」
ウィール様が呟く。環境自体はよかった。魔力が膨大で爆弾扱いされていなければ、今よりはいい人間だっただろう。
ただ……。
「でも、レベルが低すぎる。」
最大の問題を神様は指摘した。そう、レベルが低すぎる。
他国の公爵とライミリの公爵を比べたら、圧倒的に他国の公爵の方が優秀で有能だ。
殿下同士しかり、国王同士しかり。
「そうなんですよねぇ。教育のレベルが他国と違いすぎるんですよ。はっきり言って馬鹿。貿易の取引とかちゃんと成り立ってるんですかね。」
「買いたたかれてましたよ、マスター。」
「あー。やっぱり?ちなみにどんな感じだった?」
「相手国が値段を言って、記録して、終了でした。」
おおうまさかの言い値。相場の何倍で売られてるんだか。
本来は双方が納得できる値段を決めるために1~2時間くらいは最低でも会議するのに。
相手国はもうけてるだろうなーなんて現実逃避をした。
同時に、(絶対帳簿見る……!)と決心した瞬間でもあった。
なお、馬鹿すぎて帳簿を付けていないかもしれないと思ったのは余談である。
「毒が心配なので。」
「一心君の料理を食べてみたいので。」
「小鳥美の料理がおいしいので。」
「マスターの護衛には戦力が頼りないので。」
といった三人プラス一心の言葉でキッパリ断った後、精霊王達に囲まれ馬車に揺られる。
というか、あれは目上の人にする行為ではない。
夕食いりませんって言った後に「出口はこちらです。」と言って夕食の用意がされている部屋へ案内するとか。
スルーして進もうととすれば「どうか!我らに謝罪の機会をお与えください!」と言って通してくれないとか。
(あり得ない。)
時間がある事をいいことに、そんなどこまでも自分勝手な馬鹿共の評価を聞いてみる。
「さて神様、どう思います?」
「……彼らの基礎能力についてかい?」
「それもありますが、一貴族としても聞きたいですねぇ。」
そう言えば苦虫を噛み潰したような顔をした後、溜息を吐いてから口を開いた。
「あくまでも僕の基準で言うけれど、彼らは貴族という生き物に向いていない気がするよ。」
「ふむふむ。……そういえば神様人間の世界に詳しいんですか?」
「それを知らずに聞いたのか……。そこそこだよ、そこそこ。それよりも彼ら、基本的に君を疑っていなかったし情報を扱う手腕も初心者のそれだ。平民として生きるならともかく、公爵と王太子という国を支える忠臣と未来の国王がこれでは役立たずと言っても過言ではないだろうね。」
「ちなみに点数で言えば?」
「5点。内訳を言うのであれば、精霊姫に対する敬語で2点、君が指示したらすぐに動いたから3点。」
フフッと聞こえた声を向けば、少し黒い笑顔を見せてウィール様が言い放った。
「意外と点がもらえたね、君にしては採点が甘いんじゃないかい?私達精霊王に対しては最初の騎士以外挨拶は無かったのに。」
……そういえば、完全に空気と化していたような。
各々が思い出しているであろう中、黒い笑みを深めてそれにと続きを呟いた。
「私が精霊妃である小鳥美を前に立てて一歩下がったところから参加していたとはいえ、あの場で一番位が高い私への確認も挨拶も無かったんだよ?これ、私は挨拶をする価値すらないととれるよね。」
その通りである。ウィール様が一番偉いので、そう受け止めるのが当然だろう。
「ねえ小鳥美、あの国の加護を取り消すのはいつがいいかな?」
……とってもお怒りの様です。こっわーい。
「はぁ、せめて最後にしてくださいね。」
「ちょっと千利!?ウィールも、許可なんて出さないからね。君が滅ぼす予定の国は、一つで十分だ。ウィールも、神として許可しないからそのつもりで。」
ギョッとして制止した神様。ちぇ。
「別に国が一つ多く滅んだところで、土地をめぐっての戦争が起こるくらいの問題しかないんじゃありません。」
「それが問題だと気付こうか千利?君は国を簡単に滅ぼそうとしないの。」
ペシリと叩かれ、ぶすくれる。ブーブー。
「小鳥美、君の評価はどんなだい?」
「そうですねぇ……。泥まみれのダイヤの原石、でしょうか。生まれ持ったいいものを持っているのに泥に浸され雨に打たれ、磨こうとする者すらいない。」
実際に、カリストロ殿下はいいものを持って生まれている。
膨大な魔力、殿下という地位、本来ならば十分な教育を受けられる環境、信頼できる側近、信用できる護衛、仲のいい友人、本人の真面目で頭を下げられる性格。
「こうやって並べると環境自体はいいんだね。」
ウィール様が呟く。環境自体はよかった。魔力が膨大で爆弾扱いされていなければ、今よりはいい人間だっただろう。
ただ……。
「でも、レベルが低すぎる。」
最大の問題を神様は指摘した。そう、レベルが低すぎる。
他国の公爵とライミリの公爵を比べたら、圧倒的に他国の公爵の方が優秀で有能だ。
殿下同士しかり、国王同士しかり。
「そうなんですよねぇ。教育のレベルが他国と違いすぎるんですよ。はっきり言って馬鹿。貿易の取引とかちゃんと成り立ってるんですかね。」
「買いたたかれてましたよ、マスター。」
「あー。やっぱり?ちなみにどんな感じだった?」
「相手国が値段を言って、記録して、終了でした。」
おおうまさかの言い値。相場の何倍で売られてるんだか。
本来は双方が納得できる値段を決めるために1~2時間くらいは最低でも会議するのに。
相手国はもうけてるだろうなーなんて現実逃避をした。
同時に、(絶対帳簿見る……!)と決心した瞬間でもあった。
なお、馬鹿すぎて帳簿を付けていないかもしれないと思ったのは余談である。
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