異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

112.拝啓

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「話、戻しても?」

そう呟いた声にようやく本題を思い出したらしい者たちは口を開いて

「そういえば、君の師匠から伝言を預かってるよ。」

自然に見えるようにゆっくりと口を閉ざした。

「ウィール様、それは最優先で伝えてください。師匠はなんと?」

相変わらずのんびりした様子のウィール様に半ばたたみ掛けるように聞く。
少しだけ申し訳ないが、師匠の伝言は本当に最優先で聞かないと後で文字通りぶっ飛ばされる。

「えっとねぇ………確かこの辺にメモが……。」

「………。」

無言で差し出されたメモを神様から受け取り、それを読み上げた。

「『隠された財宝の場所を教えてほしくば、小鳥美と千利と一心、ニアに全面的に協力しろ。しないのであれば、財宝はすべて小鳥美と千利と一心、ニアに均等に引き渡す。

協力に応じたと小鳥美と千利と一心、ニアが判断した場合、財宝の1割を小鳥美と千利と一心、ニアが一番信頼できると判断したものに一割を均等に分割してそれぞれが渡す。なお、財宝一割は価値の値段で決める。
また、価値が偽りだと分かった場合は財宝の5割を小鳥美と千利と一心、ニアに王宮が均等に支払い、その上で財宝全てを均等に小鳥美と千利と一心、ニアに渡すとする。

なお、換金を千利と一心、ニアの三人のうち望んだ者がいた場合、王宮が換金を行うものとする。また、千利と一心、ニアは場所を協力なしに話してはならない。話したら殺す。……以上だ。』……これで終わり。」

その伝言と言う名をした契約書の写しのような内容を聞いて、一心と目を合わせる。

「ねえ一心?なんでこの国に財宝がある事を師匠が、知っていたか分かる?」

「分かりません。」

即座に返って来た声に諦めを感じ、息子に愚痴を垂れ流す。

「ねえ一心?この国に隠された財宝が実在することはひとまず放り出しておくとしても、なんで師匠が隠し場所を知っているのかな?」

「分かりません。」

「ねえ一心?」

辺りを見渡せば、先ほどと同じような驚愕の顔で固まる公爵二人。

(顔がそのまま固まっちゃいそうだなあ。)

「なんでこれ真実なのかなぁ。」

どう考えたところで公爵のこの反応は、財宝がある事と財宝とプラスαアルファが隠されていることは確定しているのだろう。

………師匠はどうやってこの世界の情報を集めたのだろう。

思わず目の前の状態から目を逸らして、現実逃避を始めてしまう。

(師匠と同じ化け物扱いはやだなぁ。化け物の中にも格があるってことを知ってほしい今日この頃、元の世界の皆様はいかがお過ごしでしょうか。)

「マスター、諦めましょう。どう行動を起こしたところで上官殿の思考回路を読めるわけがないのですから。私達二人が全力で取り掛かったとして、魔王の考えを予測することは不可能です。」

「………一心が計算不可能な思考と計測不可能な実力を持った師匠って本当に人間?」

「…………………。」

「はぁ。師匠だからで納得できる自分がいるよ、一心。」

「上官殿ですから。私ももうそれ以外申し上げられません。」

そんなことを言い合って互いに諦めを感じている中、公爵二人も口元を隠して密談を始めていた。

内容は後で一心に聞くとして、どうやら王族である殿下や騎士団長二人が分からない様子なので数十年前の事なのだろう。

(しかし、本当にどうやって師匠はこの世界の情報を……?いや、そんなことを考えても無駄だろう。師匠が本気で隠したらどうにもならない。)

意識して瞬きをした後、同じようにこちらを向いた宰相に向き直る。

「精霊妃様、先ほどの伝言の件で報告する必要が出てきました。」

何かを決断したその眼は息子にも引き継がれた赤い目がキラリと輝いていて、自然と背筋を伸ばした。

「何ですか?」

鋭い視線から感じる緊張感はおくびにも出さずに声を返す。

「先ほどの伝言に出てきた『財宝』ですが、およそ三十年前に王宮から盗まれた物かと推測いたします。」

……………拝啓師匠。

一発殴らせろぉおお!今!すぐに!!
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