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100話達成記念 魔王と微笑む子供 ②
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続きです。同じく残酷注意
「おい、聞こえてんのか。」
力なく垂れた頭をこちらに向けさせ、顔を合わせる。
「てめぇ、さっきモニターが馬鹿みてぇにある部屋にいたな?」
おかしなことをしていたガキ。この中ではまだ肥えているだろうが、ひょろひょろと言ってもおかしくないガキ。
そんなガキが壁に張り付いていた。
灯りの一つもない光の刺さないこの部屋で、血を吸った鉄に四肢を繋がれ、全身から血を流し続けていた。
………多分だが、何の罪もなく。
「てめぇはいったい、何を作っていたんだ。」
その声がガキに届いていたかはわからねぇが、言ったとたんに落ちてきたこれがその答えだろう。
「……?」
醜い鍵のような、ただの歪な棒のようなものを落として気絶してしまった。
「何だこりゃ。」
好奇心に動かされるままカチャカチャと少しいじった途端、ピンッっと一本の棒が飛び出した。
「………まさか、な。」
手前にあった鉄格子の施錠部分に近づき、飛び出した部分を差し込む。
「………まじか。」
カシャンと音を立てて、扉が開く。チラリと見ると中にいるガキどもは何も反応を示さなかった。
(出られることに喜びがないのか、絶望しきっているのか、もとより売られたか。)
全ての鉄格子の施錠部分に同じように鍵を差し込み、同じように回して同じように開けていく。
(これ、どうなってんだ?)
ただのガキが作ったとは到底えない鍵。
当たり前かもしれないが、この部屋にある鉄格子はそれぞれ別の鍵で管理されている。それが、手元にあるたった一つの鍵で開いた。
(……応用すれば、役に立つことは確実だな。)
作り方を教えてもらう為にガキの方へ戻る。
「おい、聞こえるか?」
「………」
顎を掴んで上に向ければ、弱々しく開かれた目と目が合う。
ぼろ布と称しても問題ない体と洋服。血まみれで、胴体や手足はもちろん頭からも血が滴っている。
そんな状態の奴が今、目の前で
「………………?」
困ったように微笑んだ。
その瞬間、自分の中でこいつを連れて帰ることが確定した。
「お前、名は?」
体に走った激震を押し隠して絞りだした声に反応は無く、困ったように微笑まれるだけ。
「お前を連れて帰る。お前は今日から俺の弟子だ。」
「……………?」
「今は理解できねぇだろう。俺だってわかんねぇよ、でも、お前は連れて帰る。」
手足を壁に縛り付けている鉄を強引に外して、困ったまま微笑み続けるガキを背中に乗せる。
(名前を付けなきゃいけねぇな。それにこせきっつうやつを作んなきゃいけねぇだろうし……俺に作れんのか?………まぁ、どうにかなるだろ。)
大勢のガキがいる部屋に戻れば、扉は全て開けたが誰一人として出てはこなかった。
「おい。」
「………?」
「こいつらは出てこなかった。だから、ここに置いていく。いいな?」
微笑んだまま頷いたのを確認してから、鉄格子の前や中にも爆薬を置いていく。
「今からここは爆発する。死にたくなけりゃ逃げろ。」
そのまま真っ直ぐ建物を出て、少し遠くにある廃屋に避難し始めた。
数分たって適当に座らせた途端、先ほどから鳴り響いていた小さく繰り返される爆発音を隠すように響く、ひときわ大きな爆発音が廃屋に響いた。
「…!」
止血もしていないその体のどこにそんな体力があったのか分からないが、弾かれた様に爆発音がした方を見に行ったガキ。
「……………。」
微笑みを固めて見つめるその姿に、判断は間違っていなかったと言い切れる。
「おいガキ。」
「……?」
「お前、今日から烏也(からや)だ。千葉烏也(せんばからや)。それがお前の名だ。忘れんなよ?」
こうして俺は、微笑み続けるガキを一人拾った。
理由は、いまだ分からない。
ただ、
そうしなければいけないと自分の何かが叫んでいたことは、よく覚えている。
「おい、聞こえてんのか。」
力なく垂れた頭をこちらに向けさせ、顔を合わせる。
「てめぇ、さっきモニターが馬鹿みてぇにある部屋にいたな?」
おかしなことをしていたガキ。この中ではまだ肥えているだろうが、ひょろひょろと言ってもおかしくないガキ。
そんなガキが壁に張り付いていた。
灯りの一つもない光の刺さないこの部屋で、血を吸った鉄に四肢を繋がれ、全身から血を流し続けていた。
………多分だが、何の罪もなく。
「てめぇはいったい、何を作っていたんだ。」
その声がガキに届いていたかはわからねぇが、言ったとたんに落ちてきたこれがその答えだろう。
「……?」
醜い鍵のような、ただの歪な棒のようなものを落として気絶してしまった。
「何だこりゃ。」
好奇心に動かされるままカチャカチャと少しいじった途端、ピンッっと一本の棒が飛び出した。
「………まさか、な。」
手前にあった鉄格子の施錠部分に近づき、飛び出した部分を差し込む。
「………まじか。」
カシャンと音を立てて、扉が開く。チラリと見ると中にいるガキどもは何も反応を示さなかった。
(出られることに喜びがないのか、絶望しきっているのか、もとより売られたか。)
全ての鉄格子の施錠部分に同じように鍵を差し込み、同じように回して同じように開けていく。
(これ、どうなってんだ?)
ただのガキが作ったとは到底えない鍵。
当たり前かもしれないが、この部屋にある鉄格子はそれぞれ別の鍵で管理されている。それが、手元にあるたった一つの鍵で開いた。
(……応用すれば、役に立つことは確実だな。)
作り方を教えてもらう為にガキの方へ戻る。
「おい、聞こえるか?」
「………」
顎を掴んで上に向ければ、弱々しく開かれた目と目が合う。
ぼろ布と称しても問題ない体と洋服。血まみれで、胴体や手足はもちろん頭からも血が滴っている。
そんな状態の奴が今、目の前で
「………………?」
困ったように微笑んだ。
その瞬間、自分の中でこいつを連れて帰ることが確定した。
「お前、名は?」
体に走った激震を押し隠して絞りだした声に反応は無く、困ったように微笑まれるだけ。
「お前を連れて帰る。お前は今日から俺の弟子だ。」
「……………?」
「今は理解できねぇだろう。俺だってわかんねぇよ、でも、お前は連れて帰る。」
手足を壁に縛り付けている鉄を強引に外して、困ったまま微笑み続けるガキを背中に乗せる。
(名前を付けなきゃいけねぇな。それにこせきっつうやつを作んなきゃいけねぇだろうし……俺に作れんのか?………まぁ、どうにかなるだろ。)
大勢のガキがいる部屋に戻れば、扉は全て開けたが誰一人として出てはこなかった。
「おい。」
「………?」
「こいつらは出てこなかった。だから、ここに置いていく。いいな?」
微笑んだまま頷いたのを確認してから、鉄格子の前や中にも爆薬を置いていく。
「今からここは爆発する。死にたくなけりゃ逃げろ。」
そのまま真っ直ぐ建物を出て、少し遠くにある廃屋に避難し始めた。
数分たって適当に座らせた途端、先ほどから鳴り響いていた小さく繰り返される爆発音を隠すように響く、ひときわ大きな爆発音が廃屋に響いた。
「…!」
止血もしていないその体のどこにそんな体力があったのか分からないが、弾かれた様に爆発音がした方を見に行ったガキ。
「……………。」
微笑みを固めて見つめるその姿に、判断は間違っていなかったと言い切れる。
「おいガキ。」
「……?」
「お前、今日から烏也(からや)だ。千葉烏也(せんばからや)。それがお前の名だ。忘れんなよ?」
こうして俺は、微笑み続けるガキを一人拾った。
理由は、いまだ分からない。
ただ、
そうしなければいけないと自分の何かが叫んでいたことは、よく覚えている。
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