異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

99.神様と師匠と報告事項

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「おい神。最高神じゃねぇ方だ。」

そんな一言から始まったのは、生まれたての小鹿状態の神様と魔王状態の師匠の話し合い。

「先に言っておくが、俺は敬語なんざ使わねぇからな。………んで?どういうつもりだか言い訳をこの俺自ら聞いてやろうじゃねぇーか。」

相変わらずの上から目線で神を問い詰め始めた師匠。あのー、それ神様ですけど……。ああ関係ありませんかソウデスカそうですよね。

「………どの件の言い訳だろうか。」

電話ごしでも分かる師匠の怒りの声に、少し怯えた声を出す神様。
先ほどまでのブリザートなんてもう欠片も見えない。

「俺の弟子を勝手に連れていきやがった件に決まってんだろうが。」

胸が浮き沈みするほど深く深呼吸をして、冷静に神様は話し始めた。

「……彼女はもともとこの世界の住人になるはずだった。それを僕の部下が手違いを起こして、そちらの世界に生まれさせてしまったことがすべての始まりだ。通常通りならばこちらでしかるべき作業をして数を合わせればよかったんだが、千利は生まれる前からこの世界の守護者として生きる義務があったんだ。それはどうやっても千利から他人に移動できるようなものじゃない。だから、異世界への移動が耐えられる年齢になってから移動してもらった。」

「移動してもらっただぁ?当人の了承も得ずに何が『移動してもらった』だこの野郎。勝手に誘拐して別の世界に監禁しただけだろうが。」

(………暇)
至って真面目な話の最中だが、二人の話し合いなので当人とはいえ暇です。

「それはその通りだ。返す言葉もない。本人の了承も何も得ずに彼女と、その場で作ったニア嬢二人で来てもらった。」

「馬鹿弟子。」

(説明係かよ。)

師匠に呼ばれてしまったので、投げやりに口を開く。

「一心の妹兼私の娘として人工知能を作成しました。一心の基礎に自我を持たせ、一心にその場で教育させました。簡単に言えば、一心を女性にした劣化版です。」

「そうか。…………千利。」

上官として命令するときの真面目な声を聞いたので、背筋が反応して真っ直ぐに伸びた。

「お前の師として命令だ。その世界に関わるの全ての事を報告しろ。その世界に行った時から今までの全てを、だ。ああ、言い忘れていたがこれはお前の部下たちも聞いているからな。」

「うげぇ。」

どうやら変人集団たちも聞いているらしい。……………寒気がしてきた。

しかし師匠の命令を聞かないわけにはいかないし、そもそも拒否権なんてものは存在していないので報告を行う。

(できる限り事実のみを、第三者視点で。)

「報告いたします。書類仕事を自らのデスクで行っていた際、通常よりも長い瞬きをした後には真っ白な世界に立っていました。目の前には――――――――――」



―――――――――――――――――――

途中途中お茶を挟み説明を続け、しばらく黙って聞いていた師匠。

「―――以上を報告いたします。」

「ご苦労。質問に移る。まず、そっちの世界で娼婦扱いされたことは事実か?」

「事実です。私自身は男装していたため食指が向かなかったらしいですが、ニアに対して舐めるように見ていました。」

質問に移る。
その言葉通りに一方的な報告から質問へと移動して、今度は神様が一人ポツンと立つ番になった。

「そうか。次に、十分な食事を得られなかったという報告だが実際の食事全てを報告しろ。」

「三日間の間自力で手に入れた食料として、王宮の食糧倉庫から盗んだ約20gの干し肉が合計3つ。その国の貴族から得た干し肉50g。また、水は商人に変装して井戸で汲ませてもらいました。」

「支給された食料は。」

「水、食料を含めてありませんでした。」

「その時のお前たち二人の状態は。」

「手枷と召喚された時に身に着けていた物のみです。一応皆でやったゲームのアイテムボックスの物が自由に使えましたが、不審に思われても面倒なので幻惑で手枷をしているように見せかけることで止めました。また、手枷は手刀で切り落としましたが足枷はつけられていませんでした。付け加えるのであれば、ゲームの倉庫内のアイテムはすべて消去されています。」

「了解した。次に――」

それからも質問は続いた。最高神様も詳しくは知らなかったのか、驚きの表情を隠さずに聞いている。対照的なのは神様で、痛ましい顔でこちらを向いている。

そのうち、あまりにも時間がたっていることに不信感を抱いたウィール様も参戦した。

「小鳥美の対外的な保護者は私だからね。保護者として元の世界でお世話になった師匠殿と話しておきたかったんだよ。」

そうにこやかにほほ笑んだウィール様を見て、始めて自然に両手を合わせた。ふと見れば一心も力強いまなざしでこちらを見ていたので、うなずき合った。

(後で酒!師匠と話したいとか聖人だろう?!)

(このことをお酒の肴に話すことは決定しましたね。注ぐのはニアに頼みましょう。)

そんなことがあった後時間の流れは残酷に、無情に師匠との別れを告げた。
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