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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

98.おせぇ

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当たり前の様に人の頬をグニグニしながら、最高神様と二人で話し合う神様。

当然と言えば当然だが、両者ともに行きたくないらしくて。

「ほら、私は最高神としての仕事も多いし地上での制約も多いから。」

「執務は私が半分ほどやっているので今仕事が少ないの知っていますよ?最高神として、神の代表として話してきてください。」

「小鳥美の知り合いなら君が行くべきだろう?」

「いやいやいや………。」

「いや、………ですから。」

うだうだと長い論争は一人の神によってもたらされた報告により、唐突に終わりを迎えた。

「最高神様!先ほどと同じような威力を持った物体が急降下しています!いかがいたしましょう!」

「すぐにこの空間への入口を作り、大陸への被害を抑えろ!」

「はっ!」

(さっきもこうだったのかな~)
なんて思いながら真面目な顔の神様方を見る。

「君も戦闘の準備を。万が一、僕らで抑えられない威力だったら君に前線に出てもらう。悪いけど、これは神としての命令だ。」

あくびを一つして、手をおばちゃんの様に振りながら告げる。

「そんなにピリピリしなくても大丈夫ですよ。」

イラッとした様子の神様がこちらを睨みつけて言う。

「なんでそんなことが言えるんだい?」

「一心ですから。」

「は?……………………はぁ?」

ピシッ、と一瞬で綺麗に固まった神様を見たとたん、衝撃による大きな音と爆風で髪が乱れた。

「マスター。」

普段から聞きなれた変わらぬ声と変わらぬ姿で、朝食のメニューを聞くように声を出す一心。普段との違いをあげるのならば、青ざめた顔と携えている携帯だろう。

「上官殿が、『遅い』と。」

「あー…………………。ですよねー。」

「上官殿からの命令で、スピーカーにいたします。関係のない皆様、お静かにお願いいたします。」

声を荒げようとしたものはそう告げた一心の顔を見て、同情の目を向けた。

(………殺される………?)

そんな声が聞こえそうな顔をした神二人の肩を強めに叩いて、電話の主に声をかける。

「あー師匠?聞こえます?」

「聞こえてんぞ馬鹿弟子。おせぇ。」

「ちょっとばかし手間取りまして。でもほら、神様連れてきましたよ?」

「てめぇが連れて来たんじゃなくて、一心の奴が迎えに行ったの間違いだろ。それよりもどいつだ、人の弟子勝手に連れて行った世界の責任者はよぉ。」

クルリと後ろを向けば、年の離れた兄弟かと間違うほど仲良く背を押し合う二人が見えた。……決して、主従の姿ではない。

(……………そっか、どっちかだからこんな喧嘩になってんのか。)

ニヤリと笑いたいのを我慢して、二人の逃げ道をふさぐことにした。

「師匠?とりあえず私の友人である神様と話してもらいますね。その後、この世界の責任者である最高神様と話してください。」

「「千利/小鳥美?!!」」

悲鳴に近い声を上げた二人に向けて、死神の笑みを浮かべて最終通告をする。

「さぁ最高神様、神様?魔王様との会談、どうぞお楽しみくださいませ。気になっていたではありませんか。いったいどんな化け物かと、ね?」

こちらの意図を察したのか地獄耳だから聞こえていたのかは知らないが、師匠が呟き一つで道を完全にふさいだ。

「ほう?」

真っ白になった(比喩にあらず)神様を問答無用で一心の持つ電話の前に立たせ、師匠に神様が傍に来たことを知らせる。

「じゃ、私はこれで!」

いけに……っゴホッ。神様達を置いて先に帰ろうとしたら三つの手が両肩と頭に置かれた。

(向きたくない。……………ガチで向きたくない。)

半ば肩に置かれた手に引き寄せられて振り返れば、最初に青い顔のままニッコリと笑う最高神様と目が合った。

………胃薬は後で届けますからそんな顔しないでください。本気で怖いです。目、笑ってないですし何ならちょっとすわってますよね?

そんなことを思い、本気でどう逃げようかと考えていると肩からミシミシと素晴らしい音がした。

「一心痛い痛い痛い痛いって!」

「そうですか。大変ですね。」

「そうですかって?!主の肩をミシミシ言わせている執事のセリフとは思えないんですけど?!」

息子が放った驚愕のセリフにかみつくと、頭を掴む手にさらに力が加わった。

「せ・ん・り?」

ゴキッっという幻聴が聞こえてしまうほどの勢いで頭を回されて、顔をしかめる間もなく神様と目が合った。

(うっわぁ……………。)

もはやどう言葉を発しても怒られるような気がしたので、無言で笑ってごまかす。

「……………。」

無言の時間が長くなるにつれ、ミシミシミシ鳴る私の頭。

「……………神様。」

「なんだい?」
「そろそろ私の頭蓋骨が限界を迎えますので、手を放していただけないでしょうか。」

「…………君の馬鹿な頭なんて、壊して再生した方が頭良くなるんじゃないかい?」

「そんなことありません!」

それをきっかけに、しばらくの間両肩と頭をミシミシ鳴らしながら、ギャアギャアと子供の様に騒いだ。

それはもう、師匠が呆れて

「アホのじゃれあいはもういいから、とっとと話させろ。」

と言い出すくらいには。
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