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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
97.いひゃいれす
しおりを挟む雲くらいの高さまで来たので、白っぽい空間を探す。
「前はこの辺だったっけな………?やっぱない?」
一応いろいろな方向を向いてみるものの、やはり神の領域に通じる空間は空いていないらしい。
「仕方ない……………。大陸ごと滅ぼそうとしたら空間開くでしょ。」
限りなく物騒な思考で片手剣を構え、スキルを掛け合わせて威力を上げていく。
(こんなものか。)
なんだか大陸周りの海まで壊しそうな威力だが気にしない!そのまま勢いをつけて下に落ちていく。
一番高そうな山にぶつかる数秒前くらいの時、ヴンと音がして空間が開いた。
無理やり風の魔法で勢いを相殺して着地する。
「なんて無茶をするのかい君……?!」
驚愕の顔で迎えてくれた神様に手を振り、剣をしまう。
「あ、神様。お久しぶりです~。」
「久しぶりだね本当に!」
言うや否やグニグニと人の頬をつねる神様。本気で痛いですよ神様!
「報告も終わって一日くらい休もうと思ったら、連絡が来てねぇ?」
「いひゃいれすよひゃみひゃま。」
(痛いです神様。)
「聞くところによると、とんでもない威力の何かが高速で君のいる世界に落下しているらしくてね?」
「ひゃい。」
(はい)
「君が精霊姫として誕生するときの責任者として、君の安全で幸福な生活を願っている僕としては!君の不機嫌の原因となりそうな物の排除をしないといけないと責任感に煽られてね!行動した訳なんだよ!」
グニグニグニグニとなおも頬をつねられて、本気で痣が出来そうです。
「おひゅかれひゃまれした。ごひゅうひょうさまれす。」
(お疲れさまでした。ご愁傷さまです。)
「何言ってるか知らないけど君のせいだよ全部!誰が!誰が大陸で一番大切な存在である精霊妃が!大陸の守護者たる精霊妃が!自ら!突っ込んでくると思うんだい?!危険だろう!?危ないだろう?!」
バシンと叩かれた後、解放された頬を撫でる。
「私のプニプニほっぺが……………。」
「男装用の声で言わないでくれないかな?普段の声と違うから違和感がすごくて。」
「そうですか?そんなに声変えてませんけど……?」
「それでも、だよ。………はぁ。それで?何をしにこんな暴挙に及んだんだい?」
「私も聞きたいねぇ?」
ブリザードを背負って悠々と歩いてくる最高神様。にこやかな笑顔がとっても怖い!
(それはきっと神様の役です最高神様!あなたはキャラ的にもうちょっと胃が弱くていいと思います……!)
この主にしてこの従者あり、みたいな感じで近づいてくる尊きお方。
「こっわ!……………………………逃げたい。」
「やれ。」
「はっ!」
極々わずかな呟きを拾われて、ガシッと確保されました。
「主のご命令だ。逃がさないよ千利?」
「えーっと神様。一応言っておくと……顔近いです。」
「男装している君は男として扱うから、まったく問題ないよ。」
「ソウデスカ。」
「そうですよ?」
(まぁ私も恋愛感情の欠片も抱いていないので女性らしい事求められても困るだけですけどね。)
「それで?こんな暴挙の理由は?」
不真面目な様子の格好で、真面目な顔して尋問されるという貴重な経験を味わいながら答える。
「師匠から神様、もしくは最高神様の呼び出しがかかったので弟子らしく従いました。」
ブリザードを忘れてしまうほど驚き、困惑した様子の神様たち。
「…………?僕、君の師匠殿とは面識がないんだけれど?」
「当然のように私もね。」
「師匠に聞いてくださいよ。師匠が『知り合いの神がいたら、話したいから連れて来い』って。」
呆れ切った様子で神様が頬をつっついた。………意外と人の頬がお気に入りの様子。
「まず、なんで君の知り合いに神がいるなんて可能性が浮かぶのさ。君の師匠は。」
「師匠ですから。」
「それに、実際に神と知り合いで連れてくるために命をかける君も気味でおかしいんじゃないのかい?」
「師匠の命令に逆らうと文字通り投げ飛ばされますので、よほどのことが無い限り従います。逆らうのダメ・ぜったい。」
人の頬をツンツン突っついていた指を止めて、嫌そうな顔を隠すことなく呟いた。
「………君がそれほどまでに怖がる師匠と、話さないといけないのかい?」
「どっちかがですけれどね。どっちが行きます?」
すっかり拘束が解けたので、体を揺らしながら聞く。
(二人のうちどっちでも神様だし、師匠も納得するだろうから私あんま関係ないや。)
「どーします?どーします?」
「…………。」
気楽に待ってたら頬が再び犠牲になった。
「……君の頬、意外と伸びるね。」
「おひょこのひょおなんていひってひゃのしいれすか?」
(男の頬なんていじって楽しいですか?)
「何言っているのかわからないよ?」
「ひょおれすか。」
(そうですか)
とりあえずさっさと決めて欲しい。
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