異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

93.魔王 一心視点

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メールの受信箱にはそれはもう、私の処理が遅くなるほどのメールが送られてきていた。
件名 馬鹿弟子
件名 馬鹿弟子
件名 馬鹿アホ弟子
件名 馬鹿アホ脳筋弟子
件名 早よ返信しろ馬鹿弟子
件名 返信しろ馬鹿弟子
件名 どこだ
件名 馬鹿弟子何処だ



「ヒッ?!……………どうやって……?」

思わず声が漏れてしまったが、本当にどうやってメールを届けたのだろう。

大前提として、ここは異世界だ。

それ以前に、ここにはWI-FIはもちろん他の電波も届いていない。
だからこそ、私はわざわざ神様の領域に自分の子機を置いて、自分だけが使える電波を使って子機を中継点にし手この機械を本機として繋げたのだから。その電波すら、今は悪用を防ぐために消し去った後だ。

(可能性があるとすれば、神様領域にある私の子機に自分で作った電波を繋げて、こちらに送る様に命令を出した……?)

それだって恐ろしい事だ。
私の子機は本機である私に繋がってはいるものの、子機に繋げるにも本機の私に繋げるにもパスワードを入れなくてはいけない。もちもん、人工知能の私が計算し尽くした上で解読に一番時間がかかるパスワードを設定した。

(それを二つ解読して、電波を作成して繋げ、メールを届けた………?)

恐ろしい。

その一言に尽きる。きっと私の顔は真っ青で、体も震えているに違いない。

きっと、いや、実際にこうしてメールが届いている以上やってのけたのだろう。

人工知能がフル活動してやった事を。
到底一人の人間の頭だけでは考え付かない、処理が追い付かないことをやってのけたのだ。

(新たな電波を作成して、日本の本機と神様の領域にある子機と私を繋げる。その際パスワードを二つ分解読する必要がある。また、メールの通知が鳴らなかったことから、私の通知時の設定が操作されていることは確定している。このことから、接続・通知設定の変更・メールの送信を行ったと予想はできるが………。)

一つの事を行うとき、必ずと言っていいほどパスワードが出てくる。セキュリティレベルを上げる必要があった生活ためだが、それを軽々と私に気付かれることなくやってのけられてしまった。

(しかし、私の設定を変えるためには私に接続しないといけないのに、なぜ私は気づくことが出来なかったのでしょう?)

考えても考えてもたりない人間一人が行ったとは思えない事の数々に、恐怖も呆れも通り越してたった一言が出てきた。

まるでそれが当たり前の様に、すんなりとソレはでた。

「さすが上官殿ですね。」

マスターを育て、マスターに様々な力を与えた一人の老人。

その過去をいくら調べても、いくら聞き込みをしても、実の姉すら何も知らないといった一人の人間。

その実力だけで今の信頼と評価を得た彼は、どこでこんな知識を得たのだろう。いくら考えても出てこないことだけは分かるが、きっと、私もマスターもマスターの兄弟子である千葉様もマスターの隊員たちも含めて

「一生、いえ、たとえ上官殿が死んでしまっても、誰もかなわないのでしょうね。」

魔王。
何処の誰かも知らないが、よくもまぁピッタリな二つ名を付けたものだ。

「……………ひとまず、マスターが起きたら報告ですね。」

途方も無い数の為件名だけを見ているが、上官殿の感情の変化がよくわかる。

最初こそ、馬鹿弟子と罵ってはいるものの後半はすべて、マスターの安否を気にするものだ。
一番最近のメールは、かなり精神的に参ってきたのだろう。

件名 千利、早く戻ってきてくれ

マスターを名前で呼び、命令口調ですらなくなり懇願に近い状態になっている。

(全く。分かりにくい愛情ですねぇ。)

上官殿を思い出すように上を向くと時計が目に入った。もう、朝食の準備を始める時間になっていたようだ。

珍しい上官殿の弱気な姿をマスターに見せるために、なるべくメールを読み込んでおくとしよう。

(これで、少しはマスターの気休めになるといいのですが……)

慣れないことの連続で普段よりも弱っているマスターを思い、朝食の準備を始めた。

(それに気づかない精霊王達のなんと無能な事か……。)

音を立てて切れ、怒りを込めたにんじんが普段よりも細かくなってしまったが、ご愛敬で済む大きさにとどまったのでよしとする。

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