112 / 205
ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
93.魔王 一心視点
しおりを挟むメールの受信箱にはそれはもう、私の処理が遅くなるほどのメールが送られてきていた。
件名 馬鹿弟子
件名 馬鹿弟子
件名 馬鹿アホ弟子
件名 馬鹿アホ脳筋弟子
件名 早よ返信しろ馬鹿弟子
件名 返信しろ馬鹿弟子
件名 どこだ
件名 馬鹿弟子何処だ
・
・
・
「ヒッ?!……………どうやって……?」
思わず声が漏れてしまったが、本当にどうやってメールを届けたのだろう。
大前提として、ここは異世界だ。
それ以前に、ここにはWI-FIはもちろん他の電波も届いていない。
だからこそ、私はわざわざ神様の領域に自分の子機を置いて、自分だけが使える電波を使って子機を中継点にし手この機械を本機として繋げたのだから。その電波すら、今は悪用を防ぐために消し去った後だ。
(可能性があるとすれば、神様領域にある私の子機に自分で作った電波を繋げて、こちらに送る様に命令を出した……?)
それだって恐ろしい事だ。
私の子機は本機である私に繋がってはいるものの、子機に繋げるにも本機の私に繋げるにもパスワードを入れなくてはいけない。もちもん、人工知能の私が計算し尽くした上で解読に一番時間がかかるパスワードを設定した。
(それを二つ解読して、電波を作成して繋げ、メールを届けた………?)
恐ろしい。
その一言に尽きる。きっと私の顔は真っ青で、体も震えているに違いない。
きっと、いや、実際にこうしてメールが届いている以上やってのけたのだろう。
人工知能がフル活動してやった事を。
到底一人の人間の頭だけでは考え付かない、処理が追い付かないことをやってのけたのだ。
(新たな電波を作成して、日本の本機と神様の領域にある子機と私を繋げる。その際パスワードを二つ分解読する必要がある。また、メールの通知が鳴らなかったことから、私の通知時の設定が操作されていることは確定している。このことから、接続・通知設定の変更・メールの送信を行ったと予想はできるが………。)
一つの事を行うとき、必ずと言っていいほどパスワードが出てくる。セキュリティレベルを上げる必要があった生活ためだが、それを軽々と私に気付かれることなくやってのけられてしまった。
(しかし、私の設定を変えるためには私に接続しないといけないのに、なぜ私は気づくことが出来なかったのでしょう?)
考えても考えてもたりない人間一人が行ったとは思えない事の数々に、恐怖も呆れも通り越してたった一言が出てきた。
まるでそれが当たり前の様に、すんなりとソレはでた。
「さすが上官殿ですね。」
マスターを育て、マスターに様々な力を与えた一人の老人。
その過去をいくら調べても、いくら聞き込みをしても、実の姉すら何も知らないといった一人の人間。
その実力だけで今の信頼と評価を得た彼は、どこでこんな知識を得たのだろう。いくら考えても出てこないことだけは分かるが、きっと、私もマスターもマスターの兄弟子である千葉様もマスターの隊員たちも含めて
「一生、いえ、たとえ上官殿が死んでしまっても、誰もかなわないのでしょうね。」
魔王。
何処の誰かも知らないが、よくもまぁピッタリな二つ名を付けたものだ。
「……………ひとまず、マスターが起きたら報告ですね。」
途方も無い数の為件名だけを見ているが、上官殿の感情の変化がよくわかる。
最初こそ、馬鹿弟子と罵ってはいるものの後半はすべて、マスターの安否を気にするものだ。
一番最近のメールは、かなり精神的に参ってきたのだろう。
件名 千利、早く戻ってきてくれ
マスターを名前で呼び、命令口調ですらなくなり懇願に近い状態になっている。
(全く。分かりにくい愛情ですねぇ。)
上官殿を思い出すように上を向くと時計が目に入った。もう、朝食の準備を始める時間になっていたようだ。
珍しい上官殿の弱気な姿をマスターに見せるために、なるべくメールを読み込んでおくとしよう。
(これで、少しはマスターの気休めになるといいのですが……)
慣れないことの連続で普段よりも弱っているマスターを思い、朝食の準備を始めた。
(それに気づかない精霊王達のなんと無能な事か……。)
音を立てて切れ、怒りを込めたにんじんが普段よりも細かくなってしまったが、ご愛敬で済む大きさにとどまったのでよしとする。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説

転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る
月野槐樹
ファンタジー
辺境の片田舎の弱小貴族の一家の屋敷に、ある日高位貴族達のちょっとした気まぐれで高位貴族とその子息子女、更に第二王子殿下までもが滞在することになってしまった。
田舎貴族の次男クリスはその頃から、奇妙な白昼夢を見るようになる。それは屋敷に滞在している王子や令嬢、令息達の未来のように思えた。
不幸になりそうな未来なら何とか手助けしたい!でも、本当に起きることのかな?
半信半疑のまま、手助けできそうなことを、やりたいようにやっていく。
ただし、普段は魔道具を作ったり、魔獣を倒したり、美味しいご飯を食べたり、緩くマイペースに辺境ライフを楽しんでいます!

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

異世界無宿
ゆきねる
ファンタジー
運転席から見た景色は、異世界だった。
アクション映画への憧れを捨て切れない男、和泉 俊介。
映画の影響で筋トレしてみたり、休日にエアガンを弄りつつ映画を観るのが楽しみな男。
訳あって車を購入する事になった時、偶然通りかかったお店にて運命の出会いをする。
一目惚れで購入した車の納車日。
エンジンをかけて前方に目をやった時、そこは知らない景色(異世界)が広がっていた…
神様の道楽で異世界転移をさせられた男は、愛車の持つ特別な能力を頼りに異世界を駆け抜ける。
アクション有り!
ロマンス控えめ!
ご都合主義展開あり!
ノリと勢いで物語を書いてますので、B級映画を観るような感覚で楽しんでいただければ幸いです。
不定期投稿になります。
投稿する際の時間は11:30(24h表記)となります。

異世界楽々通販サバイバル
shinko
ファンタジー
最近ハマりだしたソロキャンプ。
近くの山にあるキャンプ場で泊っていたはずの伊田和司 51歳はテントから出た瞬間にとてつもない違和感を感じた。
そう、見上げた空には大きく輝く2つの月。
そして山に居たはずの自分の前に広がっているのはなぜか海。
しばらくボーゼンとしていた和司だったが、軽くストレッチした後にこうつぶやいた。
「ついに俺の番が来たか、ステータスオープン!」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる