異世界情報収集生活

スカーレット

文字の大きさ
上 下
111 / 205
ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

92.依頼達成 後半一心視点

しおりを挟む
少し経った後、女性のメイドと共にビア嬢が出てきた。

「依頼内容通りの救出、感謝いたします。こちらが報酬となります。」

布袋と紙を渡されたので、確認をする。
袋の中身は報酬の薬草類で、書類は貴族の名前と所有する屋敷の場所が書かれた書類。

「確かに、全てそろっているようだな。だが、依頼内容は『屋敷に捕らわれている女性の救出し、健康な状態で連れてくること』と『その家の主の殺害』だったはずだが?こちらとしては構わないが、後から依頼内容と違うと騒がれるのはごめんだぞ?」

「殺害についてはこの後確認をさせていただきますが、軽く診ても彼女たちは薬漬けの状態だったと考えられます。ならば、救出後すぐに治すことは不可能でしょう。なので、この状態で依頼達成といたします。」

「分かった。ではこれはもらっていく。女性達は置いていくのでいいんだな?」

「ええ、こちらで引き取ります。ご苦労様でした。」

「またの依頼をお待ちしている。」

芝居がかった一礼をして、にやりと笑いその場を去る。


私の部屋にいた一心に帰宅を伝え、ベッドに沈み込む。呆れた視線は無視だ無視!

「まったく………連絡はまた後程にしましょうか。どうせ、真剣に聞く気は無いでしょう?」

「すまない。とりあえず、眠い。」
「でしょうね。すでに5時です。朝食の時間である8時まで、お休みください。今日行った家で得た情報の整理は、私が。」

「頼んだ。お休み………。」

スヤリと眠りに落ちた。見た夢が師匠に訓練をさせられる蹴り飛ばされる夢なのには厳重に抗議したい所存です。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
ベッドに倒れ込み、死んだように眠るマスター。

(仕方がないのでしょう。頭脳も身体も酷使しましたから。)

以前、暇なときに採った薬草から作っておいたアロマキャンドルを灯す。

マスターが嫌いな香りでも覚醒作用がある物でもないので、ゆっくりと休めるだろう。

マスターに毛布を掛けて、部屋のドアを閉めて外から開けられないように鍵をする。
これで、マスター用の部屋には私を除き誰も入れない。

(………普段よりも思考が回りませんね。さすがに7割のCPUを渡したのは、やりすぎだったのでしょう。)

これからの予定を立てようにも、どうも頭に霧がかったようにぼんやりしている。

仕方がないので、ひとまず精霊王達から情報を得て、まとめる。

しばらくしてふと思い出したことがあったので、精霊達に伝える。

「ああ、そうだ。今回のことが終わったのち、一度四大以外の精霊王様方は精霊の土地に戻っていただけませんか?」

話を聞きだしていた五精霊の精霊王が驚愕の顔を浮かべる。

「なぜですの?!」

「…………理由を、聞かせてもらえますよね?」

大きな声を出して不満を口にしたミカと、冷静に理由を聞くラトネス。
性格に大きく差があるのがよくわかる。

「気になるのう。何か、我らが粗相をしてしまったかの?」

「ご安心を。対応がめんどうなだけであって、あなた方の非はありません。」

「ではなぜだ?」

興味津々で、または若干青ざめた顔でこちらを見つめる精霊王達。その顔に、若干申し訳ない気がしてくるが、人工知能らしくスッパリと言い切ることにする。

「単に、マスターが顔と名前が覚えられません。」

唐突に訪れる沈黙に、僅かな同情を覚える。

(自分が好きで仕えている主に顔と名前を覚えられない、なんて……。痛いほど気持ちがわかります。)

「「「「「…………。」」」」」

「精霊の土地にいる間、この家のコピーの設置と異界から落ちてきた魔獣の報告を頼みます。」

「…………分かった。」

皆がショックで沈む中、ダーネスが答えを返した。まだ他の者たちも動揺が見られるが、どうにもならないだろう。

(さすがに気の毒ですね……。)

「………マスターに、早く顔と名前を覚えるように進言しておきましょう。」

「頼む。」

それ以外の慰めの言葉は、言わない方がいい気がした。

それから私は一度家に戻り、自分の体を自分の本機に繋げて新たに得た情報の追加と、以前に集めた情報の精査。
それらに加えて事実確認が取れた情報と不確定の情報で仕分けをしていた。

………………本機からの情報ではニアはまだ、治っていないそうだ。

さらにしばらくして、ふと、メールのチェックをするためにメール用のソフトを開いた。

確かずいぶん前にマスターの師匠にあたる上官殿から来たメールを返した後、ごたごたして確認をしていない。

(まぁ、こんな異世界ではメールも届かない気がしますが………。しかし、あの上官殿ならどうにかしそうな気もしますね………。)

背筋に冷たいものが流れる感覚を覚えながら、恐る恐るメールの受信箱を開いた。


追記
(CPUが限りなく遅くなっている………?まさか!CPUが怯えt)
「なにも、感じていません。感じていません。感じるはずがないのです。」

無意識にこんなことを呟いていたらしい過去の私は、この後気づき次第抹消しました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スコップ1つで異世界征服

葦元狐雪
ファンタジー
超健康生活を送っているニートの戸賀勇希の元へ、ある日突然赤い手紙が届く。 その中には、誰も知らないゲームが記録されている謎のUSBメモリ。 怪しいと思いながらも、戸賀勇希は夢中でそのゲームをクリアするが、何者かの手によってPCの中に引き込まれてしまい...... ※グロテスクにチェックを入れるのを忘れていました。申し訳ありません。 ※クズな主人公が試行錯誤しながら現状を打開していく成長もののストーリーです。 ※ヒロインが死ぬ? 大丈夫、死にません。 ※矛盾点などがないよう配慮しているつもりですが、もしありましたら申し訳ございません。すぐに修正いたします。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ

Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_ 【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】 後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。 目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。 そして若返った自分の身体。 美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。 これでワクワクしない方が嘘である。 そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

処理中です...