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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
90.もう一人の依頼
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書斎と同じ仕掛けと聞いているので本棚を探すも、見つからない。他に本が並んであるようにも見えず、仕方なく物理行使に変更する。
僅かに聞こえる励ましの声を頼りに壁を調べて、コンコンと叩く。
途端に静まり返ってしまったので、普段よりは低い声を出して呼びかける。
「誰かいるのか?私はとある依頼を受けた者だ。君たちに危害を加える気は無い。聞こえるか?」
出来る限り優しく呼びかければ、ドシンと物音がした。
最低でも数日閉じ込められているにも関わらず、力強い衝撃に驚きを隠せない。
「助けて!ここよ!」
部屋の中にしか響かなかったが、ありったけの力を振り絞って出されたその声に声と行動で答える。
「今助ける!下がっていろ!」
蹴りを入れて壁を破壊する。大きな音を立てて崩れた壁の粉を浴びながら、見えた通路の奥へ走る。
通路の奥にはもう一枚の壁があり、鍵穴が付いていることから鍵があるのだろう。しかしわざわざ開ける必要もないので手っ取り早く蹴りで壊す。
鉄格子越しに見えた声の主であろう女性。しかし、ほとんどの者がぐったりしており、洋服というよりも肌着と言われた方が納得するものを着ている。
共通して顔色は悪く、あと数日遅れていたら全員が倒れていてもまったくおかしくない状況だろう。
「依頼を受けて助けに来た。これで全員か?」
「ええ、ここにいる人達で全員よ。10人中3人倒れているわ。」
「先ほどの声は君だな。ひとまず私の家に治療に連れて行きたい。家には男が二人いるが、恐怖があるなら連れて行かない。どうする?」
「おねが……………」
「イヤッ!!」
声を荒げた女性は、恐怖と怒りと憎しみが入り混じった目をこちらに向けている。
(納得させるのは時間がかかりそうだな。これは、ここで治療になりそうだ。)
「分かった。ならここで治療する。まず、叩かれたり切られたりしたものはいないか?簡単な傷から治す。」
「こっちよ。」
鉄格子を手刀で切り落とし檻の奥に入れば、思っていたよりも重傷だったようだ。
入っていた時から感じた血と媚薬の匂いである程度予想はしたが、これは長期間薬を盛られていたと診ていいだろう。
「ひとまず傷を治す。傷の場所は?」
「えっと………。」
「言いたくないのであれば、体全体を治すから言わなくていい。」
「ごめんなさい。」
一番下の基礎魔法ヒールで傷を治す。
「入口で外を向いているから、傷が完全に治っているか見てくれ。」
「分かったわ。」
申し訳ない程度の服を脱がすわけにはいかないので、後ろを向いて予定を立てる。
(長くなりそうだな。さっさと連れて行きたいがパニックになられても面倒だ。回復して、依頼者に引き渡そう。はよ寝たい。)
「ああ、ついでに他の人たちの傷の深さも見てくれ。傷の多さはあまり関係がないが、傷の深さによって使う魔法を変えたい。」
「分かったわ。」
………………暇。唐突に訪れる、この若干な暇な時間。
(どーしよ♪どーしよ♪パッキャマラオパッキャマラオパオパオパパパ~♪)
某クラリネットを壊した(多分年数的に風化した)少年の歌を心の中で歌う。
「どうして、助けに来たの……?」
「依頼だからな。」
時々小さな声で尋ねられるので、端的に答える。
「どうして?また酷いことをしに来たんじゃないの?」
「好きな女以外を抱く趣味は無い。」
(っていうか女だし。)
「どうしてここに?」
「依頼だ。」
「どうして……。」
先ほど睨みつけていた女性の視線が、背中に刺さる。
「どうしてみんな騙されているのよ!」
声を再び荒げた女性。正直煩い。顔を見なくても状況がよくわかるが、どうでもいい。
(………めんど)
僅かに聞こえる励ましの声を頼りに壁を調べて、コンコンと叩く。
途端に静まり返ってしまったので、普段よりは低い声を出して呼びかける。
「誰かいるのか?私はとある依頼を受けた者だ。君たちに危害を加える気は無い。聞こえるか?」
出来る限り優しく呼びかければ、ドシンと物音がした。
最低でも数日閉じ込められているにも関わらず、力強い衝撃に驚きを隠せない。
「助けて!ここよ!」
部屋の中にしか響かなかったが、ありったけの力を振り絞って出されたその声に声と行動で答える。
「今助ける!下がっていろ!」
蹴りを入れて壁を破壊する。大きな音を立てて崩れた壁の粉を浴びながら、見えた通路の奥へ走る。
通路の奥にはもう一枚の壁があり、鍵穴が付いていることから鍵があるのだろう。しかしわざわざ開ける必要もないので手っ取り早く蹴りで壊す。
鉄格子越しに見えた声の主であろう女性。しかし、ほとんどの者がぐったりしており、洋服というよりも肌着と言われた方が納得するものを着ている。
共通して顔色は悪く、あと数日遅れていたら全員が倒れていてもまったくおかしくない状況だろう。
「依頼を受けて助けに来た。これで全員か?」
「ええ、ここにいる人達で全員よ。10人中3人倒れているわ。」
「先ほどの声は君だな。ひとまず私の家に治療に連れて行きたい。家には男が二人いるが、恐怖があるなら連れて行かない。どうする?」
「おねが……………」
「イヤッ!!」
声を荒げた女性は、恐怖と怒りと憎しみが入り混じった目をこちらに向けている。
(納得させるのは時間がかかりそうだな。これは、ここで治療になりそうだ。)
「分かった。ならここで治療する。まず、叩かれたり切られたりしたものはいないか?簡単な傷から治す。」
「こっちよ。」
鉄格子を手刀で切り落とし檻の奥に入れば、思っていたよりも重傷だったようだ。
入っていた時から感じた血と媚薬の匂いである程度予想はしたが、これは長期間薬を盛られていたと診ていいだろう。
「ひとまず傷を治す。傷の場所は?」
「えっと………。」
「言いたくないのであれば、体全体を治すから言わなくていい。」
「ごめんなさい。」
一番下の基礎魔法ヒールで傷を治す。
「入口で外を向いているから、傷が完全に治っているか見てくれ。」
「分かったわ。」
申し訳ない程度の服を脱がすわけにはいかないので、後ろを向いて予定を立てる。
(長くなりそうだな。さっさと連れて行きたいがパニックになられても面倒だ。回復して、依頼者に引き渡そう。はよ寝たい。)
「ああ、ついでに他の人たちの傷の深さも見てくれ。傷の多さはあまり関係がないが、傷の深さによって使う魔法を変えたい。」
「分かったわ。」
………………暇。唐突に訪れる、この若干な暇な時間。
(どーしよ♪どーしよ♪パッキャマラオパッキャマラオパオパオパパパ~♪)
某クラリネットを壊した(多分年数的に風化した)少年の歌を心の中で歌う。
「どうして、助けに来たの……?」
「依頼だからな。」
時々小さな声で尋ねられるので、端的に答える。
「どうして?また酷いことをしに来たんじゃないの?」
「好きな女以外を抱く趣味は無い。」
(っていうか女だし。)
「どうしてここに?」
「依頼だ。」
「どうして……。」
先ほど睨みつけていた女性の視線が、背中に刺さる。
「どうしてみんな騙されているのよ!」
声を再び荒げた女性。正直煩い。顔を見なくても状況がよくわかるが、どうでもいい。
(………めんど)
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