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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
86.夜も遅いので、誘ってみました。
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「………はぁ。一心殿、他者に聞かれている可能性はあるだろうか。」
「いいえ。風の精霊王様が張られた遮音の風壁はもとより、マスターも音を外に漏れない魔法の防壁を張られていますので、可能性は無いかと。」
「そうでしたか、ご配慮感謝いたします。では率直に。我が国の国王であり、私の父でもある陛下はあまり頭がキレません。公爵の者たちが補佐に仕えているため、『賢王』と呼ばれているのです。国の為陛下に仕えてくれている公爵達には、頭が上がらない心持です。」
あらら、どうにもならなかったのね。りょーかい了解。
清々しいほどの綺麗な笑顔で言う。
「それはどうにもなりませんね。努力して馬鹿ならば馬鹿なのでしょう。公爵の皆様はまともそうですから、そちらと殿下を中心に作戦を練ると致しましょう。」
微妙な顔をしつつも、「そうしていただけると助かります。」と返された。
「残りの緑のドレスについてですが、既に通告をしてあります。しかし、隠し持ち夜会に着て行くつもりの者達がほとんどです。再三通告をしますが、効果はあまりないかと。」
「王家から通告があるのにもかかわらず隠し持っているのであれば、精霊王達が怒りのあまり消しても問題ありませんね?」
「ええ、問題ありません。むしろ、次の通告の時にそのむねを仄めかすので、消してください。」
「分かりました。そう伝えておきましょう。」
………向こうも必至だな。まぁ、仕方がないのだろう。国の存亡がかかっていると実感できている奴らにとっては、一大事だからな。
実感できていない奴からしたら、鼻で笑われることだけど。
チラリと時間を見て、ニタリと微笑む。ビクリと肩を震わせた殿下に、そっと囁く。
「殿下、こんな時間ですし今日のところはここまでにして、私の部屋で泊まっていかれてはいかがでしょう。」
スッと細められた三組の目は何かを見定めるように動き、うち一組が何かを気付き声を上げた。
「そうさせていただいても?」
「「殿下!」」
二人が声を荒げるのは当然だ。外聞が厳しいのはもとより、噂が立つと手が付けられない。それで私も何度敵を屠ったものか………。
それを気にしない様子で、殿下は話した。
「確かに噂が立つことを考えるのであれば、双方にとって悪手だろう。しかし精霊妃である小鳥美様が私の婚約者になるかもしれないという噂が立っている今、本気で私の婚約者になれると考えている伯爵令嬢たちは、焦っているはずだ。」
私と似たような笑みを浮かべて、さも愉快なものを思い出し話すように言う。
「そんな時、ここでこの場に私が二人と小鳥美様と泊まれば、城にいない私はいったいどこへ行ったのかとなるだろうね。私がこの宿にいることを知らない伯爵家だからこそ、煩く騒ぎ立てるだろう。小鳥美様が誑かしたとか、今代の精霊妃様はとんだ情婦だとかね。それを許す世界樹様でも精霊王様でもない。」
そこまで聞いて、全てを理解したようだ。
「なるほど、自身と婚約する殿下ではなく精霊妃様が貶されることを逆手に取り、わざと不敬な噂を流させそれを否定するわけですか。」
「相手が流した噂で相手の信頼を失わせる、というわけか。……ああ、邪推な事を偽の噂として流したのは、自分がそんなことをする気でいたから考えずいたのではと非難も出来るな。」
そんな声を聞いて、一人静かに歓喜に悶える。
(やはり私の目は間違っていなかった!そう!まだ経験が圧倒的に足りていないが、その素質は素晴らしい!あと数年。そうすれば主より遥かに劣るが仕えるに足る人間になるかもしれない。)
「…………………楽しみだ…。」
「はぁ……マスター、さっさと帰ってきてください。」
「私はここにいるけど?」
「そう言う意味ではありません。」
いったいなんだというのだろう。せっかく未来に思いをはせていたというのに。
自分の部屋として借りた部屋に案内して、一心が使う予定だったベッドを明け渡す。
………一心君?君、不寝番予定だったよね?ベッド、使う予定だったの?
じとーっと見て、なおもシレッとしている息子に溜息を吐く。
ちゃっかりしてるんだから。確かに不寝番なくても死ぬ可能性はほぼ無いけどさ。
同じ部屋とはいえ、違うベッドで騎士をとなりの部屋に控えさせて寝る。
「………豪華ですね。価値は王城のものと大差ありません。」
「当然では?精霊妃ですからね。まぁ、権力を振り回す気はありませんが。」
「そうだ、お一つ質問が。」
「何でしょう。あ、洋服こちらです。サイズは一心が測ったので合っていると思います。………お手伝いいります?」
「洋服感謝いたします。一人で着れますのでお気にならさず。それでせ…………小鳥美様はご自身の力だけでもとてもお強いとお聞きしました。事実でしょうか。」
「事実ですよ。元の世界の中で三番目に強かったです。ちなみに一番は私の師匠で、二番目が私の兄弟子です。職業柄、強くないといけなかったもので。」
「元の世界のご職業は?」
「影を。」
「なるほど。」
基本的に「影」で通じるのはありがたい。この国にも、いるしな。
軽く数言話してから眠りについた。
訳なく。
ばっちり起きていましたとも。そもそも近くに人がいるだけで眠れない質なんですよ。
何処だってこうですよすいませんね。
一心に渡された書類を見て計画を練り、通信している一心がメモを取る。そんなことを繰り返すうちに朝になった。
「………。」
「おはようございます、殿下。」
「………。」
「何か?」
「いいえ。おはようございます、精霊妃………」
「小鳥美。」
「………小鳥美様。公の場では呼びませんからね。」
「普段は精霊妃でいいので、夜会では呼んでくださいな。仲良しアピールです。」
そうして城に帰っていった殿下方。これが、第一回作戦会議の閉幕。
「いいえ。風の精霊王様が張られた遮音の風壁はもとより、マスターも音を外に漏れない魔法の防壁を張られていますので、可能性は無いかと。」
「そうでしたか、ご配慮感謝いたします。では率直に。我が国の国王であり、私の父でもある陛下はあまり頭がキレません。公爵の者たちが補佐に仕えているため、『賢王』と呼ばれているのです。国の為陛下に仕えてくれている公爵達には、頭が上がらない心持です。」
あらら、どうにもならなかったのね。りょーかい了解。
清々しいほどの綺麗な笑顔で言う。
「それはどうにもなりませんね。努力して馬鹿ならば馬鹿なのでしょう。公爵の皆様はまともそうですから、そちらと殿下を中心に作戦を練ると致しましょう。」
微妙な顔をしつつも、「そうしていただけると助かります。」と返された。
「残りの緑のドレスについてですが、既に通告をしてあります。しかし、隠し持ち夜会に着て行くつもりの者達がほとんどです。再三通告をしますが、効果はあまりないかと。」
「王家から通告があるのにもかかわらず隠し持っているのであれば、精霊王達が怒りのあまり消しても問題ありませんね?」
「ええ、問題ありません。むしろ、次の通告の時にそのむねを仄めかすので、消してください。」
「分かりました。そう伝えておきましょう。」
………向こうも必至だな。まぁ、仕方がないのだろう。国の存亡がかかっていると実感できている奴らにとっては、一大事だからな。
実感できていない奴からしたら、鼻で笑われることだけど。
チラリと時間を見て、ニタリと微笑む。ビクリと肩を震わせた殿下に、そっと囁く。
「殿下、こんな時間ですし今日のところはここまでにして、私の部屋で泊まっていかれてはいかがでしょう。」
スッと細められた三組の目は何かを見定めるように動き、うち一組が何かを気付き声を上げた。
「そうさせていただいても?」
「「殿下!」」
二人が声を荒げるのは当然だ。外聞が厳しいのはもとより、噂が立つと手が付けられない。それで私も何度敵を屠ったものか………。
それを気にしない様子で、殿下は話した。
「確かに噂が立つことを考えるのであれば、双方にとって悪手だろう。しかし精霊妃である小鳥美様が私の婚約者になるかもしれないという噂が立っている今、本気で私の婚約者になれると考えている伯爵令嬢たちは、焦っているはずだ。」
私と似たような笑みを浮かべて、さも愉快なものを思い出し話すように言う。
「そんな時、ここでこの場に私が二人と小鳥美様と泊まれば、城にいない私はいったいどこへ行ったのかとなるだろうね。私がこの宿にいることを知らない伯爵家だからこそ、煩く騒ぎ立てるだろう。小鳥美様が誑かしたとか、今代の精霊妃様はとんだ情婦だとかね。それを許す世界樹様でも精霊王様でもない。」
そこまで聞いて、全てを理解したようだ。
「なるほど、自身と婚約する殿下ではなく精霊妃様が貶されることを逆手に取り、わざと不敬な噂を流させそれを否定するわけですか。」
「相手が流した噂で相手の信頼を失わせる、というわけか。……ああ、邪推な事を偽の噂として流したのは、自分がそんなことをする気でいたから考えずいたのではと非難も出来るな。」
そんな声を聞いて、一人静かに歓喜に悶える。
(やはり私の目は間違っていなかった!そう!まだ経験が圧倒的に足りていないが、その素質は素晴らしい!あと数年。そうすれば主より遥かに劣るが仕えるに足る人間になるかもしれない。)
「…………………楽しみだ…。」
「はぁ……マスター、さっさと帰ってきてください。」
「私はここにいるけど?」
「そう言う意味ではありません。」
いったいなんだというのだろう。せっかく未来に思いをはせていたというのに。
自分の部屋として借りた部屋に案内して、一心が使う予定だったベッドを明け渡す。
………一心君?君、不寝番予定だったよね?ベッド、使う予定だったの?
じとーっと見て、なおもシレッとしている息子に溜息を吐く。
ちゃっかりしてるんだから。確かに不寝番なくても死ぬ可能性はほぼ無いけどさ。
同じ部屋とはいえ、違うベッドで騎士をとなりの部屋に控えさせて寝る。
「………豪華ですね。価値は王城のものと大差ありません。」
「当然では?精霊妃ですからね。まぁ、権力を振り回す気はありませんが。」
「そうだ、お一つ質問が。」
「何でしょう。あ、洋服こちらです。サイズは一心が測ったので合っていると思います。………お手伝いいります?」
「洋服感謝いたします。一人で着れますのでお気にならさず。それでせ…………小鳥美様はご自身の力だけでもとてもお強いとお聞きしました。事実でしょうか。」
「事実ですよ。元の世界の中で三番目に強かったです。ちなみに一番は私の師匠で、二番目が私の兄弟子です。職業柄、強くないといけなかったもので。」
「元の世界のご職業は?」
「影を。」
「なるほど。」
基本的に「影」で通じるのはありがたい。この国にも、いるしな。
軽く数言話してから眠りについた。
訳なく。
ばっちり起きていましたとも。そもそも近くに人がいるだけで眠れない質なんですよ。
何処だってこうですよすいませんね。
一心に渡された書類を見て計画を練り、通信している一心がメモを取る。そんなことを繰り返すうちに朝になった。
「………。」
「おはようございます、殿下。」
「………。」
「何か?」
「いいえ。おはようございます、精霊妃………」
「小鳥美。」
「………小鳥美様。公の場では呼びませんからね。」
「普段は精霊妃でいいので、夜会では呼んでくださいな。仲良しアピールです。」
そうして城に帰っていった殿下方。これが、第一回作戦会議の閉幕。
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