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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
65.張り巡らされた小さな罠
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「ひとまず、場所を移動しませんかな?話をさせていただきたい。」
こちらの予想通り、王城に入るよう勧めた国王ガストロ=ライミリ。
王族としては取り繕いが下手な方だが、腹芸が出来ないわけではない。
「そうですね、こんな殺伐としたところで話をするべきではないでしょう。一心、フォルじい、ダーネス来て。ラトネスはこの国にいる上級精霊の子、一緒に連れてきて合流ね。」
「「「「了解しました。」」」」
ラトネスが消えダーネスとフォルじいは後ろに控える。
「……………。」
無言で出されたカリストロ殿下の手をスルーして、一心にエスコートされ移動する。
(エスコート相手=婚約者候補なのは知っていますからね!のりませんよ。)
内心ケタケタ笑いながら王城を移動すれば、好奇心や私欲、嫉妬を多分に含んだ視線を向けられる。まあ、当然と言えば当然だろう。
狙いはもちろん、精霊妃の婚約者の座。どうせ、精霊妃を篭絡して精霊を自由に使おうと考えているのだろう。実にくだらない。
そして精霊妃を操り人形にしたい者たちが狙うのは、エスコートをしている一心。
「……全員潰しますか?」
「やめておこう。面倒な上、こちらの利が少ないからね。」
「情報収集は?」
「すでにいくつか盗聴器を仕掛けておいたから大丈夫。」
相手に聞こえないくらいの小声で話す。
そうこうしているうちに着いた部屋は、貴賓を迎え入れる客間。
部屋の扉を守る護衛の敵意をしっかり確認した後、部屋の中に入る。
中には白い大きな机と白い椅子が用意されており、一心が引いた椅子に座る。
レイピストが引いた椅子はしっかりスルーする。これ結構大事。
(地味だけど婚約者候補にしたい考えがしっかり漏れ出てるな。)
それに、一心が引いた椅子は毒がないことの証明だ。安心して座り、向かいに座った王族二人と宰相に向き直る。
目の前にガストロ陛下、その隣にカリストロ殿下が座っている。陛下の右後ろに宰相、殿下の左後ろに騎士団長がいる。
「それでは、今こちらで確認している情報の共有に入らせていただきます。」
「一人足りぬようですけれど……?」
ラトネスは先ほど上級精霊と共に来たのでいいとして、餌こと客がいない。
「ああ、ヤドゥールの事でしょうか。」
「ええ、青の騎士団長として、事態の把握が必要なのではないでしょうか。」
ていうか、殿下に恩を売りたいのでさっさと来てくれないかな?殿下へ恩を売ってもらう為の黒魔石、彼が持ってるんだよね。
「………今報告が入りました。ヤドゥールがこちらに来るそうです。」
「では、もう少し待つとしましょうか。二度手間になるのは面倒でしょう?」
机の上にある紅茶とお菓子に手を付ける。お菓子はシュークリーム。
カリストロ殿下が不思議そうに眺めているので、レシピを見て再現できてそれほど経っていないのだろう。
貴族の中では菓子を用意した人物が毒見することが常識なのだが、それすらしないという事は見下されていると考えてもいいだろう。
(それか、異世界人だから見下されているのか。)
精霊妃だという事を分かってこの対応なら、この国を荒野に戻しても良かったかもしれないね!
紅茶を飲んだ時に、ノックが鳴り響き餌…ゲフンゲフン。ヤドゥール=ガディアが到着したことを知らせた。
「遅れてしまい申し訳ありません、陛下、殿下。」
「いや、こちらが呼んだのだ。休暇中済まない。」
「滅相もございません。しかしご無事で何よりでございました。こちらに来る途中、王城に不審者が侵入したという情報を得ましたので……。」
「ああそれ私ですので、大丈夫かと思います。」
ギョッとこちらを見て、私の後ろをそろーっと見た後固まった。
「……!?」
混乱するのも無理はない。まあ、知らんけど。
「全員そろったようですね。では宰相殿、情報共有を始めてください。」
「…はっ!ではまず、全員の紹介をさせていただきます。異世界から来られた精霊妃、小鳥美様。その側近、一心殿。光の精霊王、名をラトネス様。闇の精霊王、名をダーネス様。樹の精霊王、名をリーンフォル様。」
にこりと社交笑顔を浮かべて、説明を待つ。
「失礼、補足をよろしいでしょうか。」
一心が続けて紹介をしようとする宰相を遮り、言う。
「精霊王達は精霊妃である小鳥美様以外に名を呼ばれることを非常に嫌っておられます。ご承知おきください。」
チラリと私と精霊王たちの様子を見た後、王族二人が小さくうなずいた。
「では続きまして、我が国ライミリ精霊信仰国国王、ガストロ=ライミリ陛下。同じくライミリ精霊信仰国王太子、カリストロ=ライミリ殿下。赤の騎士団団長、レイピスト=セルバ。青の騎士団団長、ヤドゥール=ガディア。最後に、進行を務めますマフィックス=ガディアと申します。」
一礼をして、この会合が非公式であること、また発言の許可を得る必要がない事を伝えたのち、始まった。
(さて、この会合に何人突撃してくるかな?)
こちらの予想通り、王城に入るよう勧めた国王ガストロ=ライミリ。
王族としては取り繕いが下手な方だが、腹芸が出来ないわけではない。
「そうですね、こんな殺伐としたところで話をするべきではないでしょう。一心、フォルじい、ダーネス来て。ラトネスはこの国にいる上級精霊の子、一緒に連れてきて合流ね。」
「「「「了解しました。」」」」
ラトネスが消えダーネスとフォルじいは後ろに控える。
「……………。」
無言で出されたカリストロ殿下の手をスルーして、一心にエスコートされ移動する。
(エスコート相手=婚約者候補なのは知っていますからね!のりませんよ。)
内心ケタケタ笑いながら王城を移動すれば、好奇心や私欲、嫉妬を多分に含んだ視線を向けられる。まあ、当然と言えば当然だろう。
狙いはもちろん、精霊妃の婚約者の座。どうせ、精霊妃を篭絡して精霊を自由に使おうと考えているのだろう。実にくだらない。
そして精霊妃を操り人形にしたい者たちが狙うのは、エスコートをしている一心。
「……全員潰しますか?」
「やめておこう。面倒な上、こちらの利が少ないからね。」
「情報収集は?」
「すでにいくつか盗聴器を仕掛けておいたから大丈夫。」
相手に聞こえないくらいの小声で話す。
そうこうしているうちに着いた部屋は、貴賓を迎え入れる客間。
部屋の扉を守る護衛の敵意をしっかり確認した後、部屋の中に入る。
中には白い大きな机と白い椅子が用意されており、一心が引いた椅子に座る。
レイピストが引いた椅子はしっかりスルーする。これ結構大事。
(地味だけど婚約者候補にしたい考えがしっかり漏れ出てるな。)
それに、一心が引いた椅子は毒がないことの証明だ。安心して座り、向かいに座った王族二人と宰相に向き直る。
目の前にガストロ陛下、その隣にカリストロ殿下が座っている。陛下の右後ろに宰相、殿下の左後ろに騎士団長がいる。
「それでは、今こちらで確認している情報の共有に入らせていただきます。」
「一人足りぬようですけれど……?」
ラトネスは先ほど上級精霊と共に来たのでいいとして、餌こと客がいない。
「ああ、ヤドゥールの事でしょうか。」
「ええ、青の騎士団長として、事態の把握が必要なのではないでしょうか。」
ていうか、殿下に恩を売りたいのでさっさと来てくれないかな?殿下へ恩を売ってもらう為の黒魔石、彼が持ってるんだよね。
「………今報告が入りました。ヤドゥールがこちらに来るそうです。」
「では、もう少し待つとしましょうか。二度手間になるのは面倒でしょう?」
机の上にある紅茶とお菓子に手を付ける。お菓子はシュークリーム。
カリストロ殿下が不思議そうに眺めているので、レシピを見て再現できてそれほど経っていないのだろう。
貴族の中では菓子を用意した人物が毒見することが常識なのだが、それすらしないという事は見下されていると考えてもいいだろう。
(それか、異世界人だから見下されているのか。)
精霊妃だという事を分かってこの対応なら、この国を荒野に戻しても良かったかもしれないね!
紅茶を飲んだ時に、ノックが鳴り響き餌…ゲフンゲフン。ヤドゥール=ガディアが到着したことを知らせた。
「遅れてしまい申し訳ありません、陛下、殿下。」
「いや、こちらが呼んだのだ。休暇中済まない。」
「滅相もございません。しかしご無事で何よりでございました。こちらに来る途中、王城に不審者が侵入したという情報を得ましたので……。」
「ああそれ私ですので、大丈夫かと思います。」
ギョッとこちらを見て、私の後ろをそろーっと見た後固まった。
「……!?」
混乱するのも無理はない。まあ、知らんけど。
「全員そろったようですね。では宰相殿、情報共有を始めてください。」
「…はっ!ではまず、全員の紹介をさせていただきます。異世界から来られた精霊妃、小鳥美様。その側近、一心殿。光の精霊王、名をラトネス様。闇の精霊王、名をダーネス様。樹の精霊王、名をリーンフォル様。」
にこりと社交笑顔を浮かべて、説明を待つ。
「失礼、補足をよろしいでしょうか。」
一心が続けて紹介をしようとする宰相を遮り、言う。
「精霊王達は精霊妃である小鳥美様以外に名を呼ばれることを非常に嫌っておられます。ご承知おきください。」
チラリと私と精霊王たちの様子を見た後、王族二人が小さくうなずいた。
「では続きまして、我が国ライミリ精霊信仰国国王、ガストロ=ライミリ陛下。同じくライミリ精霊信仰国王太子、カリストロ=ライミリ殿下。赤の騎士団団長、レイピスト=セルバ。青の騎士団団長、ヤドゥール=ガディア。最後に、進行を務めますマフィックス=ガディアと申します。」
一礼をして、この会合が非公式であること、また発言の許可を得る必要がない事を伝えたのち、始まった。
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