異世界情報収集生活

スカーレット

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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

64.事態の収拾 一心視点

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(………………………………。)

地上に出た瞬間顔の前に投げられた服を受け止め、水を含んだ物特有の感触に眉をひそめる。

「まったく、死者を出すと後が大変なのですがねぇ?」

ポイポイと投げられる洋服や誰かの指だったものを受け止め、倉庫に入れる。

「もとより処刑並みの不正をしていた奴しか殺してないよ。他は気絶させただけ。」

「それでも、ですよ。まったく、死体の処理は私が行うのですから、せめて綺麗に切ってくださいよ。そうすれば実験にも回せますから。どうせになる必要でしょう?」

「そ、それよりも、ニア!ニア大丈夫だった?」

わざとらしく話をそらした後、呼び出した一番の理由であろうことを聞くマスター。

「ニアは今、修復中です。終了予定時刻は不明となっています。」

「……そう、ニアは今修復を。」

「はい。ですが部品が足りないため今現在で完全修復は不可能です。足りない部品は盗られた部品と人工血液、人工皮膚です。」

「人工皮膚とかは私が渡すとして、盗られた部品の場所は分かる?」

「いいえ。判明しているのは、この王城の中である事のみです。」

「そう。じゃあ、このあたり壊せばわかるかな?」

マスターの向こう側にいる者たちが、ギョッと顔色を変えたのが分かる。着ている洋服や騎士団長であるレイピスト=セルバが控えていることから彼らは王族なのだろう。

しかし、そんなことはどうでもいい。現在の最優先は、ニアの部品だ。

「お待ちください。もうじき騎士団長であるヤドゥールが戻ります。そうすれば騎士団長の権限を使い、破壊しなくてもニア様の部品を探せるでしょう。」

ゆったりと狂気を滲ませてマスターが言う。

「それまで待てと?」

もはや国を荒野にするまでおさまらないだろう狂気に、理解する。

(これ以上のマスターへの精神負荷は、フラッシュ状態になりかねない。一度、意識を他へ移す必要がありますね。)

はぁ――と大きく溜息を吐き、倉庫から巨大なハリセンを取り出す。

日々の恨みをのせたハリセンは、スパーンといい音を立ててマスターの頭に当たる。

「いったぁ!なにするのさ一心!せっかくストレス発散してたってのに!」

「うるさいですよ馬鹿マスター。さっさと部品取り戻して帰りますよ。」

「そりゃそうですけどねぇ…?」

予定通りに狂気を霧散させたようなので、どうでもいい王族たちを一瞥する。

「一心め身体強化して叩いたろ痛いなこんちくしょー!」

小声で叫ばれた言葉を聞かなかったことにして、お茶の下準備を始める。

先ほど聞いた足音を思い出し、もう一つカップを用意しておこう。

堂々とこの場に机を出して予想を立てていく。

出来ればここでお茶にしたいが、引き留めたい王族は許可しないだろう。

精霊王達は手出し無用と言っておいたためか、やったことはマスターの服を緑のドレスに着替えさせたことくらいだ。正直、この方が都合がいい。

(ふむ、黙ってもらった方が楽ですね。今後の参考にしましょう。)

正義だの常識だと言うよりも黙って従う方が、理解していない今の状態ではマスターの利になる。
それに、こちらも動かしやすい。

しかし、ニアが動けないとなると他の仕事が進まない。情報収集が強みとなっている私達が情報収集を辞めてしまえば、こちらの世界で収入を得られなくなる。

(情報を売れなければ、ただの危険人物になってしまう。元の世界と同じように殺し屋として働ければまだしも、その伝手すらない。)

結局、分かり切っていた手段を取るしかないことに諦めの息をついて、暴走癖のある主と眠る妹を思う。

(……………さて、どうなることやら。ま、どうなっても私が行うことは一つです。)

この機械は、マスターのために作られうまれたのですから。


※フラッシュ状態とは
本来はパソコンなどが異常状態の時に使う言葉
この作品では辛い過去を思い出し、辛い過去の出来事が今起こっているように錯覚してしまう事。
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