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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
63.交わらない考え
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気配で気づいたラトネスに、話しかける。
(まぁ、予想はできますがね。ライミリには彼の眷属である上級精霊がいるようですし。)
おとなしく姿を現したラトネスの方を向き、言葉を待つ。
「……これを気づきますか?つくづく、君と姫とニア嬢は普通じゃありませんね。」
「ご用件を。」
「では簡潔に。ライミリ精霊信仰国を滅ぼすのをやめて欲しいのです。その名の通り、あの国は精霊を信仰しています。姫の役に立つと思いますよ?」
予想通り過ぎて呆れがこみ上げる。真剣に答える気をなくし、ニアの血で汚れた手袋を取り替えながら答える。
「私に言ったのは、マスターに言ってもどうしようもないと考えたからでしょう?私はマスターのために生まれ、動きます。全てはマスターのお心ひとつですよ。」
こちらからは見えないが、ラトネスの目が厳しくなるのが分かる。
「関与する気は無い、と?」
「マスターが望めば私は国を滅ぼしますし、マスターが望めば私は国を守り導きましょう。」
さもどうでもよさそうに手を振れば、ラトネスは静かに怒り始めた。
「……君は、国が滅ぶことで苦しむ人間を思って心を痛めないのですか?国を亡ぼすことで、他国からの姫の評価が下がり、幾人も死ぬことになるでしょう。」
――姫の心が傷つく事を、容認するのですか?――
人の心に棘を差し込むように、ゆっくりと話すラトネス。
予想通りで面白みも何もない言葉。正直どうでもいいが、マスターが動くときに邪魔をされては困る。
はぁ。とため息を吐き出して、ラトネスに向き直る。
「それが何か?」
真顔でさもそれが当たり前の様に答えれば、予想していなかったのか呆気に取られていた。
それをいいことに続けて言う。
「マスターは情報屋としての評価を既に得ています。精霊妃として動かなくとも生活費を稼ぐことが可能です。また、マスターは精霊妃としての地位に興味が全くありません。『精霊妃、小鳥美』の評価が下がったからと言って『情報屋、千利』の評価は下がりません。…………まだ、問題が?」
「…………、……。」
ハクハクと口を動かして、何も言わないでいる光の精霊王、ラトネス。
(ああ、これだから嫌です。馬鹿の相手をするのは。)
彼は、彼らは根本的なことをわかっていない。
我が主千利であり精霊妃小鳥美でもある者が、すでに血みどろの狂人だという事を理解できていないのだろう。
人を一人殺すごとに手から血が溢れるのであれば、マスターは両手を上にあげ零れ落ちる血を「性格は酷いのに、血は綺麗なんだね。」と不思議そうに言う人間なのだ。
(そもそもマスターは、いまさら人を殺したところで苦しみはしないですしね。)
マスターの主が死んだ日から、マスターは綺麗に狂った。
そして、それを支え仕え続ける私も、狂っている。私とマスターに作られたニアは、言わずもがなだろう。
「………人間が行う行動として、おかしいとは思えませんか?」
「思えませんね。そもそも私達は人を殺すことを仕事としていました。今更、ですよ。」
「それでも……!」
「私はマスターにお仕えし、マスターのために行動をします。それ以上も、それ以下の行動をしません。」
なおも言葉を尽くして説得に挑むラトネスを無視して、マスターと通信をする。
「一心、早めに来てくれる?馬鹿が馬鹿してうざい。」
「はぁ、了解です。面倒なので、荒野にするのは王城に留めてくださいね。」
「了解、王城新しくしておくよ。」
マスターに呼ばれたので移動をしつつ、ふと思う。
(なぜ国を亡ぼすことが、国を解体して地図から消すことになるのでしょうか。)
国を亡ぼす=国全体を掌握し、国王さえ安易に手出しできないようにするであり、国を消す=攻撃して、荒野に戻すなのだが……?
(いったい何を勘違いしているのでしょうか。国を消したら面倒くさい事この上ないのですが。)
漠然としたおかしな気持ちを持ちながら、表情を変えてマスターの後ろに控えた。
(まぁ、予想はできますがね。ライミリには彼の眷属である上級精霊がいるようですし。)
おとなしく姿を現したラトネスの方を向き、言葉を待つ。
「……これを気づきますか?つくづく、君と姫とニア嬢は普通じゃありませんね。」
「ご用件を。」
「では簡潔に。ライミリ精霊信仰国を滅ぼすのをやめて欲しいのです。その名の通り、あの国は精霊を信仰しています。姫の役に立つと思いますよ?」
予想通り過ぎて呆れがこみ上げる。真剣に答える気をなくし、ニアの血で汚れた手袋を取り替えながら答える。
「私に言ったのは、マスターに言ってもどうしようもないと考えたからでしょう?私はマスターのために生まれ、動きます。全てはマスターのお心ひとつですよ。」
こちらからは見えないが、ラトネスの目が厳しくなるのが分かる。
「関与する気は無い、と?」
「マスターが望めば私は国を滅ぼしますし、マスターが望めば私は国を守り導きましょう。」
さもどうでもよさそうに手を振れば、ラトネスは静かに怒り始めた。
「……君は、国が滅ぶことで苦しむ人間を思って心を痛めないのですか?国を亡ぼすことで、他国からの姫の評価が下がり、幾人も死ぬことになるでしょう。」
――姫の心が傷つく事を、容認するのですか?――
人の心に棘を差し込むように、ゆっくりと話すラトネス。
予想通りで面白みも何もない言葉。正直どうでもいいが、マスターが動くときに邪魔をされては困る。
はぁ。とため息を吐き出して、ラトネスに向き直る。
「それが何か?」
真顔でさもそれが当たり前の様に答えれば、予想していなかったのか呆気に取られていた。
それをいいことに続けて言う。
「マスターは情報屋としての評価を既に得ています。精霊妃として動かなくとも生活費を稼ぐことが可能です。また、マスターは精霊妃としての地位に興味が全くありません。『精霊妃、小鳥美』の評価が下がったからと言って『情報屋、千利』の評価は下がりません。…………まだ、問題が?」
「…………、……。」
ハクハクと口を動かして、何も言わないでいる光の精霊王、ラトネス。
(ああ、これだから嫌です。馬鹿の相手をするのは。)
彼は、彼らは根本的なことをわかっていない。
我が主千利であり精霊妃小鳥美でもある者が、すでに血みどろの狂人だという事を理解できていないのだろう。
人を一人殺すごとに手から血が溢れるのであれば、マスターは両手を上にあげ零れ落ちる血を「性格は酷いのに、血は綺麗なんだね。」と不思議そうに言う人間なのだ。
(そもそもマスターは、いまさら人を殺したところで苦しみはしないですしね。)
マスターの主が死んだ日から、マスターは綺麗に狂った。
そして、それを支え仕え続ける私も、狂っている。私とマスターに作られたニアは、言わずもがなだろう。
「………人間が行う行動として、おかしいとは思えませんか?」
「思えませんね。そもそも私達は人を殺すことを仕事としていました。今更、ですよ。」
「それでも……!」
「私はマスターにお仕えし、マスターのために行動をします。それ以上も、それ以下の行動をしません。」
なおも言葉を尽くして説得に挑むラトネスを無視して、マスターと通信をする。
「一心、早めに来てくれる?馬鹿が馬鹿してうざい。」
「はぁ、了解です。面倒なので、荒野にするのは王城に留めてくださいね。」
「了解、王城新しくしておくよ。」
マスターに呼ばれたので移動をしつつ、ふと思う。
(なぜ国を亡ぼすことが、国を解体して地図から消すことになるのでしょうか。)
国を亡ぼす=国全体を掌握し、国王さえ安易に手出しできないようにするであり、国を消す=攻撃して、荒野に戻すなのだが……?
(いったい何を勘違いしているのでしょうか。国を消したら面倒くさい事この上ないのですが。)
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