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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
60. 爆弾と赤の災難3 レイピスト視点
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「………?聞こえなかった?理解したくなかった?ニアの部品は、どこ?」
アリを笑顔で殺す子供の様な顔で、言い放つ精霊妃様。
震えてしまいそうになる足に力を込めて、殿下を守れる位置に移動ながら声を出す。
「ニア様を害した者の責任者は、この場に居りません。責任者は―」
「青の騎士団団長、ヤドゥール=ガディアだろう?彼には申し訳ないことをした。予定をこちらの都合で捻じ曲げてしまったからね。ああ、カリストロ殿下。お詫びとして彼にこれを。毒物検査後、渡してくれ。」
「っ!……ご存じでしたか。」
遮られて続けられた言葉は、友人の名前。
「情報収集が趣味でね。」
こちらの驚愕の顔を見てか、笑顔で答えられたがそこではない。
ヤドゥールは諜報員も兼ねているため、情報は機密事項として守られている。
そうやすやすと分かる事ではない。
そして殿下に投げ渡された物は、こぶし一つ分の大きさをした黒い石。
ヒュッと殿下が喉を鳴らした。
「カリストロ、どうした。」
小声で陛下が気遣っておられる。一方で殿下も珍しく動揺しているようだ。
「陛下、これは黒精霊石です。」
精霊石!では、精霊妃様は精霊石を投げられた!?
「こっ!これが、………確かに。」
「…っ?!精霊石を投げるなど…。ああいえ、失礼しました。」
さすがの事態に陛下も宰相も動揺を隠せないらしい。
「そんなことより!分解されたニアの部品と可愛い娘を分解してくれた馬鹿はどこ?!」
しかし、そんなことを傍観してしまうほどこちらも状況が緊迫している。
私が団長を務める赤の騎士団は、剣による実践訓練を主にしている。
つまり、そこらの剣士では相手にならないほど強い。
しかし、この状況はどうだ?
「落ち着いてください、精霊妃様!」
「侵入者を捕らえよ!」
「早く、早く始末してしまえっ!」
精霊妃だと分かって宥めようとするもの、分かっていて始末しようとするもの、分かっていないで捕らえようとするもの。
そんな者達がごった返して動いている中、精霊妃様は器用に精霊妃だと分かって害する者のみを『人形』に変えている。
……他の者は精霊妃様の良心を信じることによう。
「殿下、しばしこの場を離れても?」
部下を三人ほど呼び寄せ、殿下に問う。
「………気を付けるんだよ。」
精霊妃様を落ち着かせるため、切りかかる。
「なに?わざわざ手、空けたのならニアの部品の一つでも持ってきたらぁ?!」
あからさまに嫌そうな声を出して、凄まじい一撃を放つ精霊妃様
「我々はニア様の部品の形すら存じ上げません!せめてお教えください!」
何故か精霊王達が止めない中、強めに切り伏せて、水魔法を浴びせる。
「………頭は冷えましたでしょうか、精霊妃様。ご無礼を、お許しください。」
「冷えたよ、処分とかに興味は無いから安心して。」
水が滴っている状態から樹の精霊王により緑のドレスに着替えられ、呟いた。
「一心。」
「ここに。」
精霊妃様の後ろの影から、黒い燕尾を着た男が現れた。
精霊妃様がニアと呼ばれる魔術具の状態を聞いている事から、側近なのだろうが…。
「……そう、ニアは今修復を。」
「はい。ですが部品が足りずに完全修復は不可能です。足りない部品は盗られた部品と人工血液、人工皮膚です。」
「盗られた部品の場所は分かる?」
「いいえ。判明しているのは、この王城の中にある事のみです。」
「そう。じゃあ、このあたり壊せばわかるかな?」
ギョッとした私達の中で、真っ先に声を上げたのは陛下だった。
「お待ちください。もうじき騎士団長であるヤドゥールが戻ります。そうすれば騎士団長の権限を使い、破壊しなくてもニア様の部品を探せるでしょう。」
狂気を滲ませた目を陛下に向けた精霊妃様が、ゆったりと言う。
「それまで待てと?」
陛下に向けられた殺意そのままに殺されそうになる空気の中、燕尾の男の大きなため息と同時にスパーンと小気味いい音が聞こえた。
「いったぁ!なにするのさ一心!せっかくストレス発散してたってのに!」
「うるさいですよ馬鹿マスター。さっさと部品取り戻して帰りますよ。このような場所にいる価値もありません。」
「そりゃそうですけどねぇ…?」
従者が主を殴っ?!いや、それ以上に精霊妃ですよねその人?!
「誰か、私たちのこの状況を説明してくれませんかね?」
「……レイピストの意見に賛成するよ。」
疲れた息が、皆から吐き出された。
アリを笑顔で殺す子供の様な顔で、言い放つ精霊妃様。
震えてしまいそうになる足に力を込めて、殿下を守れる位置に移動ながら声を出す。
「ニア様を害した者の責任者は、この場に居りません。責任者は―」
「青の騎士団団長、ヤドゥール=ガディアだろう?彼には申し訳ないことをした。予定をこちらの都合で捻じ曲げてしまったからね。ああ、カリストロ殿下。お詫びとして彼にこれを。毒物検査後、渡してくれ。」
「っ!……ご存じでしたか。」
遮られて続けられた言葉は、友人の名前。
「情報収集が趣味でね。」
こちらの驚愕の顔を見てか、笑顔で答えられたがそこではない。
ヤドゥールは諜報員も兼ねているため、情報は機密事項として守られている。
そうやすやすと分かる事ではない。
そして殿下に投げ渡された物は、こぶし一つ分の大きさをした黒い石。
ヒュッと殿下が喉を鳴らした。
「カリストロ、どうした。」
小声で陛下が気遣っておられる。一方で殿下も珍しく動揺しているようだ。
「陛下、これは黒精霊石です。」
精霊石!では、精霊妃様は精霊石を投げられた!?
「こっ!これが、………確かに。」
「…っ?!精霊石を投げるなど…。ああいえ、失礼しました。」
さすがの事態に陛下も宰相も動揺を隠せないらしい。
「そんなことより!分解されたニアの部品と可愛い娘を分解してくれた馬鹿はどこ?!」
しかし、そんなことを傍観してしまうほどこちらも状況が緊迫している。
私が団長を務める赤の騎士団は、剣による実践訓練を主にしている。
つまり、そこらの剣士では相手にならないほど強い。
しかし、この状況はどうだ?
「落ち着いてください、精霊妃様!」
「侵入者を捕らえよ!」
「早く、早く始末してしまえっ!」
精霊妃だと分かって宥めようとするもの、分かっていて始末しようとするもの、分かっていないで捕らえようとするもの。
そんな者達がごった返して動いている中、精霊妃様は器用に精霊妃だと分かって害する者のみを『人形』に変えている。
……他の者は精霊妃様の良心を信じることによう。
「殿下、しばしこの場を離れても?」
部下を三人ほど呼び寄せ、殿下に問う。
「………気を付けるんだよ。」
精霊妃様を落ち着かせるため、切りかかる。
「なに?わざわざ手、空けたのならニアの部品の一つでも持ってきたらぁ?!」
あからさまに嫌そうな声を出して、凄まじい一撃を放つ精霊妃様
「我々はニア様の部品の形すら存じ上げません!せめてお教えください!」
何故か精霊王達が止めない中、強めに切り伏せて、水魔法を浴びせる。
「………頭は冷えましたでしょうか、精霊妃様。ご無礼を、お許しください。」
「冷えたよ、処分とかに興味は無いから安心して。」
水が滴っている状態から樹の精霊王により緑のドレスに着替えられ、呟いた。
「一心。」
「ここに。」
精霊妃様の後ろの影から、黒い燕尾を着た男が現れた。
精霊妃様がニアと呼ばれる魔術具の状態を聞いている事から、側近なのだろうが…。
「……そう、ニアは今修復を。」
「はい。ですが部品が足りずに完全修復は不可能です。足りない部品は盗られた部品と人工血液、人工皮膚です。」
「盗られた部品の場所は分かる?」
「いいえ。判明しているのは、この王城の中にある事のみです。」
「そう。じゃあ、このあたり壊せばわかるかな?」
ギョッとした私達の中で、真っ先に声を上げたのは陛下だった。
「お待ちください。もうじき騎士団長であるヤドゥールが戻ります。そうすれば騎士団長の権限を使い、破壊しなくてもニア様の部品を探せるでしょう。」
狂気を滲ませた目を陛下に向けた精霊妃様が、ゆったりと言う。
「それまで待てと?」
陛下に向けられた殺意そのままに殺されそうになる空気の中、燕尾の男の大きなため息と同時にスパーンと小気味いい音が聞こえた。
「いったぁ!なにするのさ一心!せっかくストレス発散してたってのに!」
「うるさいですよ馬鹿マスター。さっさと部品取り戻して帰りますよ。このような場所にいる価値もありません。」
「そりゃそうですけどねぇ…?」
従者が主を殴っ?!いや、それ以上に精霊妃ですよねその人?!
「誰か、私たちのこの状況を説明してくれませんかね?」
「……レイピストの意見に賛成するよ。」
疲れた息が、皆から吐き出された。
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