異世界情報収集生活

スカーレット

文字の大きさ
上 下
76 / 204
ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)

57.私が報告するのですが…… 一心視点

しおりを挟む

マスターとは別行動で、情報を集める。

人工知能だからこその聴力と視力で様々なものを見聞きして、完璧に記録する。それが私の仕事であり、私なりの情報収集法だ。

私がいるのはライミリ国の城の一角、王太子が眠る部屋の天井裏。
ここにくるまでに、様々な噂を聞いてきた。

「いつ爆発するかわからない殿下より、新たなお子を産んでもらわねば。」

「新たな子が生まれれば、陛下の溺愛もそちらに移るだろう。」

「王太子と言え所詮爆弾。教育の必要など必要ないだろう?それに誰が教師なんぞ引き受けるんだ。」

溺愛している国王が聞けば、不敬罪に当たる噂。
王太子を、いや、王族を見下していることは言うまでもないでしょう。

マスターに聞いた限りでは、魔力過多症は生まれつき。
(生まれた時から聞いているのであれば、性格は臆病かつ自己嫌悪になることが予想されますね。)

しかし、あくまでも予想。実際の性格はどうなのか。

それはマスターが治療した後でしかわからないでしょう。
そして今現在、私の下の部屋では勉強会が開かれている。

内容は主に、精霊。基本的なことから学んでいることから、最低限しか教えられていないのだろう。
教師は剣を携えている灰色の髪に青い目をした女。

………訂正、身体的特徴から男。

(マスター以外の男装、女装癖持ちはいらないのですが……はぁ。)

ベッドの上に簡易的な机を付け、繰り返し質問をしているのが王太子でしょう。
以前得た外見の情報から予測される人物は……。

女性のような外見をしているのが、レイピスト・セルバ。セルバ公爵家の次男であり、殿下の護衛を基本にしている赤の騎士団の団長も務めている。

ベッドの上にいるのがライミリの王太子、カリストロ・ライミリ。金髪に灰の目を持つ男。頭はキレる様で、今も質問をして理解を深めているようですね。

さてどうにか接触をして、情報屋として信頼して欲しいところではありますが……。

?ニアと連絡を繋げていたのが不自然に途切れましたね。仕方ありません。一度、ニアの居場所に向かいましょう。
現在地は……?町の中央の道を真っ直ぐ?そのまま進んでも王城しかありませんが。

……………何かトラブルが起きているようですね。一度ニアにこちらから通信を入れましょう。
「ニア、状況の報告を。」
「(-・××・--××--××・-・・・・××-・・××・・-・・・・××・-・・××・・-××・・・--・・・××・・・-・・・××・・-・×・・・--・・・・××--・・・××-・××・-・・」ブチッ

他からすれば雑音として流す不快な音の中に込められた、モールス信号と呼ばれる信号を読み解く。
「いまはこうそくされてしろへいく……今は拘束されて城へ行く、ですか。」

どの方向から読み解いても誘拐されたことは確実でしょう。また、ニアが魔術具であることに気付かれている可能性が高い。

「はぁ、まったく。そんなに国を滅ぼしてほしいのですかねえ。マスターに連絡するのは私なのですが。」

この地の守りをしていた光の上級精霊の王であるラトネスを呼び、この地にいる光の上位精霊に状況を伝えてもらう。

「すぐに伝えましょう。」
真っ青な顔をしたラトネスが消え、ダーネスが現れる。

「俺が気に入っている人間に同じことが起こらないよう、警告に行きたい。」
詳しく聞くと、どうやらラトネスが気に入っている人間と、ダーネスが気に入っている人間は友人関係にあるらしい。

光と闇、明るい性格と暗い性格を始めとして、セットとして扱われることはよくあるらしい。
「「よくあることです/だ。」」
とは本人談ですが。

「気に入っている人間を殺されたくなければ、しっかりと警告しておくことを勧めます。我々に容赦なんてものは存在しませんので。」
暗に「特別扱いはしない」と告げれば表情を変えずに言うダーネス。
「わかっている。姫の手は煩わせん。」

それを皮切りに次々と消えてゆく精霊王達。
マスターに連絡を終え、今日の予定を見直す。

「今日は客がいましたね、お帰り頂き……。いえ、情報を渡して行動していただきましょう。ヤドゥール=ガディアとやらが馬鹿でないことを期待して、あとは黒魔石の用意と、来賓用の部屋の準備、菓子、紅茶。」
これぐらい用意しておけばいいでしょう。必要は無いと思いますが。

さて、後はニアが帰ってきてから進めればいいとして、一応ボディ複製と修復場の点検をしてすぐに使えるようにしておきますかね。

まぁ、マスターがいるのでうまくいくとは思いますが。


しばらくして来た紺色赤目の客を相手に、私は誘導を仕掛け始めた。
さて、結果はいかに?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

転生スライム食堂~チートになれなかった僕の普通に激動な人生~

あんずじゃむ
ファンタジー
事故にあった高校生、ショウは気づくと森の中で目を覚ます。 そこが異世界だと気付いたものの、現れない神様、表示されないステータス、使えない魔法。チートどころか説明さえもしてもらえず始まったなんて第二の人生は艱難辛苦。前世で文系一直線だったショウには役立つ知識すらもなく。唯一の武器は価値観の違いか?運よく雇われたボロい食堂を食い扶持の為に必死に支えるリアル転生物語。果たしてショウは平穏な人生を送るのか。今の所ファンタジー恋愛小説の予定です。

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~

一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。 しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。 流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。 その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。 右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。 この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。 数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。 元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。 根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね? そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。 色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。 ……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!

異世界に追放されました。二度目の人生は辺境貴族の長男です。

ファンタスティック小説家
ファンタジー
 科学者・伊介天成(いかい てんせい)はある日、自分の勤める巨大企業『イセカイテック』が、転移装置開発プロジェクトの遅延を世間にたいして隠蔽していたことを知る。モルモットですら実験をしてないのに「有人転移成功!」とうそぶいていたのだ。急進的にすすむ異世界開発事業において、優位性を保つために、『イセカイテック』は計画を無理に進めようとしていた。たとえ、試験段階の転移装置にいきなり人間を乗せようとも──。  実験の無謀さを指摘した伊介天成は『イセカイテック』に邪魔者とみなされ、転移装置の実験という名目でこの世界から追放されてしまう。  無茶すぎる転移をさせられ死を覚悟する伊介天成。だが、次に目が覚めた時──彼は剣と魔法の異世界に転生していた。  辺境貴族アルドレア家の長男アーカムとして生まれかわった伊介天成は、異世界での二度目の人生をゼロからスタートさせる。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。 日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。 あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの? ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。 感想などお待ちしております。

処理中です...