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ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
57.私が報告するのですが…… 一心視点
しおりを挟むマスターとは別行動で、情報を集める。
人工知能だからこその聴力と視力で様々なものを見聞きして、完璧に記録する。それが私の仕事であり、私なりの情報収集法だ。
私がいるのはライミリ国の城の一角、王太子が眠る部屋の天井裏。
ここにくるまでに、様々な噂を聞いてきた。
「いつ爆発するかわからない殿下より、新たなお子を産んでもらわねば。」
「新たな子が生まれれば、陛下の溺愛もそちらに移るだろう。」
「王太子と言え所詮爆弾。教育の必要など必要ないだろう?それに誰が教師なんぞ引き受けるんだ。」
溺愛している国王が聞けば、不敬罪に当たる噂。
王太子を、いや、王族を見下していることは言うまでもないでしょう。
マスターに聞いた限りでは、魔力過多症は生まれつき。
(生まれた時から聞いているのであれば、性格は臆病かつ自己嫌悪になることが予想されますね。)
しかし、あくまでも予想。実際の性格はどうなのか。
それはマスターが治療した後でしかわからないでしょう。
そして今現在、私の下の部屋では勉強会が開かれている。
内容は主に、精霊。基本的なことから学んでいることから、最低限しか教えられていないのだろう。
教師は剣を携えている灰色の髪に青い目をした女。
………訂正、身体的特徴から男。
(マスター以外の男装、女装癖持ちはいらないのですが……はぁ。)
ベッドの上に簡易的な机を付け、繰り返し質問をしているのが王太子でしょう。
以前得た外見の情報から予測される人物は……。
女性のような外見をしているのが、レイピスト・セルバ。セルバ公爵家の次男であり、殿下の護衛を基本にしている赤の騎士団の団長も務めている。
ベッドの上にいるのがライミリの王太子、カリストロ・ライミリ。金髪に灰の目を持つ男。頭はキレる様で、今も質問をして理解を深めているようですね。
さてどうにか接触をして、情報屋として信頼して欲しいところではありますが……。
?ニアと連絡を繋げていたのが不自然に途切れましたね。仕方ありません。一度、ニアの居場所に向かいましょう。
現在地は……?町の中央の道を真っ直ぐ?そのまま進んでも王城しかありませんが。
……………何かトラブルが起きているようですね。一度ニアにこちらから通信を入れましょう。
「ニア、状況の報告を。」
「(-・××・--××--××・-・・・・××-・・××・・-・・・・××・-・・××・・-××・・・--・・・××・・・-・・・××・・-・×・・・--・・・・××--・・・××-・××・-・・」ブチッ
他からすれば雑音として流す不快な音の中に込められた、モールス信号と呼ばれる信号を読み解く。
「いまはこうそくされてしろへいく……今は拘束されて城へ行く、ですか。」
どの方向から読み解いても誘拐されたことは確実でしょう。また、ニアが魔術具であることに気付かれている可能性が高い。
「はぁ、まったく。そんなに国を滅ぼしてほしいのですかねえ。マスターに連絡するのは私なのですが。」
この地の守りをしていた光の上級精霊の王であるラトネスを呼び、この地にいる光の上位精霊に状況を伝えてもらう。
「すぐに伝えましょう。」
真っ青な顔をしたラトネスが消え、ダーネスが現れる。
「俺が気に入っている人間に同じことが起こらないよう、警告に行きたい。」
詳しく聞くと、どうやらラトネスが気に入っている人間と、ダーネスが気に入っている人間は友人関係にあるらしい。
光と闇、明るい性格と暗い性格を始めとして、セットとして扱われることはよくあるらしい。
「「よくあることです/だ。」」
とは本人談ですが。
「気に入っている人間を殺されたくなければ、しっかりと警告しておくことを勧めます。我々に容赦なんてものは存在しませんので。」
暗に「特別扱いはしない」と告げれば表情を変えずに言うダーネス。
「わかっている。姫の手は煩わせん。」
それを皮切りに次々と消えてゆく精霊王達。
マスターに連絡を終え、今日の予定を見直す。
「今日は客がいましたね、お帰り頂き……。いえ、情報を渡して行動していただきましょう。ヤドゥール=ガディアとやらが馬鹿でないことを期待して、あとは黒魔石の用意と、来賓用の部屋の準備、菓子、紅茶。」
これぐらい用意しておけばいいでしょう。必要は無いと思いますが。
さて、後はニアが帰ってきてから進めればいいとして、一応ボディ複製と修復場の点検をしてすぐに使えるようにしておきますかね。
まぁ、マスターがいるのでうまくいくとは思いますが。
しばらくして来た紺色赤目の客を相手に、私は誘導を仕掛け始めた。
さて、結果はいかに?
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