76 / 205
ライミリ精霊信仰国編(ライミリ編)
57.私が報告するのですが…… 一心視点
しおりを挟むマスターとは別行動で、情報を集める。
人工知能だからこその聴力と視力で様々なものを見聞きして、完璧に記録する。それが私の仕事であり、私なりの情報収集法だ。
私がいるのはライミリ国の城の一角、王太子が眠る部屋の天井裏。
ここにくるまでに、様々な噂を聞いてきた。
「いつ爆発するかわからない殿下より、新たなお子を産んでもらわねば。」
「新たな子が生まれれば、陛下の溺愛もそちらに移るだろう。」
「王太子と言え所詮爆弾。教育の必要など必要ないだろう?それに誰が教師なんぞ引き受けるんだ。」
溺愛している国王が聞けば、不敬罪に当たる噂。
王太子を、いや、王族を見下していることは言うまでもないでしょう。
マスターに聞いた限りでは、魔力過多症は生まれつき。
(生まれた時から聞いているのであれば、性格は臆病かつ自己嫌悪になることが予想されますね。)
しかし、あくまでも予想。実際の性格はどうなのか。
それはマスターが治療した後でしかわからないでしょう。
そして今現在、私の下の部屋では勉強会が開かれている。
内容は主に、精霊。基本的なことから学んでいることから、最低限しか教えられていないのだろう。
教師は剣を携えている灰色の髪に青い目をした女。
………訂正、身体的特徴から男。
(マスター以外の男装、女装癖持ちはいらないのですが……はぁ。)
ベッドの上に簡易的な机を付け、繰り返し質問をしているのが王太子でしょう。
以前得た外見の情報から予測される人物は……。
女性のような外見をしているのが、レイピスト・セルバ。セルバ公爵家の次男であり、殿下の護衛を基本にしている赤の騎士団の団長も務めている。
ベッドの上にいるのがライミリの王太子、カリストロ・ライミリ。金髪に灰の目を持つ男。頭はキレる様で、今も質問をして理解を深めているようですね。
さてどうにか接触をして、情報屋として信頼して欲しいところではありますが……。
?ニアと連絡を繋げていたのが不自然に途切れましたね。仕方ありません。一度、ニアの居場所に向かいましょう。
現在地は……?町の中央の道を真っ直ぐ?そのまま進んでも王城しかありませんが。
……………何かトラブルが起きているようですね。一度ニアにこちらから通信を入れましょう。
「ニア、状況の報告を。」
「(-・××・--××--××・-・・・・××-・・××・・-・・・・××・-・・××・・-××・・・--・・・××・・・-・・・××・・-・×・・・--・・・・××--・・・××-・××・-・・」ブチッ
他からすれば雑音として流す不快な音の中に込められた、モールス信号と呼ばれる信号を読み解く。
「いまはこうそくされてしろへいく……今は拘束されて城へ行く、ですか。」
どの方向から読み解いても誘拐されたことは確実でしょう。また、ニアが魔術具であることに気付かれている可能性が高い。
「はぁ、まったく。そんなに国を滅ぼしてほしいのですかねえ。マスターに連絡するのは私なのですが。」
この地の守りをしていた光の上級精霊の王であるラトネスを呼び、この地にいる光の上位精霊に状況を伝えてもらう。
「すぐに伝えましょう。」
真っ青な顔をしたラトネスが消え、ダーネスが現れる。
「俺が気に入っている人間に同じことが起こらないよう、警告に行きたい。」
詳しく聞くと、どうやらラトネスが気に入っている人間と、ダーネスが気に入っている人間は友人関係にあるらしい。
光と闇、明るい性格と暗い性格を始めとして、セットとして扱われることはよくあるらしい。
「「よくあることです/だ。」」
とは本人談ですが。
「気に入っている人間を殺されたくなければ、しっかりと警告しておくことを勧めます。我々に容赦なんてものは存在しませんので。」
暗に「特別扱いはしない」と告げれば表情を変えずに言うダーネス。
「わかっている。姫の手は煩わせん。」
それを皮切りに次々と消えてゆく精霊王達。
マスターに連絡を終え、今日の予定を見直す。
「今日は客がいましたね、お帰り頂き……。いえ、情報を渡して行動していただきましょう。ヤドゥール=ガディアとやらが馬鹿でないことを期待して、あとは黒魔石の用意と、来賓用の部屋の準備、菓子、紅茶。」
これぐらい用意しておけばいいでしょう。必要は無いと思いますが。
さて、後はニアが帰ってきてから進めればいいとして、一応ボディ複製と修復場の点検をしてすぐに使えるようにしておきますかね。
まぁ、マスターがいるのでうまくいくとは思いますが。
しばらくして来た紺色赤目の客を相手に、私は誘導を仕掛け始めた。
さて、結果はいかに?
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
スコップ1つで異世界征服
葦元狐雪
ファンタジー
超健康生活を送っているニートの戸賀勇希の元へ、ある日突然赤い手紙が届く。
その中には、誰も知らないゲームが記録されている謎のUSBメモリ。
怪しいと思いながらも、戸賀勇希は夢中でそのゲームをクリアするが、何者かの手によってPCの中に引き込まれてしまい......
※グロテスクにチェックを入れるのを忘れていました。申し訳ありません。
※クズな主人公が試行錯誤しながら現状を打開していく成長もののストーリーです。
※ヒロインが死ぬ? 大丈夫、死にません。
※矛盾点などがないよう配慮しているつもりですが、もしありましたら申し訳ございません。すぐに修正いたします。
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる