異世界情報収集生活

スカーレット

文字の大きさ
上 下
73 / 205
神々編

閑話 舞台裏 3 ニア視点

しおりを挟む

「お初にお目にかかります、最高神様。先に申し上げたいことがございます。」

「!…………?」

「失礼いたします。」

言うやいやな私は、目の前の最高神様にスキルを使いました。

「魔術スキル、リカバリー。」

緑の炭酸水の中に放り込まれたように、緑の泡に包まれる最高神様。

それらは皮膚から入っては出るを繰り返して、透明な泡は緑を濃くしていきます。

すべての泡が緑に染まると、パチンと小気味いい音を立てて消えていきました。


「これは…………?」


その音と同時に、目が覚めた感覚を味わったと予想できる最高神様。

現在必死にご自身の記憶を手繰り寄せているようだ。

困惑しつつも、すぐに戦闘をする気はなさそうな最高神様。

少々安心いたしました。

相手が機械だからと話を聞かないようならば、予定を変更しなければいけませんでしたから。

「改めまして、お初にお目にかかります。異世界人小鳥美に仕えます人工知能です。どうぞ、マスターと同じようにニアとお呼びください。」

「そうかい。ではニア、事実のみをこたえてほしい。私は誰に何をかけられていた?」

「番人と呼ばれる神と英知と呼ばれる神が協力関係を築き、最高神様、ならびにこの世界の神の領域にいるすべての神に何らかの魔術がかけられております。」

「解除の方法は?」

「最高神様にしたように魔術スキル、リカバリーをかけるか、マスターが仮死状態にした後回復をかけるかのどちらかです。」

「君のマスターはどこに?」

「予定時間が過ぎた後、この領域に来られます。」

訝しげに眉をひそめて、しかし信憑性があると思ったのだろう。


「そうかい、わかった。君のマスターはここに来るんだね?」

「はい。」

「君のマスターの計画を話してくれるかい?どうやってここに来るかは知らないけど、君がここにいる以上来ることができるのだろうからね。だから、協力する代わりに、罪人を捕らえることを協力してほしい。」

これは私が判断していいことではないですね。

「マスターにお聞きしますので、少々お待ちください。」

マスターに聞いてみると、


「どうせ少人数は生き残らせるつもりだったから、協力していいよ。ただし、こちらばかりをこき使うような者だったらすぐに言うこと。サクッと殺せるからね。」
とのことだった。


………。それもそうですね。

最高神様の戦闘能力はマスターより下ですし、一心兄上も一緒に来るとのことですので戦闘力に不安はありません。

最高神様に計画を話し、了承を得ました。

と言っても、「気絶させて」は「マスターが言う気絶」ですので実際に生きているかは……。


まぁ、こちらには全く関係のない話です。
一心兄上がマスターを馬鹿にしたものを苦しめないはずがありませんしね。


「では、私はこれで。」

「ああ、またあとでね。」

フッと消えた後人知れず崩れ、自身を抱きしめていた最高神を、私は知りません。



それから私は、一心兄上と戦闘を行いました。

マスターの敵に遠慮はいらないとのことですので、一心兄上と同じように思うがまま戦いました。

と言っても、魔術にて死神スキルを偽装することでしたが。


………しかし手ごたえがありませんね。


マスターに刃向かった者と予想した結果、マスターの半分くらいの戦闘能力を想定していたのですが……。

相手が30人ほどで放った魔術を倍にして返そうとしたのですが、威力が心もとないですね。

死神スキルに見せかけるために黒く魔術を染めると同時に、威力を増加させておきましょう。

…おや、これでも威力が心配ですね。

仕方ありません。収束させて威力を増幅させましょう。

攻撃しても偽の死体を見てなお、こちらに向かってくるマスターの敵。

(忌々しいですね。)

私の姿さえ認識できないこんな者達が、マスターの手を煩わせた、マスターの時間を割くことになった。

死神スキルに見せかけ、敵を殲滅する。

マスターのご命令通りに死体は瀕死の状態で保管している。

(その命令さえなければ切り刻んでやったのですが。最優先はマスターの命令です。)


静かなる怒りを2人で燃やしているとマスターの気配がしました。

怒りを一度おさめマスターのために周囲を整えて、一心兄上と共にマスターを迎える。

「最近私に思考が引っ張られているのでは?」

小声で伝えられた言葉を、苦笑と共に返す。

「これでいいのです、一心兄上。まがい物でなく、これが私の心ですから。」

「ならば共に動くとしましょう。」

マスターのために。


必要ないほど確定された言葉と、忠誠をマスターに。

そうしていつの日か、胸を張って言いたいのです。

「私はマスター千利様の娘です。」
と。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スコップ1つで異世界征服

葦元狐雪
ファンタジー
超健康生活を送っているニートの戸賀勇希の元へ、ある日突然赤い手紙が届く。 その中には、誰も知らないゲームが記録されている謎のUSBメモリ。 怪しいと思いながらも、戸賀勇希は夢中でそのゲームをクリアするが、何者かの手によってPCの中に引き込まれてしまい...... ※グロテスクにチェックを入れるのを忘れていました。申し訳ありません。 ※クズな主人公が試行錯誤しながら現状を打開していく成長もののストーリーです。 ※ヒロインが死ぬ? 大丈夫、死にません。 ※矛盾点などがないよう配慮しているつもりですが、もしありましたら申し訳ございません。すぐに修正いたします。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

健太と美咲

廣瀬純一
ファンタジー
小学生の健太と美咲の体が入れ替わる話

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

ガチャからは99.7%パンが出るけど、世界で一番の素質を持ってるので今日もがんばります

ベルピー
ファンタジー
幼い頃にラッキーは迷子になっている少女を助けた。助けた少女は神様だった。今まで誰にも恩恵を授けなかった少女はラッキーに自分の恩恵を授けるのだが。。。 今まで誰も発現したことの無い素質に、初めは周りから期待されるラッキーだったが、ラッキーの授かった素質は周りに理解される事はなかった。そして、ラッキーの事を受け入れる事ができず冷遇。親はそんなラッキーを追放してしまう。 追放されたラッキーはそんな世の中を見返す為に旅を続けるのだが。。。 ラッキーのざまぁ冒険譚と、それを見守る神様の笑いと苦悩の物語。 恩恵はガチャスキルだが99.7%はパンが出ます!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...