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神々編
閑話(若干54からの続き) 最善策 最高神視点
しおりを挟む彼らが帰った数日後、老害の元へ説明に行けば予想通りの事しか言ってこなかった。
「最高神様!神を害する人間が現れたと聞きましたぞ!」
「なんと恐ろしい。」
「人間が神を殺したとも聞きましたぞ!」
「「「そんな人間は処分しなければ!」」」
「いやいや戦闘の神がいる我らで制御いたしましょう。」
「それには及びません、こちらで引き取り洗脳の神に洗脳させましょう。」
…………拝啓 小鳥美。自殺志願者が大勢います。
おとなしく差し出すのでこの領域自体を消滅させないでください。
この者たちはどうなってもいいので、この領域にいる神を全滅させることはやめてください。
敬具 最高神
私の祈り(現実逃避)が届いたのか
「ご機嫌麗しゅう最高神様!神様こっちですかねー?」
と言って神の領域に入ってきた小鳥美。
珍しく女性に見える格好に疑問を覚えていると、老害どもを見て、笑みを深めて挨拶をした。
「どうも皆様ご機嫌麗しゅう!人間の千利です。」
その名前に反応して、ギャアギャアと騒ぐのは老害。
老害はそろいもそろって笑顔だが、君たち私の護衛達の顔色に気付いているかい?
「最高神様!奴がノコノコと現れた今がチャンスですぞ!今こそ処分を!」
「まてまて、人間!神である私に仕える名誉をやろう。貴様は人間だがそこそこの戦闘能力があるらしいからな!」
「まて!あの人間は私がもらい受ける!洗脳すれば反抗しない駒になるのだからな!」
小鳥美についてきた一心からなぜ吹雪が出ていることに気付かない!
ああ、ほら言わんこっちゃない。
老害の一人が、無理やり連れて行こうと伸ばした腕を切り落とされた。
「……?!ギャァアアアア!!腕が、私の腕がぁあ!」
自分で気づかないことが原因なんだから、自業自得だとしか言いようがない。
そんなことを考えている間にも血に濡れた手袋を取り換えて、私の正面の椅子を整える一心。
「マスター、申し訳ありませんが準備に少しお時間いただきたく。」
「かまわないよ。」
切られた腕をグシャリと踏み潰して、こちらに来る千利。
恐怖に身を固めつつも私を守ろうと動く護衛を制し、代わりに「神様」を呼んでくるよう指示を出す。
「こっちに来るなんて、何か用かい?小鳥美。」
「野暮用ですよ。そうそう最高神様!これどーぞ!」
一心を通して渡されたのは装飾品。白髪にごく薄い黄の目をしたこの姿に合わせてだろうか、薄い黄色の腕輪だった。
じっと見つめて鑑定スキルを使うと、思わずすくみ上がる。
「こ、小鳥美?これはいくつ、いやどんな効果があるのかな?」
「えっ?とりあえずの物なので解毒と魔法・物理無効。あと魔法・物理の強化と反射。…………あと何付けたっけ一心?」
「属性魔法強化、範囲内防御結界、攻撃した相手を自害を封じつつ拘束して意識を奪う魔法ですね。」
「マスター、お茶が入りましたのでこちらへ。どうぞ最高神様もお座りください。」
続けてそういう一心は当然といった様子で、老害神たち用に用意された椅子を、千利のために引いた。
もう一つは私用の椅子だけれども、君ら戦闘能力以外も人外並みなのかい?!
精神の強さにも驚きつつ、自身を落ち着かせるためにお茶を飲む。
ホッと息をついて千利と雑談を交わす。
さっさと連れて行かれた老害なんて私は知らないよ。腕?勝手に切れたんだよ!
内心の動揺は押し殺して聞いていくと、自分の武器を何とか取り戻せないか聞くために来たらしい。
「あの大罪人たちが勝手に違法行為をしただけで、本来は人間の世界に全く関われないのでどうにもできない。情報も話せない。」
最高神である私は気づいた時には神と呼ばれる存在だったが、その時からいくつか制約で縛られたことも分かっていた。
そのうちの一つが、「人間の世界への不可侵」
それを説明すれば、「はーい。」と言った。いかにも不満ですという声だが、こればかりは仕方がない。
説明をしている間に到着していた「神様」はというと………。
「あのような化け物を貴様が手なずけられると本当に思ったのか?悪いことは言わない。今すぐにこちらに引き渡すんだ。洗脳をかければあの化け物でもいうことを聞くようになるだろう。」
「いやいやこちらに引き渡せ。戦闘の神がいる我らで処刑せねばならぬ。あのような危険分子は生かしておけん。」
「ほぉう?貴殿は先ほど預かるとか言っていなかったかのう。」
「ははご冗談を!耳が遠くなったようで、そうはなりたくないものですなぁ。あの化け物を生かしておくなどいうはずがなかろうが。」
「…………………………………。」
ただただ煩い老害たちに笑顔を向けていた。ただし口は一切開いていないが。
そして老害たちが話している部屋はここだ。つまり……
「どうしました?最高神様。」
「こちらでご用意させていただきました菓子が口に合わないようでしたら、取り替えますのでお申し付けください。」
「い!いや大丈夫だ。」
…………ああ誰か気づいてくれ。小鳥美は私の正面にいて、小鳥美の右後ろに一心。
私の右後ろには今「神様」が来た。そして私の左後ろには護衛が立っている。
左後ろ以外からくる冷気でもはや寒い。
……最高神なんてやってはいるが、そんなに精神は強くないんだよ。君ら、知ってるかい?
遠い目をしていた私に気付いたのだろう。一心が小鳥美に耳打ちして、千利がニッコリと笑った。
「そういえば最高神様って、読唇術使えたりします?」
「ああ、一応使えるけれど……?それがどうかしたかい?」
「では秘密のご相談を。」
(「全員殺していいですよね?」)
(「やめてくれ!!」)
(「やっだなぁー最高神様。最高神様と神様、後サービスで護衛君たちは残しておきますよ。」)
縋りつくように一心を見れば、唇だけを動かしてこちらに伝えてきた。
(「今この場で死神としてマスターが行動されることと、マスターがただの人間として神を殺すこと。どちらがいいかはお分かりですよね?」)
死神として行動してくれるのならば、「人間」が行ったことにはならないからまだましだろう。
ただ、ちゃんと人数全員が帰ってくるかはわからない。
読唇術を私から教わった「神様」は会話を理解していたようで、問答無用で椅子を引いて退席を促した。
恐る恐る振り返ると、とてもいい笑顔を見せてくれた。
(「我が主を見下し許可も得ずに騒いだ奴らはきっと、死神の慈悲が欲しいのでしょう。主の手を汚す必要も感じません。彼らに任せましょう。」)
意訳「我が主を見下した罪は、一度死ぬようなことでは償いきれません。千利にじっくり苦しめてもらいましょう。」
「千利、殺さないようにね?こちらで最高神様のお役に立ってもらわないとだからさ。」
「了解です!対価は一心のボディの複製回数増加で手を打ちますよ?」
「かまわないよ。僕の権限だけでできるからね。ちゃんと、生かしておくんだよ?」
私の先導をする神様についていこうとすると、護衛の一人が声を上げた。
「最高神様、彼らに監視は必要でしょうか。」
「…………いや、必要ないよ。」
君たちを残せば、君たちが殺されかねない。私の側近をみすみす殺させはしないよ。
………次の日、私の館には精神を壊された老害たちが届いた。
「素直で扱いやすいので、とても助かります。」
…………そう笑顔で言う僕の側近は、死神に毒されてしまったようだ。
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