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神々編
43.後始末
しおりを挟む3体の魔獣を集めてスキルを使う。
「短剣スキル、解体。」
スキルを使ったことにより、見えた線に沿って死体を切り分けていく。
兎、熊は毛皮と肉、骨に分ける。蜘蛛は足の部分を分ける。
これが防具になるんだよなぁ~。不思議。
面倒なのでさっさと燃やしてしまいたいが、師匠が真面目な顔していっていたことなのでしっかり解体しておこう。
いわく、相手の弔いと命を奪ったものとしての責任だそうだ。覚えさせられた「強者の心得」にはいってた。
………数十項目あったっけ?
スキルのおかげでさっさと終わった解体作業だが、まだ終わらない。
「さて、洗浄!」
ゲームの魔法は便利だ。本来は洗濯用だが、今回は血抜きと掃除のために使わせてもらおう。
内臓や蜘蛛の大半、頭は炎で燃やす。ちゃんとウィール様に許可はもらっているので大丈夫だろう。
「眠れ。歪に蘇るんじゃないよ?」
ごくまれに○○ゾンビとして蘇ることがあるようなので、しっかり燃やす。
綺麗になった肉は食べる。ジビエとしていただくさ。骨や毛皮は素材として倉庫に入れておこう。
全部しまって火を消し、数十秒追悼した私は鞭を取り出した。
「倉庫No.6ヒーリング。来い。称号を死神から演奏者に変更。」
そう呟き出てきた鞭を握り、スキルを使う。
「称号変更により、複数のスキルが使用不可になりました。また、称号変更により複数のスキルが使用可能になりました。」
なんだか久しぶりにゲームのシステム音を聞いたな。まぁ、やることは変わらない。
「スキル、土地の癒しを使用。」
体が勝手に動くので、それに身を任せて踊る。
あぁ、精霊達が見ているのが分かる。
土地が回復するのも、
栄養豊富な実が実ることも、
動物たちがそれぞれの方法で音楽を奏でるのも。
私が触れた地面から緑色の水面が描かれていく。
大きく円を描いて移動すると同時に、水面の色は緑はやがて赤に、青に変わりだんだんと一か所が光を帯びていく。
手のひらで触れたところから大きな水面が描かれていくと、やがてそれらは中心の一か所に当たって弾け、その部分を残して消えていく。
そうしてできた光の柱に鞭を絡め、頭に浮かぶ言葉を紡ぐ。
「祈りとともに死者たちよ、死者の国へと導こう。魔力を注ぎ、願うは回復。血と共に疲弊した土地よ、かつての姿を取り戻せ。」
鞭を持ったまま跪き、手を地面につけて最後の仕上げをする。
「この地に、癒しを。」
その言葉と同時に光の柱の根元から芽が出る。芽は瞬く間に細い若木を経て、大きな大樹へと成長を遂げる。
まだまだ他の木々よりも小さいが、地面の様子からこのくらいがちょうどいいだろう。
さてと。剣も戻ったし、魔獣も倒して素材にしたし、ウィール様に報告して戻ろ~っと。
ウキウキで戻ろうとすると、木にもたれる神様を発見した。
「………千利、やりすぎだよ。」
「おや神様。ご機嫌うるわしゅう!」
「まったく君は………。相変わらず男にしか見えないのは放っておくとして、戦闘に土地を癒すとは………。」
僕の常識が崩れてくれたらどうしてくれるんだい……。と呟く神様。
…………?土地の癒しはともかく、呆れられることあったっけ?
「どれのことですかね?」
何かに吹っ切れた神様は怒鳴って言う。
「全部だよ全部!まったく、自己評価が低いのはともかく情報操作にこの戦闘能力。これさえなければ君は!…………………。…………ほら行くよ!」
むんずと音がしそうな勢いで掴まれた私は、そのままズルズルと引きずられてウィール様の元へと向かった。
………………神様の小言付きで。
「だいたいねぇ、君は無茶が過ぎるよ。何のため一心君たちがいるのかわかったもんじゃないね。洗いざらい吐いてもらいたいところだけど、くだらないことを考えている暇があったら自分が安全に行動することを考えなよ。」
…………あれ、この人神様だよね?私の父親じゃないよね?
「君の父親なんて御免だよ!君と一緒にいたら僕の基準と常識が崩れてしまう!」
「ちょっと!?ひどすぎやりませんか!私だって常識人ですよ!」
「うるさい!君は静かに引きずられてればいいんだよ!」
言い返したらぺしりと叩かれた。とことん言い返してやる!
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