38 / 205
精霊達の土地編
25.世界樹様との歓談
しおりを挟む
森の中をどんどん進んでいく。何となく精霊たちが多いのは分かるが、まったく見えない。
しかし精霊たち以外もいるようで、人のような気配もする。
「姫様!ここだよ!」
「世界樹ウィール様、お連れいたしましたぞ。」
二人がそう話した先にはとても青い大樹があった。高く、神聖な感じがする。
…一体これほどまでになるにはどのくらい時間がかかるんだろうか。
ヒュッと息をのむ音がする方を見るとニアが固まっていた。
そうだな。これほどまでだと神聖を通り越して恐怖すら感じるだろう。
心なしか小刻みに震えているニアを片腕で抱き寄せて、世界樹様にあいさつをしている精霊王達の傍に行く。
世界樹と呼ばれる大樹の近くに行くと私の下だけに草木が茂り、私を上に押し上げていく。
「マスター!!」
まるで敵の組織に自ら捕まっていく私を呼び止めるような声。
落ち着かせるように柔らかく微笑み、私を持ち上げようとする草木に問う。
「彼女もいっしょに持ち上げてくれないかい?私の可愛い娘でね。安心させてやりたいんだ。」
風に揺られてカサカサと揺れる大樹。
ニアは警戒を強めて、私はそんなニアを抱きしめる力を強めて草木の答えを待った。
少しして、ゆっくりと丈夫そうな植物で出来た籠が降りてきた。
先に乗る私が出した手を見てなお警戒するニアに、ラトネスとダーネスが声をかける。
「ニア、大丈夫ですよ。世界樹様が呼んでいるだけです。姫にはこれから姫様は私達が分けた力で、世界中の人の子や精霊達に向けて見えるように光の柱を立てるんです。その補助を世界樹様が行います。」
「本来であれば、姫が力を暴走させたときに被害を受けないために姫以外は近寄れない。だがその様子じゃ、お前が心配で姫が暴走する可能性の方が高いと判断されたようだ。いってこい。」
「………皆様の様子や言動からこの大樹が世界樹である可能性は99%です。しかし、皆様が信頼しているからという理由では安心できません。ご不快かと思いますが、世界樹様が攻撃してこない確証などどこにもないのですから。」
ニアの言うことも一理あるが、それよりも。
「言外に私じゃ世界樹様が攻撃してきたときに、ニアを守り切れないといいたいの?私はニアや一心を守るために強くなったつもりなんだけどねぇ。」
「そのようなつもりではありません!そしてマスターは守る側ではなく守られる側だということをご自覚ください!」
やなこった、と言いたいところだけど………。
今日一番のニッコリ笑顔で言う。
「じゃあニアがちゃーんと守ってよ。よろしく!」
そのままニアをお姫様抱っこで持ち上げ、籠に乗る。
驚いて固まった後、諦めたように息を吐くニア。
おでこの右上あたりに手を置いて軽く頭を振るため息の仕方は一心にそっくりで、じんわり嬉しくなる。
兄妹だね~。
籠の中は見た目通り私とニアが乗っても危なっかしい様子は全くなく、安心して上に上がった。
到着したのは世界樹の上の葉が広がっている部分。
その上には、アフタヌーンティーセットをいそいそと立派なテーブルに並べる青年がいた。
「「……………………。」」
紅茶を入れ、お菓子が積まれた三段のお皿のやつ(ケーキスタンドというらしい)を置き、個々にお皿とカラトリーを並べると、満足したようにこれまた立派な白い椅子に座る。
その姿には威厳がある………様に見えなくもない。
私はともかく、ニアも警戒を忘れて呆れたような視線を青年に向ける。
自分達が大樹の葉の部分にいることも忘れそうになるほど、しっかりとしたティーセットや白を基調にして金の飾り(本物の金が埋められている)がついた家具。そしてここは大樹は大樹でも「世界樹」の上だ。ここにいるのは十中八九世界樹の精霊ウィールだろう。
―――――今のこの瞬間、親と娘の心は一つになった。――――――
(「「何やってんだあんた………。」」)
これほどまでに脱力という言葉がしっくりくることはなかったと断言できる。
優雅に紅茶を飲み、小さくほくそ笑むウィール様。
大方これで準備万端だ!なんておもってんだろうなー。
「…ウィール様?もういいですかね。」
「姫!……いつからそこに?もしかして見てた?」
「私とマスターはウィール様がテーブルのセッティングをしているときからこの場にいました。」
「私の威厳が――。……はあ、いいやこっちおいで。柱は姫自身が基本やらないとだめだからね。説明ちゃんと聞きなよ?」
威厳もへったくれもないウィール様を前に少し警戒を解いたように見えるニア。
私はそれを指摘せずに、元気よく返事をする。
「分かりました!…と、その前にニア!」
「お任せくださいマスター。世界樹ウィール様、少しの間ご起立願います。」
「どうかした?」
「いえ。ただ一心様と同じで、マスターの前にあるものは完璧でないと気が済まない性格なだけですので、どうぞお気になさらず。」
そういうとニアは、ウィール様とは全く違うテキパキとした動きでテーブルクロスを引いていく。
「マスター、こちらに。ウィール様はこちらです。」
おそらく、ニアはテーブルクロスのしわやカラトリーの場所などが許せなかったのだろう。一心もそうだったし、毒の有無も確認がてら整えてもらおうかな。
ニアに引いてもらった椅子に座り、ニアの行動を観察する。
紅茶は昨夜練習したといった魔法でお湯を沸かすと紅茶を準備し、その間にカラトリーと食器を私達二人の前に並べる。もちろんガチャガチャとした音は一切ない。三段に並んだお菓子はルール通りに上下に移動させ、丸々と乗っていたホールのケーキは小さめに切られて並べられた。
極めつけはタイミングよく温度調整が終わった紅茶。
「お待たせいたしましたマスター。どうぞ。」
音も無く私の前に置かれる淹れ立ての紅茶。うん、おいしい。
「……すごくおいしいよ、ニア君どうやって入れたんだい?」
「おそらくウィール様が思っている以上に紅茶は様々なことで味が変化しますので、今教えても無駄になるかと。」
「そうか、残念。」
ニアの紅茶で一息ついたところで、本題に入ろうか。
しかし精霊たち以外もいるようで、人のような気配もする。
「姫様!ここだよ!」
「世界樹ウィール様、お連れいたしましたぞ。」
二人がそう話した先にはとても青い大樹があった。高く、神聖な感じがする。
…一体これほどまでになるにはどのくらい時間がかかるんだろうか。
ヒュッと息をのむ音がする方を見るとニアが固まっていた。
そうだな。これほどまでだと神聖を通り越して恐怖すら感じるだろう。
心なしか小刻みに震えているニアを片腕で抱き寄せて、世界樹様にあいさつをしている精霊王達の傍に行く。
世界樹と呼ばれる大樹の近くに行くと私の下だけに草木が茂り、私を上に押し上げていく。
「マスター!!」
まるで敵の組織に自ら捕まっていく私を呼び止めるような声。
落ち着かせるように柔らかく微笑み、私を持ち上げようとする草木に問う。
「彼女もいっしょに持ち上げてくれないかい?私の可愛い娘でね。安心させてやりたいんだ。」
風に揺られてカサカサと揺れる大樹。
ニアは警戒を強めて、私はそんなニアを抱きしめる力を強めて草木の答えを待った。
少しして、ゆっくりと丈夫そうな植物で出来た籠が降りてきた。
先に乗る私が出した手を見てなお警戒するニアに、ラトネスとダーネスが声をかける。
「ニア、大丈夫ですよ。世界樹様が呼んでいるだけです。姫にはこれから姫様は私達が分けた力で、世界中の人の子や精霊達に向けて見えるように光の柱を立てるんです。その補助を世界樹様が行います。」
「本来であれば、姫が力を暴走させたときに被害を受けないために姫以外は近寄れない。だがその様子じゃ、お前が心配で姫が暴走する可能性の方が高いと判断されたようだ。いってこい。」
「………皆様の様子や言動からこの大樹が世界樹である可能性は99%です。しかし、皆様が信頼しているからという理由では安心できません。ご不快かと思いますが、世界樹様が攻撃してこない確証などどこにもないのですから。」
ニアの言うことも一理あるが、それよりも。
「言外に私じゃ世界樹様が攻撃してきたときに、ニアを守り切れないといいたいの?私はニアや一心を守るために強くなったつもりなんだけどねぇ。」
「そのようなつもりではありません!そしてマスターは守る側ではなく守られる側だということをご自覚ください!」
やなこった、と言いたいところだけど………。
今日一番のニッコリ笑顔で言う。
「じゃあニアがちゃーんと守ってよ。よろしく!」
そのままニアをお姫様抱っこで持ち上げ、籠に乗る。
驚いて固まった後、諦めたように息を吐くニア。
おでこの右上あたりに手を置いて軽く頭を振るため息の仕方は一心にそっくりで、じんわり嬉しくなる。
兄妹だね~。
籠の中は見た目通り私とニアが乗っても危なっかしい様子は全くなく、安心して上に上がった。
到着したのは世界樹の上の葉が広がっている部分。
その上には、アフタヌーンティーセットをいそいそと立派なテーブルに並べる青年がいた。
「「……………………。」」
紅茶を入れ、お菓子が積まれた三段のお皿のやつ(ケーキスタンドというらしい)を置き、個々にお皿とカラトリーを並べると、満足したようにこれまた立派な白い椅子に座る。
その姿には威厳がある………様に見えなくもない。
私はともかく、ニアも警戒を忘れて呆れたような視線を青年に向ける。
自分達が大樹の葉の部分にいることも忘れそうになるほど、しっかりとしたティーセットや白を基調にして金の飾り(本物の金が埋められている)がついた家具。そしてここは大樹は大樹でも「世界樹」の上だ。ここにいるのは十中八九世界樹の精霊ウィールだろう。
―――――今のこの瞬間、親と娘の心は一つになった。――――――
(「「何やってんだあんた………。」」)
これほどまでに脱力という言葉がしっくりくることはなかったと断言できる。
優雅に紅茶を飲み、小さくほくそ笑むウィール様。
大方これで準備万端だ!なんておもってんだろうなー。
「…ウィール様?もういいですかね。」
「姫!……いつからそこに?もしかして見てた?」
「私とマスターはウィール様がテーブルのセッティングをしているときからこの場にいました。」
「私の威厳が――。……はあ、いいやこっちおいで。柱は姫自身が基本やらないとだめだからね。説明ちゃんと聞きなよ?」
威厳もへったくれもないウィール様を前に少し警戒を解いたように見えるニア。
私はそれを指摘せずに、元気よく返事をする。
「分かりました!…と、その前にニア!」
「お任せくださいマスター。世界樹ウィール様、少しの間ご起立願います。」
「どうかした?」
「いえ。ただ一心様と同じで、マスターの前にあるものは完璧でないと気が済まない性格なだけですので、どうぞお気になさらず。」
そういうとニアは、ウィール様とは全く違うテキパキとした動きでテーブルクロスを引いていく。
「マスター、こちらに。ウィール様はこちらです。」
おそらく、ニアはテーブルクロスのしわやカラトリーの場所などが許せなかったのだろう。一心もそうだったし、毒の有無も確認がてら整えてもらおうかな。
ニアに引いてもらった椅子に座り、ニアの行動を観察する。
紅茶は昨夜練習したといった魔法でお湯を沸かすと紅茶を準備し、その間にカラトリーと食器を私達二人の前に並べる。もちろんガチャガチャとした音は一切ない。三段に並んだお菓子はルール通りに上下に移動させ、丸々と乗っていたホールのケーキは小さめに切られて並べられた。
極めつけはタイミングよく温度調整が終わった紅茶。
「お待たせいたしましたマスター。どうぞ。」
音も無く私の前に置かれる淹れ立ての紅茶。うん、おいしい。
「……すごくおいしいよ、ニア君どうやって入れたんだい?」
「おそらくウィール様が思っている以上に紅茶は様々なことで味が変化しますので、今教えても無駄になるかと。」
「そうか、残念。」
ニアの紅茶で一息ついたところで、本題に入ろうか。
0
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊
北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。
ガチャからは99.7%パンが出るけど、世界で一番の素質を持ってるので今日もがんばります
ベルピー
ファンタジー
幼い頃にラッキーは迷子になっている少女を助けた。助けた少女は神様だった。今まで誰にも恩恵を授けなかった少女はラッキーに自分の恩恵を授けるのだが。。。
今まで誰も発現したことの無い素質に、初めは周りから期待されるラッキーだったが、ラッキーの授かった素質は周りに理解される事はなかった。そして、ラッキーの事を受け入れる事ができず冷遇。親はそんなラッキーを追放してしまう。
追放されたラッキーはそんな世の中を見返す為に旅を続けるのだが。。。
ラッキーのざまぁ冒険譚と、それを見守る神様の笑いと苦悩の物語。
恩恵はガチャスキルだが99.7%はパンが出ます!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。

大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる