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精霊達の土地編
24.正しい門番達
しおりを挟む宿に戻った時にはもう夜が明けていた。
ニアと合流して宿を出て路地裏に入りラトネスに頼んで見えなくしてもらう。
ダーネスは影に溶け込むときに、ラトネスは光を捻じ曲げて見えなくしてもらうときに頼んでいる。
空を飛びさらに南へ下っていく。上空を通るので門や国境管理をしている奴らには何も気づかれない。
違法なのは気にしないことにする。
雑談しているとやっぱり始まったお勉強会に遠い目をしていると、精霊の土地に入るための門があるところについた。
……ほんとにここか?平凡な平野にしか見えん。
「……マスター、空間の異常ともいうべき何かがここにあります。お気を付けください。」
「大丈夫ですわ!わらわもよく通るので間違いありません。さあ姫様、まずは門番のもとへ行きましょう!お手をここに。」
ミカのさしたところに手のひらを当てると、壁のようなものに触れた。
「姫、そのままでも入れるが、このままだとニアが入れない。私の言葉を繰り返してくれ。『次代の精霊使いは、個体名ニアの土地への侵入を許可する。』」
「次代の精霊使いは、個体名ニアの土地への侵入を許可する。……ニア、入れるか?」
ためらいなく私が手を置いている壁に腕を入れるニア。
……入れるようです。ってうん。ソウダネ。
精霊達とはいると、紫の空間に巨大な門とその門くらいある巨大な石の兵士が二人脇に佇んでいた。
「精霊王様方、ご帰還ですか?お側にいるのは……人の子と隣は…魔術具か?」
私達を見ると、あからさまに嫌そうな顔をする。
ヒヤッとした空気に肩をすくめると、アクスとアーシェが口を開く。
「この方は私の主である。何か問題があるのか?」
「あら、それとも私達が契約した者が偽物の精霊使いだとでも言いたいのかしら?」
サッと顔色を変えて、しかし門番達は疑いの目はそのまま、私に向けて「力を示してもらいましょう。」と言い放った。
「フォルじい、どうすればいいのか教えてくれるか?」
「ふむ……。ここはわしではなく世界樹様の出番じゃのう。」
(「そういうことだから、私の言葉を復唱して。そうそう、これは精霊が感知できるものには聞こえているよ。もちろんその門番にも、ね。ニアと一心君は例外だけど。」)
「せ、世界樹様自ら……。」
(「次代の精霊使い千利の名のもとに、扉を開き世界樹様への道を示せ。」)
「次代の精霊使い千利の名のもとに、扉を開き世界樹様への道を示せ。」
自然に溢れ出てきた精霊の皆の力が手から扉を囲うように広がる。
「「力は示された。次代の精霊妃様を通すためにこれより扉を解錠する。」」
ゆっくりと扉が開き、精霊の土地が目視できるようになった。
森っぽいなんて思っていると兵士の黙っていた方が口を開く。
「すまないな、これが我々の仕事だ。これまでに何人かの人の子が無理に押し通ろうとしたのだ。お詫びとして、許可証を一心殿とニア殿の分を渡しておこう。」
「姫様、ご不快にさせて申し訳ない。我々は全て知った上で不敬な態度をとった。そちらの人工知能は姫様の側近なのだろう?通ってくれてかまわない。」
やっぱり知ってたか。なんとなくわかったけれども。
「気にするな。私が別の世界から来たこともその様子だと知っているんだろう?私自身が元いた世界で似たような仕事をしていたからな。そういうわけだから、皆も気にしないように。」
幾人不服そうなものもいるが、知ったことか。
本人達は真面目に仕事をしているいいだけだし、精霊王達に言われても門番なら偽物や怪しい奴を絶対に通してはいけない。門番は正しい選択をした。
ゆっくりと、しかし堂々と門をくぐる。
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