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異世界 阿呆の国編
23.情報収集
しおりを挟む元の世界もやっていたように情報を集めに出掛ける。
監禁されていた時に作ってもらった黒とグレーを基調にした服に着替え、窓から音無く出る。
明かりが見える酒場を見つけ、天井の中央くらいに盗聴器を付ける。
また移動して、これらをくり返す。
三件ほど付けたら音は無く、しかし素早く移動して城へ戻る。
移動してもまだ夕食ぐらいの時間だ。天井裏に入り、以前に仕掛けた盗聴器を回収しつつ王弟の匂いをもとに探す。
………いた。
「……!」
何かを言っている王弟の傍に行き耳を澄ます。
「異世界人がいなくなったのは貴様のせいだろうが!この無能が!」
「し、しかし殿下、見張りもつけておりましたし手錠もしておりました。きっとまだ王都の中にいましょう。騎士さえ派遣していただければ見つかるのは時間の問題かと。」
「うるさい!王都内に騎士たちを派遣してみろ、兄上に見つかってしまうではないか!ただでさえ馬鹿王女がうるさいんだ、これ以上騒がれてはかなわん。」
部屋の中には王弟と前にもいた怪しい老人ともう一人のダンディなおじさま。
着ている物の感じで言えば、高位の貴族だろう。……見覚えがあるような?
「王弟殿下様、発言をよろしいでしょうか?」
「なんだ!下らんことだったら処分してやる!」
「異世界人達はこの世界に来てから食事を一切しておりません。金も無い状況ならどこかで餓死しているかと愚考したします。」
「なるほど……。よし、死体を私の前にもってこい!公爵、我が隊の者に伝えろ!私の前に両方の死体を持ってきたものには褒美をやるとな!」
「拝命いたしました。」
「恐れながら殿下、死体をどうなさるおつもりで?」
「ふん!無能で馬鹿な異世界人でも妹の方はいい顔をしていた。死んでいるのなら暴れずに少しは楽しめるかと思ってな。なぁに心配するな。見つけられたら貴様にもあとから分けてやろう。」
「なるほど!さすがは殿下なんとお優しい。馬鹿な異世界人の価値を死んでからも見つけ慈悲を与えるとは、感服いたしました。」
そういって部屋を出る公爵と呼ばれた男と怪しい老人。
……………ここで殺しておくか?それが一番早いんだがな。
まあいい、そんな慈悲はいらないだろう。
王弟は自分の寝台に女を呼んだので、公爵の方を見に行く。
廊下で見つけたので、そのままついていく。入ったのは……執務室と思われる部屋。そのまま黙々と執務をこなしている。
静かなので、盗聴器を仕掛けても意味はないだろう。諦めて書類を盗み見る。
…………大半が王弟関係だな。王弟の財政管理といった感じだ。
王弟の収支、王弟の魔術隊の指令用の書類、王弟の……執務じゃん!
公爵がしていい書類ではないだろコレ。
この公爵はずいぶんと王弟の信頼が厚いらしい、おそらく横領の書類はこいつが作ったな。だが、その割には私腹を肥やしている感じではないようだ。
他の書類はまともに処理しているし、公爵とのしての執務もこなしているようだし。何より今思い出したが、こいつ私達が監禁されているときに干し肉くれた貴族じゃんか。そしてこいつ確か……。
……………はぁ。貴族ってめんどくさい。まっ、せいぜい踊ってくださいな?
美しい者たちに捧げる馬鹿は多い方がいいからな。
それまではじわじわといきますか!
私はある情報を王都の各地でばら撒いてから、宿に戻った。
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