異世界情報収集生活

スカーレット

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異世界 阿呆の国編

21.移動

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今の現在地は北の大国であるペカニブルの王都の南。大陸の中心から見れば、北北西あたりといったところだろう。ここから大陸の中心に行くには結構な時間がかかる。

ので、飛ぶことにした。

「姫、飛べたのか?私達精霊王は飛べるが人の子は飛べないんじゃなかったか?」

「人間は飛べないよ。ただ、私達は元の世界でやってた『ゲーム』の中で飛ぶことが出来たんだ。ゲームの中で飛ぶことを可能にした『スキル』と呼ばれる特殊技能が使えるようになってるらしいから、多分飛べると思うんだよ。」

念のために、精霊王の中でも素早いウィンとミカに落ちた時に対応してもらうとして、Let‘s fly!!
バサッと音がしたが気にしない!自己暗示大事!I can fly!

ニアと共にゆっくりと地上から離れ、宙を舞う。

ゲームと同じように移動が自由にできることを確認し、ニアを見る。



……うちの娘が天使になってる――!


ニアの背中から、天使のような白い翼か生えていた。
背中のあたりにはバッテリーがオーバーヒートしないように冷却装置がついてるんだけどな…。大丈夫か?

「…ニア、つ、翼が背中から生えてるよ?どうしたんだそれ?」

「少々お待ちください。…………冷却装置あたりに未確認の物体が接続されているのを確認。接続解除は不可です。今のところ、異常はありません。そしてマスターの背中を覆い隠すように黒いローブが浮いていることを確認しました。いかがいたしますか?害はないように考察されます。」

「げっ、私にも黒いローブが?……なんか引っかかるな。」

………天使のような翼に、包み込むように着る黒いローブ…………まさか!

私の隊が訓練がてら遊んでいた『ゲーム』は称号がいくつもあった。
称号を付け替えることで、見た目や使用可能なスキルが変化する仕組みだ。

例えば…称号『皇帝』を装備するとスキル「皇帝の権威」が使えて治安が良くなったり、称号『死神』を装備するとスキル「間引き」が使えて範囲内の敵が一気に狩れたり……。

そんな仕組みの中に確か、称号『天使』を使うとスキル「自由移動(空)」が使用可能になった気がする。

ちなみに私が空中を移動できたのは多分称号『死神』のスキル「自由移動(陸・海上・空)」のおかげだろう。移動系のスキルは勝手に使われたはず。

「ニア、多分ゲームのスキルが勝手に使われてるんだと思う。まあ害はなさそうだし、このまま移動しよう。」

「了解しました。マスター。」

「姫様、僕たちがついてるから大丈夫だよ!」

「緊急の時は任せてくださいませ!」

頼もしい二人の声を聞いたので、スピードを上げてさっさと移動することにした。


………うん、早いな。楽でいいや。これなら5日かかる予定が3から4日になるだろう。

「姫、一つ聞いていいだろうか。」

「どうしたアイセン。」

「『死神』とは何のことだ?」

それか。

「元の世界での私の二つ名だね。そう呼ばれることがよくあったんだよ。」

「物騒じゃのう。なぜそんな名がついたんじゃ。」

「物騒…ね。私自身何人も殺してるからな~。由来は私がよく手刀で首を切ってたら速くなりすぎて切っても直ぐに死ななくなってね。それで確実に殺すために最後手を叩くようになったんだけど、相手から見たら私が移動した後に手を叩いたら死んでいったように見えたらしく……。『死神が歩いた場所に生者は残らない』なんていわれてさー。」

生物の仕組みは不思議で、「何かされた」と認識してもすぐに体には現れずにいることがある。ほとんどの場合、生物は視界や音の後に痛覚が通って初めて傷を感知することが多いため、目に見える範囲に傷が無かったり音がしないときに起こることが多い。刺された後に傷を見たら痛み始めた、というのが分かりやすいだろう。

そのため、足音しかしない+傷や痛みが無い=無傷なので生きている、と成立してしまう。

私の場合は首を切るので、頭が命令した行動が腕や足などに伝わらず動けなくなる。切られた本人にとっては「何かされたら動けなくなった」という認識になるし、実際には死んでいるわけだから口も視線も何も動かせない状況になるわけだ。

脳は「死亡した」と確認しているのに、死んでいるため情報が伝わらずに「死亡した」という情報がないため「生存している」となってしまう。

また他から見ると、「まったく動けない状態にした」と思われる。傷や血が出ていないからこれはしょうがない。この動きを目で追えない奴らが多いし。

質の悪いことに、このまま全く動かないとたぶん1日ぐらい生きられる。そのため確実に殺してやるために手を叩く。

「自分に何かされた」と認識されている頭に「音」という刺激を与えるだけで「自分は攻撃をされたのではないか?」と認識して「攻撃されて実際には死んでいるのではないか?」と判断して死亡する。


…………これはあくまで憶測だが、この世界には回復魔法がある。確か、術者の魔力を生命力に変換させて与えることで回復させる魔法だから………生き返るんじゃないか?

……………黙っておこう。

静かに、でもいつも通りの表情で話を続ける。

「どう?怖くなった?別に私は皆の意志を尊重したいから、契約解除でもいいよ?怒らないし、怒らせないよ?」

そう伝えると、キョトンとしたウィンが聞いた。

「僕も人の子を殺せるし、姫様を傷つけたら殺すよ?姫様が何の意味もなく人の子を殺し続けたら僕らも世界樹様も困るからメッてするけど、姫様はちゃんと理由があるでしょ?」

だから怖くないよ!と無邪気に笑うウィン。
頭を撫でてやり、そのまま「そうだね、嬉しいよ。」と返す。

そのまま雑談をしていたら、なぜかお勉強会に突入したので移動しつつお勉強になった。

フォルじいには精霊たちの価値観や使える魔法、歴史に精霊使いが使える魔法の使い方を教えてもらった。

アーシェには人間が精霊について知っていることや人間から見た精霊の価値観、以前に起きた精霊関係の事件などを。

ラトネスには今の人間の中で庇護や交渉を持ち込むのならおすすめの人物を。

イアにはこの世界のお金や価値観についてを。

ダーネスは闇魔法でできることを教えてもらった。

色々なことが出来るらしく、その中でも空間魔法が驚きだった。
闇…というよりは影から影へ移動ができるらしく、いったことが在れるか影さえあれば移動可能なんだとか。

さらにダーネスから見ると、あの空間魔法に入った我が家はとても危険らしく、

「俺が安全な空間を作るから、どうかその空間に家を入れさせてくれ。」

と頼まれてしまった。

了承したりラトネスが腹黒さを暴露したりしながら移動を続け、一日目は終わりを迎えた。

到着したのは、ペカニブルの南の方にある街。世界中を回っていたイアは、「しっかりした街だ。」とのこと。

今回は、イアにもらったこの世界のお金を使って宿屋に泊まる予定だ。

……ついでに情報集めておきますかね。



…………………補足…………………

作品内の体の不思議に関することは捏造です。また、多分とってもわかりにくいですよね。 
    自覚済みです許してください
ま、まぁ今回の話については

「千利が首を切っても、早すぎて他の人には分からないため、ちょっとの間動けないけれど生きていられる。でも、なんかのきっかけで動いたら(攻撃されてた?って思ったら)死ぬ」

って理解してください。これだけ覚えてもらえれば大丈夫です

頼みましたからね!

作者 スカーレット
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