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異世界 阿呆の国編
20.レイピアと門への出発
しおりを挟む久しぶりのスッキリとした目覚めの後、精霊の道を作り普段から精霊王達を見ることが出来るようになった。
ついでと言わんばかりに、上級精霊も見える。らしい。
上級精霊はほとんど気に入った土地にいるらしいので、まったく実感がない。
そういう今日は、世界樹様のもとにあいさつに行くらしい。
「あのね!ウィール様は精霊使いの交代を精霊たちに知らせてくれるんだよ!ウィール様はすっごいんだ!」
テンション高いな、ウィン。すっごいのか。そっかそっか。カワイイからよし。
「マスター、昨日の契約の時に聞こえてきた声はもしや、世界樹様だったのでは?」
「うーん、たぶん、ね。まだ世界樹様のお声を直接聞いたわけじゃないから断定はできないかな。」
直接聞かないと、声紋鑑定が出来ないからなー。
なんて話してたら、アイセンが教えてくれた。
「姫、世界樹様の声で間違いない。まだ精霊王を引き継ぐ前に、よく力の使い方を教えていただいたからな。覚えている。」
「精霊王は引き継ぐのですね。なんだか予想外です。」
「ねーニア。不思議な感じ。」
なんとなくだが、精霊王は精霊王として生まれてくるものだと思った。
………一心?その呆れた目は何だよ?
「マスターだって最初から『死神』だったわけではないでしょう?千葉様だって最初から『ピエロ』だったわけではありません。……阿呆ですか貴方は。」
うっ。痛いところを突いてくるな全く。
だが今日の私は睡眠をしっかりとったスッキリ千利だ。突き返してやる。
「上官は最初から『魔王』だったけど?」
「………あの方の戦闘能力はそもそも私でさえも計測できませんから、最初から候補に入れていません。」
……………一心でも計測不可能って。………上官は人間か?
私の友人の世界一の素手強者計れるんだぞ?
………こっわ。
なんとなくイヤーな空気になった所をイアが壊してくれた。
「姫、そろそろ精霊の土地の門にいくので準備をしてくれ。姫には初めて精霊の力を使ってもらうところになる。門を開け、精霊の土地に行くには姫である精霊使いの力が必要だからな。」
…今現在精霊を自分の力で認識できる人間はほとんどいない。
でも、門があるってことは……過去に馬鹿がいたか、売り買いされていたか。
「フォルじい、今現在精霊関係の法律はどのくらいある。」
「すまんのう。わしは精霊には詳しいんじゃが、人の子までは……。アーシェ、分かるかの?」
「そうねえ……あるにはあるけれど、風化されてほとんど機能していないかしら。ほとんど地方のものだけだしねえ。精霊自体見たことがない人間が多い今、真面目に精霊関係について学習したのはライミリと今のマルクトリアの国王くらいかしら。」
ライミリ精霊信仰国と、マルクトリア国か。
「ニア、後でマルクトリア国とライミリ精霊信仰国の情報を集めてくれ。王族関係中心で頼む。一心は隣の大陸の帝国を調べてくれ。いざというときはそこに逃げ込む。」
「「了解いたしました。」」
軽く戦闘の用意をしておこう。何が起こるのかも、精霊王たちがどのくらい戦えるのかも分からないからな。
………やはり、メインの武器がないのは心細いな。
仕方ないので、レイピアを腰に携えておく。
洋服はニアにまた頼んで、3人分作ってもらった。
一心は黒い燕尾服っぽい服を。ニアはグレーと黒の商人の店員のような服を。
私は、元の世界で着てた様なグレー基本の緑がちょっと入った、普段盗賊の頭が着てそうな服を着た。
もちろん男装だ。
………レイピアをダーネスがすっごい見てる。
「どうかしたか?ダーネス。」
「姫のそのレイピア………丸くないか?」
「ああ、側面に刃はないぞ。」
私が持ったレイピアはゲームで使っていた特殊な武器で、刀身は円錐と円柱を組み合わせたような形をしている。
サブとして使っていたので、突く以外あまり使わなかった。
だから、丸くしてもらった。ゲームでと現実両方で、な。
「こんな剣で戦えるのか?」
「基本剣は片手剣のみか片手剣とレイピア二刀で戦っているから問題ないんだが……あの自称女神………。」
ダーネスとラトネスが察したようで、自称女神に対する怒りが静かに燃える。
「あの女神ですか……ダーネスちょっとここを任せていいですか?」
「待てラトネス。お前だとすぐに死んでしまう、俺が精神攻撃でダメージを与える。直接殺してしまえば一回しか苦しまない。そんなことは許せん。」
「お二方とも、物騒ですよ。マスター止めてください。あなたの側近のような感じでしょう?」
「二人ともやめてねー私が復讐するんだから。それに邪魔されて持ってこれなかった大事な武器を返してもらわないと………。」
「返されなかった場合、どうするのですか?マスター。」
純粋な目でニアに聞かれる。
まぁ……拷問したり新薬の実験したり武器の切れ味試したりするけど……。
「まだ知らなくていいことだよ、ニア。」
こんなことは、私と一心が知っていればいい。
「そうなのですか?分かりました。」
純粋なニアに癒されていると、アーシェが剣を持ってきた。
「姫様、よろしければこれを一時的に使ってくださいな。」
そういってアーシェが出したのは一本のシンプルな片手剣。
普段持っていた剣よりも少し重いが、使えないこともない。
「アーシェって土以外の魔法も使えるのか?驚きだが、ありがたい。サブの武器だけだと心細かったんだ。」
「ふふっ。わたくしは土の中にあるものなら大抵魔法で加工できるのよ。リーンフォルは植物で家具を作れるし、わ
たくし達精霊王は姫様を飾るための宝石も作れるわ。欲しいものは行ってごらんなさい。わたくし達が用意してあげるわよ?」
「ありがとう、アーシェ。今は平気だから大丈夫だ。」
アーシェの片手剣も腰に携えておこう。武器も持ったし、着替えもした。
「さて、出発と行こうか、皆。」
「マスター、私はここに残り内装を整えつつペカニブルの情報を集めます。ニア、あなたはマスターの世話を。」
「了解です一心兄上。こちらはお任せください。」
「精霊王の皆様、馬鹿なマスターをお願いいたします。」
馬鹿かなあ?私隊長だったし地球でも二つ名持ってたんだよ?物騒な名前だけれどさー。ねえー一心―?
「ニア、引きずる許可を出すので、マスターをさっさとお連れしなさい。ウザいことこの上ありません。」
「姫、諦めていくぞ。一心、留守を頼む。」
「アクス殿に言われるまでもありません。」
……なんかアクスと一心の仲が良くなってる。いつのまに!
私だって今名前覚えている状態なのに…ズルい。
ニアの意外と強い力に引きずられながら、一心は私を見透かしたように鼻で嗤う。
「天才であるマスターに作られた私が、この人数の名前程度一日で覚えられないでどうします?」
そのまま私達は空間を出て、世界樹ウィーン様がいる(世界樹がある)大陸の中心に向かった。
………アクスは一心の初めての友達かな~?マスター嬉しい。
ニヨニヤしながら私とニアと精霊王達は出発した。
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